ANCA関連血管炎の寛解導入においてリツキシマブがシクロフォスファミドに劣らないことを示したRCT、RAVE試験の18ヶ月の報告がなされました。
6ヶ月時の報告のみならず、18ヶ月もNEJMに載るあたり、この試験のインパクトが高いことが分かります(2報目は少し落ちることが多いですよね)。
※6ヶ月時の報告
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METHODS
Study Oversite, Patients, Disease-Assessment Instruments, Treatment Groupsは6ヶ月時の報告を以前にまとめたので省きます。 Outcomesより訳します。
Outcomes
12ヶ月、18ヶ月時において、BVAS/WG=0でステロイド減量レジメンに乗っていて、再発orその他の治療失敗の理由を有さない患者がどの程度いたか
Flow cytometric and ANCA measurements
受診のたびに血液の単球を中央でfive-color flow cytmetryで調べた。B-cell depletionをCD19+ B cell<10 /mcl、10以上69未満をredetection、69以上or元の値に戻ることをreconstitutionと定義。PR3-ANCAとMPO-ANCAはELISA。
Statistical analysis
(略)2つの非劣性マージンを6,12,18ヶ月における20%とした。優越性の検証は非劣性が満たされたときに行うこととし、治療効果の違いのために計算された信頼区間の下限が0よりも高い場合とした。再発率はPoisson regression modelを用い比較した。
RESULTS
Patients
・重症AAV197例を登録し、99例をリツキシマブ、98例をシクロフォスファミド→アザチオプリンにランダムに割りつけた。18ヶ月の時点で各々61例(62%)、63例(64%)が最初の群に残っていた。彼らは早期の治療失敗に至らず、互いのレジメンにクロスオーバーせず、別の治療法に変更もされず、その他の理由で脱落もしなかった。
Efficacy assessments
・CR at 6, 12, 18 mosはリ群は各々64%、48%、39%、シ群は各々53%、39%、33%
・リツキシマブはこの治療間の差から非劣性の基準を満たした。寛解の割合・期間、再発の数・率・重症度、BVAS/WGのAUC、またはVDI・SF-36のスコアにおいて差はなかった。
Duration of CR
・146例のうち、リ群76例(74%)、シ群70例(71%)が18ヶ月のいつかの時点でCRを経験した。CRの平均期間に差はなかった。
・CRとなったリ群76例のうち、35例(32%)が18ヶ月までに再発した。再発までの平均期間(±SD)は176±91.2日。シ群70例中20例(28%)が再発し、再発まで平均142±99.2日(p=0.16)。
・PR3-ANCA例はMPO-ANCA例よりも再発しやすかった(p<0.001)。GPAはMPAよりも再発しやすかった。再発例は新規発症例よりも再発しやすかった。これら3つの要素をすべて有する場合、再発率は最大となった。治療間では有意な差はなかった。再発のしやすさはベースラインにMajorな腎病変があることで影響されなかった。
Relapsing disease vs newly diagnosed disease
・再発例101例のうち、リ群の67%が6ヶ月の時点でCRを有し、49%、37%が各々12ヶ月、18ヶ月でCRを維持。シ群では42%、24%、20%。この違いからリ群は6ヶ月(p=0.01)、12ヶ月の時点(p=0.009)の時点で優位であったが、18ヶ月ではそうでなかった(p=0.06)。
・再発例として登録された患者において、リ群はシ群と比較し、6ヶ月(1 vs9;0.004 vs0.034/人月;p=0.02)、12ヶ月(7vs15;0.014vs0.033/人月;p=0.03)の時点で重症の再発が少なかった。しかし、リ群のほとんどの患者においてB細胞が再構成される、18ヶ月の時点ではその差はもはや有意ではなかった(13vs17;0.018vs0.027/人月;p=0.19)。
Renal outcomes at 12 and 18 mos
・全部で102例がMajorな腎疾患を有した。これはBVAS/WGの腎臓の項目のmajorな異常としての要素(尿RBC、生検で証明された糸球体腎炎{これは49例}、またはCrの>30%の上昇)を少なくとも一つ有することと定義された。
・各々の治療群において51例ずつがこの予め決められた基準をベースラインで満たした。これらのうち、リ群の51%、シ群の41%がeCCr<50ml/m、各々20%、16%が<30ml/mであった。
・majorな腎疾患を有する患者(各々51例)のうち、リ群の38例(75%)、シ群の39例(76%)が18ヶ月までのいつかの時点にCRとなった。eCCrの平均値の改善の程度は常に同様だった(p=0.80)。リ群の患者はシ群よりも有意に低いeCCrを有していたにもかかわらず(54ml/m vs 71ml/m;p=0/01)。
Disease relapse as related to B-cell detectability and ANCA
・リ群76例とシ群70例のうち、各々24例(32%)、20例(29%)が6-18ヶ月に再発した。リ群では最初の再発はsevere9例、limited15例。シ群では最初の再発はsevere10例、limited10例。
・B cellは再発したリ群24例中21例(88%)で検出され、再検出から再発までの期間は80.2±85.1日(1-286)。残り3例ではB cellが検出されないままlimitedの再発が起きた。反対に、シ群では再発した20例中11例(55%)にB cellが検出され、再検出から再発まで平均101.8±98.2日(0-259)。B cellが検出されない6例で再発が起き、うち2例はsevere。残りの3例は1回もB cell depletionに至らず。
・ANCAの上昇は両群とも再発を予測しなかった。しかし、再発はB cellもANCAもなければ稀で、リ群で1例(limited)、シ群で2例(limited、severe1例ずつ)が再発しただけ。
Adverse events
・副作用は期間中ITTで解析されたが、18ヶ月後までの総AEs、重症AEs、疾患に関わらないAEsの数・率とも有意な差はなかった (Table S3 in the Supplementary Appendix)。少なくとも一つ以上の重症or疾患に関連しないAEsの数に差はなかった。死亡が4例あり、各々2例ずつ (see the Supplementary Appendix)。
・リ群の安全性をシ群と比較するために患者が各々の治療を受けている間におけるAEsを解析した (Table 2)。リ群ではシ群に比べ、Grade2以上の白血球減少(WBC<3000)が少なかった(5 vs 23, p<0.001)。Grade3以上の感染症の数・頻度に差はなかった。しかし、リ群では3人の患者に4回の肺炎が起きたのに対し、シ群では11例の患者に11回の肺炎が起きた(p=0.03);これらの全てが入院や静注抗生剤を要したわけではないが。白血球減少はシ群における用量調整の頻度を増やしたが、感染症や肺炎に明らかに関連したわけではなかった。
・血清IgG, IgA, IgMはベースライン、6ヶ月後,18ヶ月後において両群間で差はなかったし、これらの免疫グロブリンが低い患者の数も同様であった(Table S4 in the Supplementary Appendix)。またIgGが低いことと重症感染症の関連も有意ではなかった。Primary endpointを報告した後試験の終了期間まで新たな癌は発生していない (see the Supplementary Appendix)。
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<リウマトロジストのコメント>
RAVE試験からの教訓をまとめます。
・リツキシマブの効果は18ヶ月までシクロフォスファミド・アザチオプリンに劣らない。
・再発例におけるリツキシマブの優越性は6、12ヶ月ではあったが、 18ヶ月で消えた。とはいっても・・
※リツキシマブ;67%、49%、37%
シクロ・アザ ;42%、24%、20%
→ 差(ARR)=25%、25%、17%
→ 6、12ヶ月時はともにNNT=4
→ 18ヶ月もp=0.06で有意差なしと言われても、その差は17%もあります。
・リツキシマブ群におけるCR後の再発はB cell reconstructionに関連するかもしれない。
・シクロフォスファミドでは白血球減少が多く、用量調整に忙しいが、白血球減少は感染症、肺炎、死亡に影響しなかった。
・シクロフォスファミドでは、肺炎が多かった。18ヶ月で4回<11回。
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