リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

器質化肺炎、Organizing pneumonia

Clinical scenario
両側性肺炎にて紹介された50代女性のRA患者。
 
胸部CTにて肺浸潤影の進行を認め、右胸水貯留を認めた。
 
LDHは正常、KL-6 700と高値。
 
TBLBの病理レポートにて、器質化肺炎(Organizing pneumoniaOP)と報告された。
 
(症例は架空です)
 
リウマチ科をやっていると、たまに出くわすこの「器質化肺炎」。
 
リウマトロジストの数例の経験上、胸水貯留もKL-6上昇も見たことがありません。
 
しかも以前、OPではKL-6は上がらないと聞いたことがあります。
 
 
< 疑問、発生!>
 
(疑問1) 胸水貯留はOPで見られても良いか?
 
(疑問2) OPにおいて、KL-6上昇の頻度は?
 
 
Uptodateにて>
organizing pneumoniaを検索し、Cryptogenic organizing pneumoniaを開きます。
 
Cryptogenic organizing pneumonia;COPとは特発性器質化肺炎です。正しくはこの方はOPとすればRA-OPであって、COPではないのですが、RA-ILDのなかのOPの記載は十分でありませんでした
 
KL-6を検索しますが、ひっかかりません。(疑問2)はuptodateでは解決しませんでした。
 
つぎに(疑問1)の胸水です。Ctrl+Fpleuralを検索すると以下がひっかかりました。
Chest radiograph -
Other rare radiographic abnormalities include pleural effusion, pleural thickening, hyperinflation, and cavities
Computed tomographic scanning –
Pleural effusion is uncommon [1].
 
 
 
Uptodateの孫引き>
[1]を孫引きしてみます。COPReviewのようです。PDF上でPleuralを検索します。
 
Pleural effusion is seldom seen in COP, although it was present in 22% of cases in a previous series [90].
胸水貯留はめったに見られないが、過去のあるシリーズでは22%に胸水が認められた。
 
さらに、[90]を孫引きします。
 
Organizing pneumonia. Features and prognosis of cryptogenic, secondary, and focal variants.
Arch Intern Med. 1997 Jun 23;157(12):1323-9.
 
74例のOPの研究ですが、少なくともAbstractCT所見の記載がありません。本文は有料だったのであきらめました(笑)
 
さてさて、OPCT所見に関する研究があれば、胸水の頻度が分かるでしょうか・・・
 
 
 
Pubmedにて>
("Cryptogenic Organizing Pneumonia"[Mesh]) AND "Tomography, X-Ray Computed"[Mesh]を検索しますが、263件。読む気になりません。
 
多すぎるので、さらに検索語、「CT」を追加したところ(CTがテーマなら略語を使うはずと思ったので)84件になりました。まだ、読む気になりません。
 
Englishに絞って64件。Titleを流し読みします。
 
13. Cryptogenic organizing pneumonia: serial high-resolution CT findings in 22 patients.
AJR Am J Roentgenol. 2010 Oct;195(4):916-22.
 
COP 22例における経時的なCT所見の研究。PDF上でpleuralを検索して、胸水は1/224.5%)でした。
 
20. Br J Radiol. 2009 Mar;82(975):212-8.
Comparison of pulmonary CT findings and serum KL-6 levels in patients with cryptogenic organizing pneumonia.
 
COP37例におけるCTKL-6の研究。PDF上でpleuralを検索し、胸水の頻度は2/375.4%)でした。
 
1997年報告の[90]の本文は読んでいませんが、その時代は画像検査が遅れたり、診断が遅れたりして重症化した可能性があるのではないかと考え、ここは最近の2つの報告で胸水5%前後という内容を信じたいと思います。
 
(疑問、解決→こたえへ)
 
つぎに、(疑問2)のKL-6について調べます。
 
Pubmedで以下を検索したところ、なんと、2件。
("MUC1 protein, human" [Supplementary Concept]) AND "Cryptogenic Organizing Pneumonia"[Mesh]
 
1. Clinical characteristics classified by the serum KL-6 level in patients with organizing pneumonia.
Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2013 Mar;30(1):43-51.
 
OP22例においてKL-6の意義を研究している。KL-6値は11/2250%)で上昇。
 
2. Comparison of pulmonary CT findings and serum KL-6 levels in patients with cryptogenic organizing pneumonia.
Br J Radiol. 2009 Mar;82(975):212-8.
 
こちらは既述の20の論文でした(↑)。Abstractを訳しますが、KL-6上昇は17/3746%)でした。
 
Abstract
・目的はretrospectiveCOPの患者のHRCTKL-6正常群と上昇群で比較すること。
19994月より20074月の間、KL-6正常のCOP20例、KL-6高値の17に胸部CTが行われ、二人の胸部専門の放射線科医がretrospectiveに評価した。
COP患者のCT所見はKL-6正常群、上昇群において 主に浸潤影(各々n=17, 13)、次にすりガラス状陰影(各々n=11, 13)
・牽引性気管支拡張症 (n= 7 vs 1, p=0.0077) と正常肺構造の変化 (n=13 vs 3, p=0.00017) KL-6上昇群ではKL-6正常群に比べ有意に多かった。
・フォローアップのCTKL-6正常群、上昇群とも16例で行われ、ステロイドによる初期治療後1年以内の再発は各々2例(12.5%)、6例(37.5%)に起きた。
KL-6上昇群の再発頻度は正常群に比べて高かったが、有意差はなし(p=0.103)
・結論として、COPCT所見において牽引性気管支拡張、正常肺構造の変化は(治療後の再燃と関連があるかもしれない)KL-6上昇と関連がある。
 
(疑問、解決→こたえへ)
 
 
< こたえ >
COPCTに関する研究において、胸水貯留は約5%でみられる。
 
COPにおいて、KL-6上昇は約50%でみられる。
 
 
Scenario caseの経過>
患者に、器質化肺炎であることを説明し、改善が乏しいためステロイド治療をお勧めした。