リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

anaplastic large cell lymphoma, ALK positive

不明熱で苦労したので、まとめました。
 
 
<Scenario case>
 
症例 60歳代男性 (架空のケースです)
 
病歴 2週間前からの発熱で入院。リンパ節腫脹なし。DMあり。血液培養陰性。造影CTにて熱源なし。PETで多発性の骨病変。骨髄生検、皮膚生検を繰り返すも診断つかず。発熱は持続したが、入院1ヶ月半、骨髄病変が増大したところで、CTガイドに骨生検を施行。
 
検査
WBC2万、Hb10、Plt50万、AST/ALT正常、LDH220、CRP20、BUN20、Cr1.1、
検尿正常
HbA1c9、フェリチン1400、ANA160倍、RF80
sIL2R>1万
 
診断
anaplastic large cell lymphoma, ALK positive
 
 
<Uptodate>
Clinical manifestations, pathologic features, and diagnosis of anaplastic large cell lymphoma, ALK positive
 
Introduction
Peripheral T cell lymphomaは成人NHL, non-Hodgkin lymphoma15%に満たないaggressive lymphomaheterogeneousなグループ。ALCL, primary systemic typeはその中のひとつ。
ALCLの多くがALK, the Anaplastic Lymphoma Kinase geneに関連しており、ALK+ tumors、ときにALKomaとも呼ばれ、ALK(-)systemic ALCLとは臨床像が異なる。
ALCLprimary systemic ALCLprimary cutaneous ALCLに分けられる。前者はALK+(-)もあるが、後者はALK(-)
 
Epidemiology
・最大の後ろ向き研究は国際T cell lymphomaプロジェクトで、22施設から集めたT cell系、NK cell系のperipheral lymphoma1314例(1990-2002)。ALK+ ALCL6.6%で、アジアでは3%。男女比2:1Primary systemic ALK+ ALCLの年齢の中央値は34歳で、子供・若年層と成人後期の二峰性。
 
Clinical feature
ALK+ALCLのほとんどが無痛性のリンパ節腫脹を呈する。末梢性リンパ節腫脹、後腹膜リンパ節腫脹ともコモン。
・ほとんどが発熱、体重減少といった全身症状を呈するが、孤立したリンパ節腫脹や節外病変(GI、乳腺、脾、肝、骨)もあり。
・さきの研究でT cell系、NK cell系のperipheral lymphoma1314例のうち、55例がALK+ALCLで、そのうち、65%Stage3-4の進行期。同じく約65%が発熱、寝汗、体重減少といったB症状を呈する。
・リンパ節が唯一の病変だというのは54%で、19%が節外病変を有する。Bulky lymphadenopathy (>10cm)21%。もっともコモンな節外病変は骨(14%)、骨髄(12%)、皮下組織(10%)、脾(10%)、皮膚(8%)、肺(8%)、肝臓(3%)。
・ほとんどの患者がECOG-PS 2以下。
ALK+ALCLの年齢層はALK(-)ALCLやその他のT cell lymphomaよりもずっと若い。国際T cell projectによると、中央値はALK+ALCL34vs58歳と24歳若い。多くの患者が発症時60歳より若い。
LDH上昇(37%)、貧血(27%)、血小板減少(10%)。Circulating tumor cellsは診断時には稀だが、再発時には稀ではない。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18626005
 
Pathology; Histologic features(略)
 
Immunophenotype(免疫表現型)
ALCLの免疫表現型は通常、免疫組織化学検査で確かめられるが、フロサイトメトリーでも検出される。免疫表現型は不均一であるが、例外なくCD30ALKが陽性であり、B cell系のマーカーである、CD19/20/22は陰性。ときにB cell系のPAX5/BCL6を表現することもある。ほとんどは成熟活性T cell由来の免疫表現型のHLA-DR+, CD25+となるが、時にBTのマーカーを呈さないnull cell typeとなることもある。
 
Surface receptors – ALCLの診断のカギとなるの例外なくCD30 (以前のKi-1)を呈することであり、ほとんどが膜・ゴルジ型でCD30強陽性となる。EMAはよくsystemic ALCLで陽性となるが、cutaneousでは陰性。約60%T cell系の抗原、CD3, CD43, or CD45ROをひとつ以上表現する。ほとんどのlymphoid tumorsで陽性となるCD45が陰性になることも少数においてある。Hodgkin lymphomaのマーカー、CD15はめったに陽性にならない。Primary systemic ALCLの約40%B or T cellの抗原を呈さない(Null cell type)。全体としてprimary systemic ALCLは以下の免疫表現型をとる。
1)     T cell type - CD3+ and/or other T cell markers positive, clonal TCR rearrangements present (60%)
2)     Null cell type – All lineage markers negative, but clonal TCR rearrangements present (30%); all lineage markers negative, no TCR or IgH rearrangements present (10%)
国際T cell lymphomaプロジェクトではALK+ALCL55/1314CD30+ (100%), EMA (83%), TIA1, granzyme B or perforin (80%); CD43 (44%), CD4 (40%), CD2 (23%); CD3 (12%), CD56 (7%), CD8 (5%)
 
ALK expression - 定義上、ALK+ALCL全例がALK geneの再構築を有する。免疫染色はALKを表現し、ALKのパートナーとなる蛋白により様々に細胞内に分布する。ALKは正常では中枢神経にしか表現されないため、ALKに特異的な抗体とlymphomaが反応することはALKの染色体の再構築があることを示す信頼性の高い所見である。
 
Molecular genetics(分子遺伝学)
T cell receptor genes – ほとんどがクローン的に再構築されるTCR geneを有する;おおよそ10%TCRimmunoglobulinの再構築を示さず、null型に属する。免疫染色によるALK染色の検出はALK遺伝子のクローン的再構築を示す非常に信頼性の高い所見である;そういうケースではTCR geneの再構築の評価は必要ない。
ALK gene rearrangements – 定義上、ALK+ALCLは染色体2p23上のALK遺伝子の再構築を有する。いくつかの転座・逆位が知られている。(詳細は略)
 
 
Diagnosis
Primary systemic ALK+ALCLの診断は組織生検でなされるのがベストであり、ほとんどの場合リンパ節である。ALK+ALCLの診断は臨床像に加え、生検組織における特徴的な形態学的所見と免疫染色パターンよりなる。組織学的に腫瘍は通常Large cellからなり、しばしば馬蹄形の核(いわゆるhallmark cells)、目立った核小体とともに見られる。Paranuclear hofはあったりなかったりする。腫瘍細胞はしばしば密着しシート状に、ときにはリンパ節洞の中でクラスター状に増殖する。そのため、固形癌の転移のようにも見えうる。Small cell variantでは、腫瘍細胞は同様の核の所見を呈するが、かなり小さなサイズで、おもに血管周囲に見られる。Monophorphic variantでは特徴的なhallmark細胞は比較的少数でよい。免疫染色では、CD30が膜・ゴルジ型に不均一で強く見られる。T cell抗原が染まったり、null型のケースでは特異的抗原に染まらないこともある。ALKの免疫染色でALK遺伝子の再構築が暗示されたり、分子遺伝学的・細胞遺伝学的検査で直接検出されることもある。定義上はこれは存在していなければならない。
 
Differential diagnosis
ALK+ALCLの鑑別診断はT or null細胞由来・B細胞系のリンパ増殖性疾患である。DLBCLanaplastic typeや同様の形態学的な特徴を呈するホジキンリンパ腫である。(詳細は免疫染色などによるが、ここでは略)
ALCL, ALK-negative
Primary cutaneous ALCL
DLBCL anaplastic type
DLBCL, plasmablastic type
Hodgkin lymphoma