リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

リツキシマブは、CYに劣っていない - RAVE trial - (2/2)

(前回からのつづき)
 
この非劣性試験、RAVE trialは、AAV寛解導入においてRTXCYに劣らず、再燃例にはCYより優れることを示した歴史に残るRCTです。
 
 
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Study Design and Patients
data comitteeにはこの試験をfundし、薬を提供したGenetech or Biogen Idecの代表者は含まれなかった。(←いいですね~)
 
2パラグラフにおいて、登録基準とプロトコールNEJM.orgより入手できるとあります。NEJMのホームページでRAVE trialを入力して、Supplementary MaterialSupplementary Appendixに飛びます。
 
Inclusion Criteria:
•チャペルヒルコンセンサス会議の定義に基づく、WG or MPA
PR3-ANCA or MPO-ANCAが陽性
新規発症例or重症の再燃
Birmingham Vasculitis Activity Scores for WG (BVAS/WG)3以上
BVAS/WGのメジャーアイテムの1項目以上or寛解導入のためにCYを要するほどの重症例。
 
Exclusion Criteria:
Churg-Strauss syndrome or 抗基底膜病
通常CYの適応とならないような限局性の疾患
人工呼吸器管理を要するほどの肺胞出血
Cr > 4.0 mg/dl。腎炎の活動性による腎不全によるもの
randomizationまでの4ヶ月以内に経口or静注CYを受けている
スクリーニングまでに>14日のステロイド治療を受けている
など、、、ウイルス感染症やアレルギーなどの細かい事項(略)
 
(略)論文の第3パラグラフに戻ります。
 
患者は1:1の割合で、RituximabuRTX)群とCyclophosphamideCY)群に分けられた。RandomizationClinical siteANCAタイプに応じて層別化された。
 
Treatments
寛解導入治療は6ヶ月。
RTX群・・毎週375mg/m2BSA4週間、およびCYプラセボを連日投与された。3-6ヶ月で寛解したらCYプラセボAZPプラセボにスイッチする。
CY群・・RTXプラセボCY2mg/kg/d(腎機能に応じ調整)。3-6ヶ月で寛解したらAZP2mg/kg)にスイッチする。
 
ステロイドの詳細は再び、Supplementary appendixに飛びます。
ステロイドの使用はプロトコールで厳しく定めた。1-3回のmPSLパルス療法を受け、プレドニゾンPSN1mg/kg/日(最大80mg)を続けた。投与量は寛解し再燃がない限り減量し、5ヶ月目までに中止した。week4が終わるまでに40mgまで減量し、これを2週間、以降2週間毎に30mg20mg15mg10mg7.5mg5mg2.5mg、ついで0mg/日とした。
 
Assessments
ベースライン、1週目、2週目、3週目、4週目、2ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後に受診として、疾患活動性をBVAS/WGと医師の全般評価で評価した。(略)
 
End points
The primary end point・・6ヶ月後にBVAS/WG 0であり、プレドニゾンを中止していること
Secondary end point・・再燃の頻度、6ヶ月後にBVAS/WG 0であり、PSN<10mg/dであること、副作用の頻度、、、(略)
 
6ヶ月以内の重症の再燃はブラインドのまま互いの治療群に変更してよい。限局性の再燃はPSN増量で治療する。1ヶ月の治療でもBVAS/WGが減少せず、新たな症状が出現する場合、Early treatment failureとし、Best medical judgementで治療されたが、これはPrimary endpointには到達しない。
 
Adverse events
研究チームとFDAは9ヶの主な副作用を決め、selected AEsと名付け、優越性の解析を行った。これは死亡、悪性腫瘍、白血球減少、血小板減少、薬剤性膀胱炎、静脈血栓塞栓症のイベント、脳卒中、入院、中止を要するほどの注射時反応を含んだ。
 
 
Statistical analysis
サンプルサイズを計算する際、両群とも70%の患者が6ヶ月の時点でPSN中止で寛解していると仮定した。
noninferiority margin-20%RTX群の寛解率からCY群の寛解率を引く)とし、one-sided alpha level0.025とした。10%dropout率を見込んで、両群とも100人の患者をエントリーすれば、非劣性を証明するために83%統計学的パワーを有すると計算した。
Primary analysisITT解析
平均の治療群の差(RTX群の寛解率からCY群の寛解率を引く)の95.1%信頼区間の下限を-20%と比較すること、そして劣性であるのであれば-20%よりも大きな差がでるはずであるという仮説をテストすることで、非劣性を評価した。
優越性は平均の治療群の差をzeroと比較することで評価した。ANCAのタイプ、WG or MPA、新規発症例or再燃例、肺胞出血の有無、重症の腎疾患の有無でサブグループ解析を行った。(略)
 
Results
2004.12-2008.6月にRTX99例、CY98例が登録された。背景はTable 1のとおり、WG/MPA、新規例、疾患活動性、臓器障害、登録前の治療、過去のCY投与量、IC後はじめの治療に入るまでの14日間に投与されたステロイド量はバランスがとれていた(←ベースラインの腎機能に差があるが、後述)。両群とも49%が新規例。BVAS/WGは同等。97%3回以上治験薬を投与された。Lost to follow-upはゼロ。RTX84例(85%)、CY81例(83%)がEarly treatment failure、互いの薬へのクロスオーバー、Best medical judgementドロップアウトにならずに6ヶ月を完墜した。
 
Efficacy assessments
Primary endpoint
RTX64%CY53%でその差11%noninferiorityの基準を満たした(p<0.001)。優越性は有意でなかった(95.1%CI, -3.2 to 24.3%; p=0.09)。6ヶ月後PSN<10mgBVAS/WG 0の割合は各々71%62%で有意差なし(p=0.10)。
サブグループ解析において、再発例に限れば、RTXCYよりも有効だった;Primary endpointに達したのは各々67%vs42%p=0.01)。この優越性はANCAタイプとclinical siteで補正をしても有意であった(Odds ratio 1.40; 95%CI 1.03-1.91; p=0.03)。
 
Disease typeWGでは各々63%vs50%p=0.11)、MPAでは67%vs62%p=0.76)。
 
Major renal disease at baseline
BVAS/WGで腎臓の項目を有していたのはともに52%。ベースラインのCcr53.868.9 (ml/min)と差があったが(p=0.04)、Ccrはパラレルに改善し、各々+11.2vs+10.5 (ml/min)と改善をし、Primary endpointに達した割合も61%vs63%と差はなし(p=0.92)。
 
Alveolar hemorrhage at baseline;肺胞出血の有無で差はなし。
Severity of flares;重症の再燃はRTX6例、CY10例で差はなし。
ANCA responseANCAの陰性化は47%24%p=0.004)。この差はPR3の影響でMPOでは40%vs41%と差はないが、PR3では50%17%p<0.001)。
 
Adverse events
治療中止を要する副作用は14%vs17%と差はなし。予め決めたselected AEsは22%<33%でRTX群で少なかった(p=0.01)。 始めの6ヶ月で固形悪性腫瘍は1例ずつ、6ヶ月以降は各々5例、1例。試験期間中にRTXに曝された患者において悪性腫瘍は5%で曝されていない患者では1%p=0.26)。
 
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<リウマトロジストのコメント>
 
このRCTdouble-dummyを用いることで二重盲検がなされ、dataに関わる委員会に試験をfundしたメーカーは含まれていませんでした。
 
Randomizationの記載がSupplementary appendixをみても不十分ですが、層別化がなされているのでそれなりの方法をとられているのだろうと思います。両群間でベースラインの腎機能に差がありましたが、有効性に影響を与えることはありませんでした。
 
ITT解析で、追跡率も100%でした。非劣性試験ですが、サンプルサイズを計算しています。
 
このように信頼性が高いと思われるRCTの結果、RTXCYに劣っていないことが示されました。むしろ、患者の約半数を占める再燃例に対してはRTXCYよりも有効でした。
 
ここで、再燃例にCYを繰り返す代わりにRTXを用いることでNNT※がどのくらいか計算してみましょう。ARR=67%-42%=25%NNT=1/ARR=4ということになります。これは再燃例を4人、RTXで治療すれば、CYを選択した場合と比べ、1人を余分にステロイドoffの寛解に導くという意味です。
 
安全性について、CYの懸念される副作用が多く含まれるselected AEsを予め設定し、これを減らすことができないかも検討されました。その結果、RTXを用いることでARR=33%-22%=11%とリスクの軽減が証明され、(CYを選択することの)NNH=10※と計算されます。
 
この試験の結果を受け、リウマトロジストは、再燃例にはRTXを使用した方がよいと考えます。
 
この度の公知申請で追加が予定されている適応はWG、MPAで、「既存治療で効果不十分な場合、既存治療が禁忌の場合又は再発を繰り返す場合」とされています。
 
 
これまで日本では長らく用いることはできませんでしたが、救済される患者はきっと増えるでしょう。
 
 
※解説
NNT、Number needed to treat・・・何人の患者を治療すれば、ひとりに治療効果が得られるかを表す数字(人数)。1をAbsolute risk reduction (ARR)で割って得られる。言いかえると、両群とも100人ずつ治療したと仮定して、治療効果を得られた人数の差で100を割ったと考えればよい。
 
NNH、Number needed to harm・・・読んで字のごとく、その治療を何人の人が受ければ、副作用などの悪い結果がもたらされるかを表したも数字(人数)。すなわち、悪い意味でのNNTです。
 
(2015.1月追記)
18か月後のExtended report
 
Rituximabの安全性について
 
 
 

 

ps;↓でEGPA診断に関するreviewを執筆させていただきました!

 


 

 

↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

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