リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

B型肝炎の既往を有する関節リウマチの患者さん

(2011年12月)
 
 
RAMTXを使用中(中止後)、B型肝炎が再燃することが知られています。
 
再燃したB型肝炎は時に劇症化し、死にいたることがあるのです。
 
これらはHBsAg+の人(キャリア)における報告です。
 
なので、リウマトロジストはRAMTXを開始する際には、HBsAg(+HCVAb)を必ずスクリーニングしています。
 
ところが最近、TNF阻害薬使用中にキャリアのみならず、HBcAbを有する人(既感染者)にreactivationが起きることが注目されています。
 
同様の問題は、血液内科などで化学療法を行う時にもよく知られております。
 
これらを受け、日本肝臓学会が926日に「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(改訂版)」を掲載しました。
 
これまでHBVのスクリーニング(HBc抗体HBs抗体)は査定されやすかったでしょうが、今後は認可されるようになるかもしれません。
 
Biologicsを考慮する際には、ツ反(QFT)、βDグルカンに加えHBVをスクリーニングする時代になりそうです。
 
 
以下に最新の報告をまとめました。
 
1)Medicine2011
HBVキャリア+既往感染のSystematic review
・文献検索でRAなどのリウマチ性疾患257例(HBsAg+89Anti-HBc+168)について調査した
・再活性化・・HBsAg+35/89 (39%) vs Anti-HBc+ 9/168 (5%) ←問題はここの5%です!
・死亡・・・HBsAg+4vs Anti-HBc+ 1
 
暫定的なRecommendationを提案
・臨床症状、肝機能障害and/or高ウイルス価を有するHBsAg+のキャリアはTNF阻害薬を開始する前にHBV感染症をコントロールすること。
・無症候性HBsAg+キャリアは抗ウイルス剤をTNF阻害薬を開始する2-4週間前より少なくとも6ヶ月間は投与すべし。1年以上TNF阻害薬を投与されるのであれば、耐性獲得のリスクが少ない抗ウイルス剤を投与すべし。ラミブジンを1年以上投与される患者はウイルスの耐性獲得についてモニターすべし(肝機能とウイルス検査)。
Anti-HBc+の患者はルーチンの予防は勧められない。ただし、免疫抑制の程度、期間、HBVのその地方における傾向を考慮すること。TNF阻害薬(とくにモノクローナル抗体)を使用中は1-3ヶ月毎に肝機能とウイルス検査にて慎重にモニターしなければならない。
 
2)Modern Rheumatology2011
428例のRA患者のうち、135例がHBAg-/Anti-HBc+/Anti-HBs+であった。この135例を3ヶ月毎にHBV-DNAを測定し、HBV-DNAが陽性化したら、毎月測定した。12ヶ月で7例にHBV-DNAの陽性化を認めた。これらの患者では生物学的製剤がよく用いられていた(85.7% vs 36%, p= 0.008)。Hazard ratioBio 10.9p=0.008, ETN6.9p=0.001)。
 
3)ARD2011
台湾では106例のTNF阻害療法を受けたRA患者のうち、なんと88例がHBcAb+。そのうち、
HBsAg+/HBsAb- 18例→抗TNF阻害療法中、抗ウイルス剤(+)の10例はreactivationなし。(-)の8例は5例がreactivationした。
HBsAg-/HBsAb- 12例→4例がウイルスDNA+、そのうちの1例がreactivationした。
HBsAg-/HBSAb+ 58例→reactivationなし。
 
HBc抗体陽性であれば既往感染と判断されるが、そのなかでもHBsAbがあるかないかでReactivationのリスクが異なります。HBcAb+/HBsAb-なら、HBV-DNA4/12で陽性で、1例がreactivationを起こしています。HBsAg+の患者と同様、予防の候補となるのかもしれません。HBcAb+/HBsAb+なら58例においてreactivationなし。HBsAbは強い抗体なんですね。
 
4)ARD2010
14例のchronic HBV infection(キャリア)、19例のresolved HBV infectionの全例をTNF阻害療法中に抗ウイルス剤を投与。1例のキャリアがEnbrelLamivudine投与中にreactivationを起こした。