リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

乾癬性関節炎における抗CCP抗体①

Clinical scenario
CCP抗体は関節リウマチ(RA)だけではなく、乾癬性関節炎(PsA)にも出ることがあると伺った。
 
 
< 疑問発生!>
乾癬の患者が関節炎を呈し、抗CCP抗体が陽性であれば、
 
PsAは抗CCP抗体陽性となることもあると考える?(RA診断における偽陽性
 
それとも、乾癬に関節リウマチが合併したと考える?
 
 
Pubmed
Pubmedで以下を検索しました。
 
*1 AND psoriatic arthritis[title]
 
 
2. Anti-cyclic citrullinated peptide antibodies in psoriaticarthritis--cross-sectional study and literature review.
Popescu C, Zofotă S, Bojincă V, Ionescu R.
J Med Life. 2013;6(4):376-82. Epub 2013 Dec 25.
 
RATIONALE:
CCP体はRAだけでなくPsAにも検出される。それらの抗CCPPsAの臨床症状に関連しているのかもしれない。またこの抗体はRAよりPsAを分類するのに役立つかもしれない。
OBJECTIVE:
PsA患者における抗CCP抗体の頻度とその関連を調べること。抗CCPRAより分類するための抗CCPの有用性を評価すること。
METHODS AND RESULTS:
41例のPsA患者、139例のRA患者、147例の健常人のcross-sectionalstudy。臨床背景、疾患活動性、血清学:RF、抗CCP5(12.2%)が抗CCP陽性だった。抗CCP(-)PsA患者に比べ、抗CCP(+)の患者はより多関節炎のパターンを呈した(p = 0.005)。生物製剤で治療される頻度が高く (p = 0.015)、従来型DMARDsで治療されることが少なかった (p < 0.001)。抗CCPを陽性とする理想的なカットオフ値が決められ、11.6 U/mLを超えれば既知のPsAは実際にはRAと乾癬の合併している可能性がかなり高かった。
DISCUSSION:
疾患活動性がより高い抗CCP(+)PsAの患者は抗リウマチ薬とフォローアップにおいてより強力な管理の必要性を示唆した。抗CCPRAよりPsAを分類するのに役立つ可能性がある。とくにSpAの要素を持たないRA様のPsAの型を分類する上で。
 
→ ルーマニアのリウマチ科より。抗CCP(+)5/41 (12.2%)>11.6 U/mLならPsAというよりはRAの合併と考えるべし。
 
 
5. Antibodies against cyclic citrullinated peptide in Japanesepsoriatic arthritis patients.
Maejima H, Aki R, Watarai A, Shirai K, Hamada Y, Katsuoka K.
J Dermatol. 2010 Apr;37(4):339-45.
 
・抗CCP抗体はRAを予測し、疾患活動性を示唆すると考えられている。抗CCP(+)RA患者は(-)の患者より関節変形を来たしやすく、機能障害を来たしやすい。日本のPsA患者において抗CCPの存在に関する研究が出版されている。私たちの目的は抗CCPPsA患者においてひょっとすると有用なマーカーになるのかを明確にすること。ここに抗CCP(+)PsA患者患者の症例報告をする。
PsA患者15例のうち抗CCPを測定し、その他のタイプの乾癬を有する18例のコントロールと比較した。3例のPsA患者において抗CCPが陽性であったが、コントロールで陽性となった者はいなかった。抗CCP陽性の患者は陰性の患者に比べX線の骨びらんの数、多関節炎、抗リウマチ剤の使用、HLA-DRB1*04shared epitopeが高かった。私たちの研究は抗CCPPsAを予測し、RAと同じく関節炎の重症度のマーカーになりえる事を示唆した。
 
→ 北里大学皮膚科より。抗CCP(+)3/15 (20%)。抗CCP(+)は骨びらん、多関節炎、DMARDs使用が多い。
 
 
 
7. Assessment of anti-cyclic citrullinated peptide in psoriaticarthritis.
Abdel Fattah NS, Hassan HE, Galal ZA, El Okda el SE.
BMC Res Notes. 2009.
 
 
 
BACKGROUND:
CCPRAにおいて特異性の高い診断マーカーであ、予後を予測マーカーでもある。PsAにおいても検出され、臨床所見、X線所見との関連について議論されるところである。この研究はPsAにおける抗CCPを評価し、臨床的、画像的な関連を決定した。
METHODS:
この研究には4つのグループが含まれる。PsA40例、関節炎のない乾癬40例、RA40例、健常人40例。参加者は抗CCPの検査を受けた。臨床的、画像的なデータを集積し、PsA患者の抗CCPの有無で統計学的に比較検討を行った。
RESULTS:
7例のPsA(17.5%)34例のRA(85%)が抗CCP陽性であった。その他の群では抗CCPは陰性。抗CCP濃度について言えば、関節炎、腫脹関節、圧痛関節、末梢関節の変形と機能障害が抗CCP(+)PsAに多かった。
CONCLUSION:
CCPPsAに検出されるかもしれない。そして関節炎の数、腫脹関節、圧痛関節に関連するかもしれない。末梢関節の変形と機能障害、びらん性関節炎に関連するかもしれない。
 
 
→ エジプトの大学病院皮膚科より。抗CCP(+)7/20 (17.5%)。抗CCP(+)は関節炎の数が多く、変形と機能障害に関連。
 
  
 
8. Anti-cyclic citrullinated peptide antibodies and IL-23p19 inpsoriatic arthritis.
Shibata S, Tada Y, Komine M, Hattori N, Osame S, Kanda N, Watanabe S,Saeki H, Tamaki K.
J Dermatol Sci. 2009 Jan;53(1):34-9.
 
 
BACKGROUND:
CCPPsA5-13%で検出される。しかし、抗CCP(+)PsARAが同様の病態生理学を有しているかどうかは不明。
 
OBJECT
PsA患者における抗CCPの頻度を決め、これらの抗CCP(+)PsAを特徴づけること。
METHODS:
私たちはPsA(n=16)、乾癬(n=15)RA (n=9)、健常人(n=11)において抗CCPの血清値を測定した。RFMMP-3COMPIL23p19の血清レベルも測定した。
RESULTS:
PsA患者16例中2例において抗CCP陽性でRFも高値であった。しかし、血清IL-23p19RA患者と抗CCP(-)PsA患者のそれと比べ、抗CCP(+)PsA患者において二桁でより高かった。MMP-3COMPIL-12p40の血清値に有意な上昇はなかった。
CONCLUSION:
13%PsA患者が抗CCP(+)。これらの患者はRAACR分類基準を今までのところ満たさなかった。さらに、RAよりもむしろ典型的なPsAの臨床所見を示した。抗CCP(+)PsA患者はひょっとするとRAを発症するリスクが高いかもしれないが、私たちはこれらの患者は当面は、RAとは異なるPsAの独立したサブタイプに入ると提案する。
 
→東大皮膚科より抗CCP(+)2/16(12.5%)
 
 
 
13. Anti-CCP antibodies in rheumatoid arthritis and psoriaticarthritis.
Inanc N, Dalkilic E, Kamali S, Kasapoglu-Günal E, Elbir Y, DireskeneliH, Inanc M.
Clin Rheumatol. 2007 Jan;26(1):17-23.
 
目的はRF(+)RARF(-)RAPsAにおいて抗CCP抗体の頻度と関連する臨床所見を調べること。前向きのcross-sectional,  multi-centre studyで、208例のRARF陽性129例、RF陰性79例)、PsA56例、健常人39例において抗CCPを測定した。RA患者において疾患活動性(DAS28)、身体障害(HAQ)、身体能力(機能分類)、X線上の骨びらんを含む臨床パラメーターを調査した。PsA患者では臨床的所見、画像的所見を決定した。抗CCP2抗体を第二世代ELISA(Euro-Diagnostica,Netherlands)を用いて測定した。
RF(+)RA129例のうち104(81%)RF(-)RA79例中16(20%)PsA56例中7 (12.5%)が抗CCPを有し、健常人ではゼロだった。抗CCP(+)RA患者は抗CCP(-)RAに比べ、有意に高い疾患活動性を有し、より大きな機能障害、より高いびらん性疾患の頻度を有した。サブグループ解析においてRF(-)の患者において抗CCP抗体はびらん性疾患とも関連した。抗CCP(+)PsAの患者全てが対称性の関節炎を有し、腫脹関節がより多かった。
RF(+)RA患者における抗CCPの頻度はRF(-)RAPsA患者よりも高かった。抗CCPRF(-)RA患者においてびらん性疾患にも関連した。抗CCPRFの検査はともに患者の30%で陰性。PsAにおいて抗CCP(+)はよくある所見であり、対称性の多関節炎に関連する。
 
→トルコのリウマチ科より。抗CCP(+)7/56 (12.5%)。対称性の多関節炎を呈する。
 
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https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/14209324

*1:anti-cyclic citrullinated peptide or ccp