<Clinical scenario>
55歳男性、8日前からの腹痛のため来院。38.5度。腹部CTにて腸管壊死が疑われ、緊急的に右半結腸切除を施行。第21病日、病理結果にて中型の筋性動脈に血管炎の所見を多数指摘された。診断は、結節性多発動脈炎による腸管壊死。さて、治療は?(症例は架空です)
<CHUSPAN-PANバージョン>
Scenario caseでは重症の消化管病変が予後不良因子に該当します。
Treatment of polyarteritis nodosa andmicroscopic polyangiitis with poor prognosis factors: a prospective trialcomparing glucocorticoids and six or twelve cyclophosphamide pulses insixty-five patients.
Guillevin L, et al.
Arthritis Rheum 2003;49(1):93-100
Patients
・65例がFVSGで企画された前向き多施設研究に参加。過去の治療歴を有する者はいない。PANとMPAは組織学的に証明されたものか、ACR基準とCHCC nomenclature for MPAを満たす者とした。診断がつき次第、FFS予後不良因子を少なくともひとつ有する患者は試験に登録された。※FFSの説明は略(↓)
・私たちは初診時のBVASを適用した。その予後を予測する能力をテストするため、そしてFFSと比較するため。これは試験の患者を選ぶためではなく、後ろ向きに適用された。疾患の所見を活動性の血管炎に起因する場合に限り考慮に入れる必要がある。
・Randomizationは電話、fax、E-mailを通じてコーディネートセンターで管理された。登録基準はセンターでチェックされた。
・腹部・腎動脈造影は腹痛and/or腎不全、あるいは腎疾患の診断がはっきりせず腎生検が必要なその他の腎症状がある患者でのみ施行された。
・すべての患者の血清がEUVASの推奨に基づき免疫蛍光法でANCA関連血管炎の存在を検査された。16倍希釈された血清とエタノール固定された好中球を用いて。免疫蛍光法で検出されたANCAを有するすべての患者においてELISAを行った。ELISAは免疫蛍光法が陰性であっても勧められたが強制ではなかった。
Therapy.
・CSは以下の通り:15mg/kgを3日間、その後経口1mg/kg/dayを3週間。CSは0.5mg/kgになるまで10日毎に5mgずつ;15mg/dayになるまで10日毎に2.5mgずつ減量された。10mg以下では中止されるまで1mgずつ減量した。
・CYパルスは1ヶ月間は2週間毎に投与された。患者は6または12パルスにランダムに割り付けされた。CY中止後維持療法はなし。
・研究のエンドポイントはITT解析に基づいた各群に起きるイベントの数(再発and/or死亡)。
・PCP予防のcotrimoxazole,calcium, and vitamin D3は必須とした。1998年からステロイド誘発性骨粗鬆症を治療するためのビスフォスフォネートが勧められた。再発例では主治医治療を変更してよく、その他の免疫抑制剤や異なる投与法を選択してもよいこととした。
RESULTS
Patient data and therapy.
・臨床症状のなかで3例が副鼻腔炎を有し2例が結膜炎を有した。副鼻腔炎は血管炎が起きる前より存在し、WGの診断を示唆する議論はなかった。結膜炎は対症療法で速やかに改善した。その他5例(6パルス3例、12パルス2例)はPANとMPAの両方の症状を有した。このオーバーラップは議論されたが最終的にCHCC命名法に基づいてMPAとされた。平均FFSは1.8±0.8(median2.0)。平均BVASは21.8±7.7(median22)。診断時の主な臨床・生物学的所見はTable 1にまとめた。
・Randomizationは6CYパルス31例、12CYパルス34例を割り付けた。主な臨床所見、生物学的、免疫学的パラメーターについて治療間に有意な差はなかった (Table 1)。Crが12パルスで6パルスよりも高い傾向があったが (2.89±2.95 vs 1.87±1.33 mg/dl; P=0.08)、中央値は同様(1.71 versus 1.70 mg/dl)。
Outcome.
・CRを達成した56例のうち20例が再発した (Table 2); そのうち4例はCS and/or CYを受けている間に。ほとんどの患者 (18/20)が治療強化あるいはCSと免疫抑制剤による再治療、免疫グロブリン療法(n=1)で寛解した。CYパルス療法後の12ヶ月の間の再発は12パルス群の再発7例のうち2例、6パルス群の再発13例のうち6例。
・死因とその時期はTable 3。死亡した14例は>60歳。そのうち2例が>85歳。5例はコントロール不良の血管炎が、3例は感染症が原因。10例は最初の6ヶ月以内に、5例は治療開始3週間以内に死亡した。その他の死亡は>6ヶ月。血管炎に関連しなかった。2例が悪性腫瘍;両群とも6CYパルス。
Side effects.
・副作用はTable 4。CYによる嘔気・嘔吐はほとんど全例に起きたが十分な治療で管理できたためTableに含めて考えなかった。32例 (49%)は副作用がなかった。
Survival analysis.
・12- and 6-パルス群の平均再発率は3年後22±16% (95% CI) and 66±27% (95% CI) (P=0.02, HR 0.34) (Figure 1A)。
・3年間の生存率は12パルス群で85±12% (95% CI)、6パルス群で74±17% (95% CI) (P=0.47) (Figure 1B)。
・イベント発生 (relapses and/or deaths)を考慮すると、Event Free Survival (EFS)は12パルス群(68±17% [95% CI])で6パルス群 (19±22% [95% CI]) (P=0.02, HR=0.41)よりも有意に高かった (Figure1C)。
・PANとMPA患者の治療反応性について、3年のEFSの割合は12CYパルスのPAN 80±35% (95% CI)、6CYパルス PANで71±20% (95% CI)、12CYパルスのMPA 54±34% (95% CI)、6パルスのMPA 55±27% (95% CI) (Figure 2)。
・私たちは診断時と再発時に評価されたANCA、FFS2以上、BVAS22以上の再発や死亡のための可能性のある予測因子を評価した。ANCA陽性は再発を予測しなかったが(P=0.81)、死亡と有意に関連した (3年生存率はANCA陽性患者で70± 17% [95%CI]、陰性患者で93±10% [95% CI]) (P=0.04; HR=4.8)。FFS (P=0.17)もBVAS (P=0.19)も再発のリスクと関連しなかった。死亡率に関して私たちはBVASの関連を認めなかったが(p=0.12)、最初のFFS>2はFFS2以下よりも3年生存率が有意に低かった (48±34% [95% CI] vs 87±9% [95% CI]) (P=0.03, HR=3.5)。
<リウマトロジストのコメント>
批判的に吟味すれば、Open labelでSample sizeを計算していません。また、MPA+PANをまとめてRCTを組んでいます。しかし、PAN治療の有効性・安全性の参考にはなりました。そう、PANのRCTは少ないのです。
さて、Figure 2で有意差があったのは、6パルスのMPAと12パルスのPANの間だけで、その他はなかったようです。Sample sizeに問題はありますが、PANに限れば、12パルスの6例、6パルスの12例に有意差はありませんでした。
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