Diagnostic Performance of a Temporal Artery Biopsy for the Diagnosis of Giant Cell Arteritis in Japan-A Single-center Retrospective Cohort Study -
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/58/17/58_2788-19/_article
側頭動脈生検の感度・特異度を調査するための単施設における研究結果です。Primary outcomeは、TABの感度、特異度を求めること。
Clinical characteristics of patients in the GCA and non-GCA groups
対象は巨細胞性動脈炎が疑われ、側頭動脈生検(Temporal artery biopsy; TAB)を受けた全ての患者29例(ここ9年間)。このうち16例がGCA、13例がnon-GCAでした。
non-GCA群の13例にはPAN、AL amyloidosisなどの重要な鑑別疾患も含まれています。なおTABの陰性結果も参考に、診断したケースも含まれています;PMR (n=2)、非動脈炎性虚血性視神経症 (n=1)、高安動脈炎 (n=1)
Figure 1.
A) 内弾性板に浸潤する肉芽腫性炎症と多核巨細胞
B) 不明熱患者にみられた動脈壁への単球浸潤(肉芽腫性炎症ー、多核巨細胞ー)
C) GCA患者の動脈壁への単球浸潤(肉芽腫性炎症ー、多核巨細胞-
D) 高用量ステロイド療法10日後に採取された側頭動脈壁に見られた肉芽腫性炎症と多核巨細胞
Sensitivity and specificity of a TAB for the diagnosis of GCA
側頭動脈生検の基準を
(A)単球主体の血管炎(ACR基準の病理基準)
(B)肉芽腫性炎症を伴う血管炎
(C)巨細胞を伴う血管炎
の3つに分けて検討したところ、
(A)感度81%、特異度85%
(B)感度75%、特異度100%
(C)感度75%、特異度100%
でした。
典型的例では、単球浸潤、肉芽腫性炎症、多核巨細胞とも見られますが(Figure 1A)、ACR基準では「単球浸潤だけ」でも病理基準を満たします(Figure 1C)。
病理基準(A)すなわち「単球浸潤だけ」の偽陽性の2例は、PANの側頭動脈炎、不明熱患者の側頭動脈における非特異的な炎症細胞浸潤でした(Figure 1B)。
Clinical parameters predicting the diagnosis of GCA
その他診断に寄与する症状、所見を検討したところ、体重減少、咳、側頭動脈拡大がGCAの診断を示唆する傾向がありました(p=0.021, 0.053, 0.092)(missing dataを有意差が出にくいようにみなすと有意差は消失しましたが)。
Table 2. Clinical Parameters Predicting the Diagnosis of GCA.
Timing of glucocorticosteroid therapy and its impact on the TAB findings
高用量ステロイドを開始後にTABを行った3例のうち陽性結果は1例のみであったが (Figure 2)、残り2例はもともと診察で側頭動脈の異常がなかった(各LVV型、および側頭動脈炎を伴わないGCAと判断した)。
もう1例PMRに対して低用量ステロイドを使用中にGCAを発症したケースにおいてもTABは陽性でした。
Figure 2. ステロイド治療開始のタイミング
― 紹介日、TAB施行、病理結果報告との時期的な関連 ―
●は病理基準(+)、○は陰性。non-GCA groupではステロイドは7例に使用された;唯一の●はPAN例。
*cardiovascular complication
†polymyalgia rheumatica
**aplastic large cell lymphoma
‡rheumatoid pleural effusion
††inflammatory abdominal aortic aneurysm
Association of a diagnostic delay with the development of cardiovascular complications of GCA
GCA診断の遅れが心血管系(CVD)イベントに関連していないかを調べるため、GCA群(n=16)において、3ヶ月以上の診断の遅れがCVDイベントに寄与するかを調べたところ、
「3ヶ月以上の遅れ」ではCVDが4例中2例起きていたのに対し、「3ヶ月未満」では11例のうち0例でした(p=0.057)。
CVDイベントを起こした2例のうち1例は、紹介までに7.5ヶ月、紹介からステロイド開始まで22日を要し、もう1例では紹介までに4ヶ月、紹介からステロイド開始までに14日後かかりました。前者は治療開始1ヶ月後に心筋梗塞、後者は治療開始5日後にWallenberg症候群を呈しました。
紹介された後の管理を少しでも早くすればこれらの心血管系イベントを防げていたかもしれしれません。
#この研究の後、リウマトロジストは初診した日にステロイドを開始するよう心掛けるようになりました。
ps
↓昔はまったく反対の事を言っていましたっけ....自戒の念を込めて残しておきます
https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/10445981
↓GCAのreview
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