リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

巨細胞性動脈炎GCAの病因

N Engl J Med 2003;349(2):160-9.
Medium- and large-vessel vasculitis.
Weyand CM, Goronzy JJ.
 
 
(Figure 2, Panel A)

イメージ 1
 
Figure 2. Dendritic Cells in the ArterialAdventitia.
側頭動脈のような中型血管炎は外膜・中膜の境界に居住する樹状細胞を多く含む。これらは自然免疫と獲得免疫の間の細胞の連絡機能として働く。正常な動脈ではS-100陽性の樹状細胞は未成熟でケモカイン受容体CCR6を表現する。これらの細胞は抗原の取り込みと細胞傷害のセンサーとして働く(Panel A). 

(Figure 2, Panel B)

イメージ 2
 
血管炎を有する動脈の樹状細胞はCD83CD86を表現することで示されているように高度に活性化している。これらの細胞はT細胞の活性化に必要な共刺激シグナルを供給する (Panel B). 血管炎の病変に存在する樹状細胞はinterleukin-18を含み、T細胞からのINF-γの放出をupregulateする。最も重要なことは炎症を起こした動脈に存在する樹状細胞は大量のhomingchemokines CCL19, CCL21を放出する。これらはCCR7に結合する。CCR7の表現は活動性の樹状細胞の停止をもたらし、樹状細胞をもはや組織から離れることができないようにさせる。その代わり、樹状細胞は動脈壁にトラップされ、異常なT細胞反応を誘発する。

 
Figure 3 (facing page). Adaptive ImmuneResponsesin Vasculitis and the Consequences of Arterial-Wall Injury.
 
(Figure 3, Panel A)
イメージ 3
 
 
Panel Aでは動脈外膜に存在する樹状細胞の活性化とトラップのため抗原特異的T細胞の補充と刺激を必要とする状況が生み出される。CD4+T細胞は動脈壁の微環境に入り、樹状細胞と相互作用をして、サイトカインの分泌を始める。インターフェロンγはマクロファージの分化と機能を調整する重大なサイトカインである。血管に浸潤したマクロファージの機能は動脈壁のどこに位置しているかに密接に関わる。外膜層のマクロファージは炎症性サイトカインのIL1IL6を供給する。
 
(Figure 3, Panel B)
イメージ 4
 
中膜のマクロファージはメタロプロテイナーゼを分泌し、活性酸素中間体の産生を介して酸化傷害における重要な役割を有する。中膜における酸化的損傷の3つの局面をBに示す。
 
(Figure 3, Panel C)
イメージ 5

 
蛋白のニトロ化は新生毛細血管を形成する上皮細胞で起きる。有毒アルデヒドが脂質過酸化の過程で形成される。平滑筋細胞はアポトーシスを被る。これに並行して活性酸素中間体も細胞の活性化をトリガーする。アルドース・リダクターゼの誘導が良い例である。傷害に対する動脈の反応をPanel C and Dに示す。動脈炎は必ずしも内腔の狭小化にならなくてもよい。血流障害なく進行することもある (Panel C).

 (Figure 3, Panel D)
イメージ 6
 
 
血小板由来増殖因子PDGFと血管内皮増殖因子VEGFの産生が増大した患者では急速で活発な内膜肥厚が続発し、内腔の閉塞した動脈炎に至る (Panel D)。したがって動脈炎の臨床プレゼンテーションは虚血性の合併症を含んでも含まなくても良い。
 
Granuloma formation in giant-cell arteritis
 
組織に存在するT細胞はインターフェロンγの放出によって炎症細胞浸潤を維持する (Fig. 3A)GCAではINFγを産生するCD4+T細胞が外膜で樹状細胞の近くに存在する。中膜では細胞浸潤が肉芽腫を形成し、活性化T細胞とマクロファージとのユニークな空間的関係が造られる。肉芽腫の形成は厳密にT細胞に依存し、消化しにくい抗原に対する免疫反応として特有である。遺伝子組み替えの動物実験、および免疫不全の患者の研究いよると、重要な分子成分が同定された。IFNγが欠損していると、肉芽腫形成はできなくなる。INF-γの強力なinducerであるIL-12は肉芽腫形成を促すことができるが、必須ではない。INF-γはGCAの動脈炎の病変においてkeycytokineである。血管炎を起こさないPMRの動脈には存在しない。INF-γはマクロファージに幅広いエフェクター機能を行わせるよう誘導することでその炎症効果のほとんどを介在する。興味深いことにIL-12GCAの血管病変には見られない。このことはINF-γを誘導する代わりとなるサイトカインがあることを示唆する。
 
Response of arteries to immune-mediatedinjury
頭蓋外の血管における出血と動脈瘤の形成はGCAの臨床所見ではない。その代わり最も怖い合併症は虚血から来る。失明は前部虚血性視神経症によって起きるものが最多。血管内腔の狭窄は急激な同心円様の内膜の過形成によって起きる。血栓性の閉塞が血流の障害に寄与することは稀。
内膜の肥厚は損傷に対する血管の一般的な反応であり、炎症性、非炎症性の血管症でみられる。内膜過形成は治癒と修復のために起きるものであり、筋線維芽細胞の動因と移動によって達成される。筋線維芽細胞の増殖と細胞外マトリックスの沈着は内膜の拡大において中心的な出来事である(Fig. 3C)PDGFGCA患者の側頭動脈に豊富である。興味深い事に血管病変におけるPDGF産生の程度は内腔閉塞の程度と顎跛行・視力障害のような虚血症状の程度に関連する。すなわちPDGFは内膜の筋線維芽細胞の増殖因子として重要な役割を有することだ。
動脈壁に存在する細胞とくに平滑筋細胞PDGFをを産生する。この成長因子はマクロファージ、特に中膜・内膜の境界に存在するマクロファージにも由来する。内膜の成長は血管新生を伴わずに起きることはない。中型の血管は外膜にある大きな血管孔からの拡散、栄養血管の毛細血管ネットワークのいずれかから酸素を受け取る。GCAに侵された動脈では内膜と過形成した内膜において微小血管が発生する (Fig. 3C)。局所の配列は厳密に調整され、近位の内膜でリング状構造を形成する。血管炎の病変における血管内皮増殖因子VEGFfibroblast growth factor 2ではなく)の産生レベルは新生毛細血管の数に密接に関連する。VEGFはマクロファージと多核巨細胞に由来する。そのため血管壁とそこに浸潤した免疫細胞の協調された行動によって内膜の肥厚性反応が起きる。
 
 

 ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!