(2011年12月)
RAにMTXを使用中(中止後)、B型肝炎が再燃することが知られています。
再燃したB型肝炎は時に劇症化し、死にいたることがあるのです。
これらはHBsAg+の人(キャリア)における報告です。
なので、リウマトロジストはRAにMTXを開始する際には、HBsAg(+HCVAb)を必ずスクリーニングしています。
ところが最近、TNF阻害薬使用中にキャリアのみならず、HBcAbを有する人(既感染者)にreactivationが起きることが注目されています。
同様の問題は、血液内科などで化学療法を行う時にもよく知られております。
Biologicsを考慮する際には、ツ反(QFT)、βDグルカンに加えHBVをスクリーニングする時代になりそうです。
以下に最新の報告をまとめました。
1)Medicine2011
暫定的なRecommendationを提案
・無症候性HBsAg+キャリアは抗ウイルス剤をTNF阻害薬を開始する2-4週間前より少なくとも6ヶ月間は投与すべし。1年以上TNF阻害薬を投与されるのであれば、耐性獲得のリスクが少ない抗ウイルス剤を投与すべし。ラミブジンを1年以上投与される患者はウイルスの耐性獲得についてモニターすべし(肝機能とウイルス検査)。
・Anti-HBc+の患者はルーチンの予防は勧められない。ただし、免疫抑制の程度、期間、HBVのその地方における傾向を考慮すること。TNF阻害薬(とくにモノクローナル抗体)を使用中は1-3ヶ月毎に肝機能とウイルス検査にて慎重にモニターしなければならない。
2)Modern Rheumatology2011
428例のRA患者のうち、135例がHBsAg-/Anti-HBc+/Anti-HBs+であった。この135例を3ヶ月毎にHBV-DNAを測定し、HBV-DNAが陽性化したら、毎月測定した。12ヶ月で7例にHBV-DNAの陽性化を認めた。これらの患者では生物学的製剤がよく用いられていた(85.7% vs 36%, p= 0.008)。Hazard ratioはBio 10.9(p=0.008), ETN6.9(p=0.001)。
3)ARD2011
台湾では106例のTNF阻害療法を受けたRA患者のうち、なんと88例がHBcAb+。そのうち、
HBsAg+/HBsAb- 18例→抗TNF阻害療法中、抗ウイルス剤(+)の10例はreactivationなし。(-)の8例は5例がreactivationした。
HBsAg-/HBsAb- 12例→4例がウイルスDNA+、そのうちの1例がreactivationした。
HBsAg-/HBSAb+ 58例→reactivationなし。
→HBc抗体陽性であれば既往感染と判断されるが、そのなかでもHBsAbがあるかないかでReactivationのリスクが異なります。HBcAb+/HBsAb-なら、HBV-DNAが4/12で陽性で、1例がreactivationを起こしています。HBsAg+の患者と同様、予防の候補となるのかもしれません。HBcAb+/HBsAb+なら58例においてreactivationなし。HBsAbは強い抗体なんですね。
4)ARD2010
14例のchronic HBV infection(キャリア)、19例のresolved HBV infectionの全例をTNF阻害療法中に抗ウイルス剤を投与。1例のキャリアがEnbrelとLamivudine投与中にreactivationを起こした。