巨細胞性動脈炎GCAについてまとめています。
今回のテーマは治療です。 TCZの2つのRCTは歴史的なブレイクスルーになるのかもしれません。
(ステロイド)
・MazlumzadehらはGCA27例をPSN 40mg/日に加え、初期にメチルプレドニゾロン・パルス療法(mPSL 1mg/kg、3日間)、または生理食塩水を投与する群に割り付け、二重盲検で比較した。36週、52週、78週時の「PSN5mg/日以下の寛解」の割合はmPSL群において有意に多かった(71% vs 15%, 79% vs 15%, 86% vs 33%)。
・mPSL療法は眼症状のあるケースには勧められている
(再燃;ステロイド抵抗性)
ステロイド治療後の再燃は36-64%にみられ、約半数が最初の1年以内に起きる(Alba、Labarca)。再燃時の症状はPMR が約半数で、次いで頭蓋症状、全身症状である(Alba、Labarca、Restuccia)。Labarcaらの研究では再発の予測因子はGCA診断時の高血圧と糖尿病であった。
表 再発に関する最近のコホート研究
Alba 2014.
Labarca 2016
Restuccia 2016
Nesherらは130例のGCAを対象に最初の全身性炎症性反応(ISIR)が再燃を予測するかを検討した。ISIRの強さはESR>100、血小板>40万、Hb<11、WBC>11000、発熱>37.5度の5つのパラメーターで設定し、3つのグループに分けた。
strong ISIR (4-5 parameters, n=24)
moderate ISIR (2-3 parameters, n=55)
weak ISIR (0-1 parameter, n=51)
(MTX)
ステロイドに抵抗性であれば、保険適応外ではあるがメトトレキサート(MTX)の併用を考慮する。MTX併用の効果を検証したメタ解析によると、MTXはプラセボに比較し最初の再発のハザード比0.65と再発を減少させた(p=0.04)。ただし、この解析に含まれた3つの二重盲検RCTのうちMTXの有効性を示した試験は1つのみであったため強い根拠とは言えないかもしれない。
一方、保険適応のあるAZPの有効性は小さなサイズのRCTにて証明されなかった。
(TNF阻害薬)
近年、GCAを対象とした生物製剤のRCTが行われている。TNF阻害薬は概ねプラセボに対する有効性が証明されていない。スペインにてエタナセプト(ETN)の二重盲検RCTが行われ、GCA17例を下にETNとプラセボに割り付けた(各8例、9例)。12ヶ月後、ステロイドなしで疾患をコントロールできていた割合はETNで50%、プラセボで22.2%であった(有意差なし)。ステロイドの累積投与量はETNで少なかった (平均1.5g vs 3.0g;p=0.03)。
(TCZ)
イタリアにおけるRCTが同じステロイドの減量法のもと、TCZの点滴 (8mg/kg/4週間)をプラセボと比較した。12週間後のPSN0.1mg/kg投与下の完全寛解の割合は各々17/20 (85%)と2/10 (20%)であり、絶対リスク差65%は有意であった (p=0.03)。
国際的な大規模RCT(GiACTA)が行われ、短期プレドニゾン(PSN)群(26週間で減量)、長期PSN群(52週間で減量)をコントロール群として、短期PSNにTCZ 162 mgの毎週または隔週の皮下注射を併用した群の有効性を検証した(Unizony 2013)。持続的寛解(12週以降52週時まで再発せずにCRP陰性を維持すること)を達成した割合は短期PSN群14.0%、長期PSN群17.6%、短期PSN+毎週TCZ群56%、短期PSN+隔週TCZ群53.1%であり、短期PSN群とTCZ群(毎週・隔週)との差(ともにp<0.0001)、および長期PSNとTCZ群(毎週・隔週)との差はいずれも有意であった(各々p<0.0001、p=0.0002)。まだ保険適応は認められていないが、これらの試験結果よりTCZはGCAに有効であると考えられる。
(Unizony 2013)
Stone JH, Tuckwell K, Dimanaco S, et al. Efficacyand Safety of Tocilizumab in Patients with Giant Cell Arteritis: Primary andSecondary Outcomes from a Phase 3, Randomized, Double-Blind, Placebo-ControlledTrial 2016ACR/ARHP annual meetingj, Abstract number 911.
(ABT)
アバタセプト(ABT)はT細胞へのシグナル伝達を抑制する機序から、GCAにおいて有効であるかもしれない。LangfordらはGCA49例全例をステロイドとABTで治療し12週時に寛解していた41例を、毎月のABTとプラセボに割り付け(各20例、21例)、二重盲検にて比較した。。12ヶ月後の無再発生存(RFS)はABTで48%であり、プラセボ(31%)よりも有意に多く(p=0.049)、RFSの期間はABT 9.9ヶ月、プラセボ3.9ヶ月であった。
Langford CA, Cuthbertson D, Ytterberg SR,et al. A Randomized Double-Blind Trial of Abatacept and Glucocorticoids for theTreatment of Giant Cell Arteritis
[Abstract]Arthritis Rheumatol 67(Suppl.10). Abstract Number: 9L
(アスピリン)
アスピリン併用のエビデンスはコホート研究に限られる。NesherらはGCA 166例を平均26ヶ月フォローし、アスピリンを投与された群では非投与群に比べて頭蓋の虚血性イベント(脳梗塞や視力障害)が有意に少なかった(8% vs 29%, p=0.01)(Nesher 2004)。後ろ向きのデザインの6研究を含むメタ解析において、アスピリンは虚血性イベントを有意に低下させた(Martínez-Taboada2014)。
(Nesher 2004)
(Martínez-Taboada 2014)
<合併症と予後>
GCAコホート研究において脳卒中、心筋梗塞のリスクが上昇することが示されており(Amiri 2016, Tomasson 2014)、とくに診断後1年間のリスク上昇が顕著であった(Amiri 2016)。
(Amiri 2016)
HR(95%CI)はMIで2.06↑(1.72-2.46)、CVAで1.28↑(1.06-1.54)。
診断後1ヶ月間は各 11.89↑(2.40-59.00)、 3.93↑ (1.76-8.79)
(Tomasson 2014)
(Robson 2015)
(Durand 2012)
Baslundはデンマークの一般人口に対するGCAの死亡の相対危険度(RR) を調査した。診断後の2年間で1.17 (95% CI 1.01 - 1.36)と上昇し、2-10年の間では0.96 (0.88 - 1.05)と一般人口と同等であったが、10年より長ければ再び1.22 (95% CI 1.05 - 1.41)と上昇した。これらの期間では死亡リスクの上昇に循環器系の死亡が寄与していた。
(Baslund 2015)
ps;↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!
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以下でEGPAのreviewを執筆をさせていただきました!
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