リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

CMVアンチゲネミア、C7-HRPのカットオフ値

CMVアンチゲネミアのカットオフ値って、検証されていなかったんですよね。
 
この度、呼吸器科で有名な病院より、C7-HRPのカットオフ値を検討した論文が報告されました。
 
 

Cytomegalovirus infection during immunosuppressive therapy for diffuseparenchymal lung disease.

Respirology. 2013 Jan;18(1):117-24. Arai T, et al
CMVアンチゲネミアのカットオフ値について検討したRetrospective study
 
 
Introduction
CMVdiseaseの頻度と臨床型、CMV-pp65Ag抗原血症のカットオフ値は分かっていない。
 
Method
Patients
2004-2008年の間、びまん性肺疾患にて入院し、ステロイド免疫抑制剤を投与されたた267例(IPF 65IIP other than IPF 121CVD-LD 81)。pp65Ag154例で測定され、それらは白血球減少and/or IgG減少、CRP高値を認め、CMV感染を除外する目的で測定された。85例はpp65Ag陰性で、69例で陽性。69例のうち、治療前にpp65Agを測定された42例は全例陰性で、残りの27例は測定されていなかった。
 
Definition of CMV infection, its onset and CMV diseases
CMV infection・・CMV-pp65Ag抗原血症のみで、CMVに関連した臨床症状や検査異常を認めないもの。
Onset of CMV infection・・CMV-pp65Ag抗原血症を検出した時、またはCMV diseaseの発症時
CMV diseases・・Ljungmanらのmodified criteriaに従った。症状・所見とウイルス複製が見られるが、組織学的な検査は行っていない。血小板減少はPlt<10万と定義。
 
Results
Clinical feature of CMV infection
1回目の検査時に、20例がClinical CMV diseaseと判定され、49例がsubclinicalと判定。Subclinical3例のうち、2例に血小板減少、1例に腸炎を認めた。これを加え、Clinical CMV disease23例、Subclinical 46例とした(Table 1)。
23例の内訳は、血小板減少12、好中球減少4、貧血2、肺炎6、肝炎5HPS2腸炎1
CMV infection発生時、Clinical CMV diseaseにおいてCMV-pp65Agの値が有意に高く、末梢血白血球数(PBL)は有意に少なかった。
ステロイド開始とCMV infection検出までの期間は中央値47日。
Cut-off value of CMV-pp65Ag titre for the diagnosis of clinical CMV disease for treatment with ganciclovir
GCV開始のためのCMV感染症の診断のためのCMV-pp65Agのカットオフ値)
Clinical CMV diseaseの診断のためのカットオフ値はROC曲線に基づいて>7.5cells/5PBLと決められた(Figure1)。このカットオフ値において感度1.0、特異度0.891、陽性尤度比9.2PPV0.921, NPV1.0
 
Longitudinal observation of the clnical course in patients with low levels of CMV-pp65Ag at initial examination
44例が<7.5 cells/5PBLだった。その44例うち28例がGCV治療を受けずに再検査された。28例中24例で陰性化。24例中23例で7-14日後に低下を示した(24例全例が30日以内生存)。28例のうち3例はClinical CMV diseaseが発症し、同時にCMV-pp65Agが上昇した(GCV治療を受け全例30日以内生存;2例は陰性化、1例は再度低値陽性)。1例は<7.5で再度陽性であったが、GCV治療を受け陰性化した。
1回目で<7.5だった44例のうち8例はGCV治療を受け、そのうち4例は再検査を受けず30日以内に死亡、4例は治療で陰性化し30日後生存。
1回目で<7.5だった44例のうち8例は再検査を受けず、GCV治療も受けず。330日後生存し、530日以内死亡。
 
Longitudinal observation of the clnical course in patients with high levels of CMV-pp65Ag at initial examination
25例は>7.522例がGCVで治療を受け、そのうち12例においてCMV-pp65Agは陰性化。治療を受けた7例がCMV-pp65Agの陰性化の前に1ヶ月以内に死亡した。
 
Treatment of CMV-pp65Ag antigenemia
CMV抗原血症の34例が一般的に抗原血症が陰性化するまでに中央値11日間(IQR7-14日)の治療を受けた。GCV治療は3例を除いて耐用できたが、3例では骨髄抑制と肝毒性を経験し、Foscarnetに変更された。16例が免疫グロブリンを、HPS2例がG-CSFを投与された。19例で陰性化したが、そのうち5例でCMV-pp65Agが再度陽性化し、二回以上の治療を受けた。
Clinical CMV disease12例のうち、血小板減少がGCV治療後にかなり改善した。
 
 
<リウマトロジストのコメント>
研究の質はともかく、不確定なことを見極めようとした素晴らしい研究です。この報告が、呼吸器科の一般病院から出されたことが面白いです。
 
(大病院やリウマチ科では、10以上で治療だなんて、言い伝えを信じていましたよね・・・)
 
では、まとめます。
 
Clinical CMV disease23の内訳は、血小板減少12、好中球減少4、貧血2、肺炎6、肝炎5HPS2腸炎1。
 
ステロイド開始とCMV infection検出までの期間は中央値47日。最短で陽性になる時期を知りたかったので、Rangeがほしかったのですが、記載がありませんでした。
 
clinical CMV diseaseの診断に対して、C7-HRP > 7.5cells/5感度1.0、特異度0.891陽性適中率0.921、陰性適中率1.0→C7-HRP > 7.5なら92%そうだと言え、<7.5なら100%そうでないと言える。
 
 
 

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