リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

CYCAZAREM - 現在の標準治療を確立したRCT -

CYCAZAREMについて述べます。
 
って、なんのことだかわかりませんよね(笑)
 
CYCAZAREMとは、
 
Randomised trial of CYClophosphamide versus AZAthioprine during REMission in ANCA positive Systemic Vasculitis
 
の頭文字をとったものです。
 
これまで寛解導入の話ばかりしていましたので、この度はその後の維持療法にスポットを当ててみましょう。
 
実はこの試験、現在の標準治療のストラテジーを確立した大切なRCTなのです。今から10年前、2003年の報告です。
 
背景として、
 
ANCA関連血管炎に対しCyclophosphamieCY)による治療が板に着いてきた1990年代、この薬剤の長期的な毒性(出血性膀胱炎、膀胱癌、リンパ増殖性疾患、MDS不妊)を減らしたいという臨床医たちの願いがありました。
 
寛解導入後、毒性の少ないAzathioprineAZA)に変更しても再燃率が変わらなければよいわけです。
 
では、はじめましょう!
 
 
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Methods
Study design
全ての患者がCYステロイドの同じ寛解導入レジメンで治療された。3ヶ月以内or3-6ヶ月で寛解導入された患者をAZACYにランダムに割付けた。エントリーから12ヶ月後、CY投与群はAZAにスイッチして、18ヶ月まで続けた。
 
Eligibility criteria
Inclusion criteria
Wegener granulomatosis (WG), Microscopic polyangiitis (MPA) or renal-limited vasculitis
・腎病変を有し、その他の重要臓器に危険な機能不全がないこと、
ANCA陽性or組織学的な血管炎の証明があること
 
Exclusion criteria
1年以内にcytotoxicな薬剤を投与されていること
・その他の全身性の自己免疫疾患があること
Hepatitis Be antigenemiaHCV or HIV感染症
Cr > 5.7 mg/dl (500mmol/l)
・悪性腫瘍、妊娠、年齢<18 or >75
 
Drug regimens
ともにCY2mg/kgPSL1mg/kgで始め12週までに0.25mg/kgに減量)で治療された。>60歳の人には25mg減量し、WBC<4000ならCYを中止する。randomizationの後、CY1.5mg/kgか、AZA2mg/kgをともにPSL10mg/日とともに投与された。12ヶ月たてば、ともにAZA1.5mg/kgPSL7.5mg/kgとした。胃炎、真菌感染、ニューモシスティスの予防は推奨されたが、強制ではなかった。
 
Evaluations
研究の評価は0,1.5ヶ月後、3ヶ月後、6,9,12,15,18ヶ月後、および再燃時に行われました。CBCESRCRPALTCr、糖を検査した。GFRは登録時、寛解導入時、試験の終了時に行った。疾患活動性はBVASDisease extension indexで行われた。(略)副作用は軽症、中等症、重症、生命を脅かす程度とグレードされた。
 
Disease definition
診断はChapel hillコンセンサス会議の定義、過去のEurope union studyに準じた。寛解BVASで新たなor悪化した疾患活動性がないこととし、さらに、持続する疾患活動性をひとつの項目までにしか認めないこととした。Major relapseBVASの重要臓器(腎、肺、脳、眼、運動神経or消化管)に関する24項目のうちひとつに活動性の血管炎による再発or新たな発症を認めることとした。Minor relapseBVASのその他の項目で3項目未満の再発or新たな発症とした。寛解、再燃は調査者によって決められ、独立した観察者によって後からvalidateされた。
 
Statistical analysis
Randomizationは各々の国でpermuted blocks of 4を用いて中央割り付けされ、疾患で層別化された。始めのデータは中央のコンピューター登録でsubmitされた。
Primary end pointは再燃、majorでもminorでも。再燃率はCY群で25%と予測された。研究はAZA群で再発率が>20%増加することを検出するようデザインされたーすなわち、少なくとも45%の再燃率を検出するようにデザインした。有意レベル0.05power of 0.8を達成するために146例が必要であった。治療の再燃までの時間はKaplan-meier解析でlog-rank testを用いて行われた。両群の背景がカテゴリー変数はFisher’s exact testで解析され、治療の再燃への影響はKaplan-meier testで共変量として評価された。(略)中間解析は行わない。
 
Results
158例が登録され、3例が参加を拒否し、155例が試験に登録された。randomization時に両群において、背景に差はない(Table1)。組織学的な診断は132例においてなされ、中央でレビューした。臨床的寛解144例(93%)に認められ、3ヶ月以内が119例(77%)、3-6ヶ月が25例(16%)だった。これらの患者がCY73例、AZA71例にランダムに割りつけられた。
 
Death and withdrawals
7例が寛解導入期に死亡し(肺炎2例、肺血管炎と感染3例、stroke2例)、1例が(strokeのため)維持療法中に死亡した。1寛解導入期に、5例が維持療法中にwithdrawalした。CY2例(6ヶ月と13カ月)、AZA3例(71213カ月)。理由は3例がlost to followup2例が主治医の判断であった。(←追跡率=139/144=96.5%と計算されます
 
Relapse
AZA群では11例(15.5%)がCY群では10例(13.7%)が再燃した(p=0.65, difference1.8%, 95%CI -9.9-13.0%)。いずれもMajor relapse5例。RelapseMPAで少なかった(4/52;8%<17/92;18%,p=0.03)。その他、再燃に影響した変数はなかった。
 
Adverse events
84例の患者に218の副作用が起きた。55%155例中85)が少なくとも1回の好中球減少を経験した。重症or生命に関わるイベントが15例(10%)に寛解導入期に起き、維持療法中にAZA8例(11%)、CY7例(10%;p=0.94)に起きた。33感染症のうち、17例(52%)が好中球減少に関連した。発熱、悪寒、皮疹で出現したAZAへのアレルギーが5(7%)におき、AZA中止となった。
 
Renal function
GFRは両群とも登録時から18ヶ月まで同等であった。AZA+17.5m/minCY群で+23.5ml/minほど増加した。末期腎不全は両群とも2例ずつ。
 
BVAS score
平均のBVAS score寛解導入治療を開始してすぐに現象した。持続性の病態の平均スコアはより緩徐に減少し、試験期間中に低値で維持され、両群で差はなかった。
 
(略)
 
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<リウマトロジストのコメント>
 
このRCTは、「活動性の強い病初期には有効性の高い薬を使い、病勢が落ち着いてから、より毒性の少ない薬に変更する」というストラテジーをテストしたものと言えます。
 
Randomizationに問題なく、baselineは同等でした。追跡率は96.5%と十分でした。ITT解析※については記載がありませんでした。盲検化はなされていません。
 
サンプルサイズは、再燃率がCY25%に対しAZA>45%であると仮定して、この差を検出するように決められています。つまり、現代の非劣性試験に近いものと思われます。
 
ITT解析、盲検化に若干の問題があるようですが、144例ものAAVを登録したRCTの結果、再発率はともに15%前後でした。少なくともAZACY寛解導入率において>20%は劣らないことが示されました。
 
この結果を受け、血管炎治療の歴史において新たなストラテジーCY-induction + AZA-maintenanceが標準とされたのです。
 
 
※解説
ITT解析・・CY-dropoutの患者がAZAで治療されたりAZA-dropoutCYで治療されることがあっても、はじめの群分けで解析することです。
 
 
ps;
 
歴史を変えたのはAZAですが、AZAMTXとのRCTWEGENT)が2009年に報告され、両剤は同等であるとされました。
 

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