リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Intermittent arthritis(間欠性関節炎)

(2012年2月)
 
 
関節痛で紹介されたのに、来院時、「今は痛くない」と言われることがあります。
 
 
Clinical senario
70歳女性
 
※実際のケースを一部アレンジしております。
 
3ヶ月前より右第2MCP、右第4MCP、右手に次々に関節痛が出現した。その都度、近くの整形外科を受診し対症療法にて改善した。この度、RF高値、ACPA高値を認めたため、紹介された。
 
関節痛はいずれもパンパンに腫れ、発赤を伴うが、1週間以内に完全におさまる。同時に複数の関節が侵されることはない。
 
受診時、痛い関節はなし。身体所見上、関節炎はなし。
 
ACPA(アクパ)とは抗CCP抗体のことです。RAに対する特異性が極めて高い検査ですよね。
 
でも、関節炎がなかったら、RAとは言えません。さて、診断は?
 
 
 
Senario caseの診断>
 
S/o; Palindromic rheumatism (回帰性リウマチ)
R/o; Pseudogout (偽痛風
 
American Family Physician 2003の多関節炎へのアプローチに、関節炎のパターンからの鑑別が提唱されています。
 
Intermittent arthritis・・症状は一定の期間(数日から1ヶ月)続き、次の症状が出るまでに消える。
・結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風
・回帰性リウマチ
 
Migratory arthritis・・ひとつか二つの関節に急に腫れが出現し、2-3日で軽減する。症状が改善するにつれて、同様の症状が別な関節に出現する。通常は片側性。
・淋菌性関節炎
・リウマチ熱
・サルコイドーシス
SLE
・ライム病
・細菌性心内膜炎
Whipple
 
 
この方は関節炎が治って、しばらくして次の関節炎が起きるのでIntermittent arthritisとなります。痛風UA正常、関節部位から否定的と思われました。高齢者に多い偽痛風は一考する必要があります。診断のためには関節液検査が必要ですが、ACPA陽性、MCP/手の関節炎はいかにも回帰性リウマチらしいです。
 
回帰性リウマチの方は、専門医を受診したときには関節炎があるとは限りません(おそらく、ないことが多い)。
 
やはり、病歴が大切です。
 
通常のRAでみられる慢性的な関節炎というよりも、発赤、軟部組織の腫脹、強い疼痛を呈することが特徴的です。
 
その辺を聞きとれれば、この病気を疑うことができます。
 
 
(以下、UptodateClinical features of rheumatoid arthritisより)
 
Palindromic rheumatism — RAの発症は少数の患者においてエピソード的である。ひとつから少数の関節炎が数時間から数日続くという状態で始まる。症状がない時期が数日から数ヶ月あり、このエピソード的なパターンを“回帰性リウマチ”という。回帰性リウマチの患者はより典型的な持続的関節炎を呈するRA患者と同様の遺伝的リスクと特定のHLA alleleの用量依存性を呈する。
 
回帰性リウマチを呈する患者で、RAやその他の疾患に移行する割合は研究によって様々である。20年以上フォローされた回帰性リウマチ60例の研究によると、67%RAに進展した。その他の三次医療センターで経験された147例の報告によると41例(28%)がRAに移行し、4例がその他の疾患に移行した(SLE3例、Behcet1例)。
 
ある研究によると、回帰性リウマチのほとんどがRAにコモンなACPAを有していた。ACPARAに移行した患者の83%において陽性であった。