リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

乾癬性関節炎における抗CCP抗体②

Clinical scenario
CCP抗体は関節リウマチ(RA)ではなく、乾癬性関節炎(PsA)にも出ることがあると伺った。
 
(↓の続きです)
15. The clinical and genetic associations of anti-cyclic citrullinatedpeptide antibodies in psoriatic arthritis

Korendowych E, Owen P, Ravindran J, Carmichael C, McHugh N.

Rheumatology (Oxford). 2005 Aug;44(8):1056-60.
 
OBJECTIVES:
CCPRAにおいて特異性が高いが、PsAでは分かっていない。そのため、この研究の目的はPsAにおける抗CCPの頻度を調べ、その臨床所見、遺伝的な関連を評価する。

METHODS:

PsA 136例、Seropositive RA40例、コントロール40例が抗CCPRFHLA-DRB1 shared epitopeの検査を受けた。臨床的、X線所見的なデータを全患者において前向きに集め、抗CCP陽性と陰性患者において比較した。

RESULTS:

PsAのうち7(5.6%)が抗CCP(+)。コントロールでは0%Seropositive RAでは97%PsAにおける抗CCPの存在はHLA-DRB1 shared epitope (P<0.005)、骨びらん(P<0.05)、腫脹関節数 (P<0.02)、抗リウマチ剤の使用(P<0.05)と有意に関連した。

CONCLUSIONS:

全体としてこのPsA集団において抗CCPの頻度が高いことは統計学的に有意差を達成するに至らなかった。しかし、抗CCPがあれば、それらは疾患活動性のマーカーになり、RAに関連したMHC class IIと関連した。本当に関連があるのかを確かめるためにはPsAと適切なコントロール群の大規模な集団において、さらなる研究が必要である。
 
→ 英国の国立病院リウマチ科より。抗CCP(+)7/135 (5.6%)。骨びらん、腫脹関節数、抗リウマチ剤の使用と有意に関連。
 
 
16. Antibodies to cyclic citrullinated peptides in psoriatic arthritis.
Bogliolo L, Alpini C, Caporali R, Scirè CA, Moratti R, Montecucco C.
J Rheumatol. 2005 Mar;32(3):511-5.
 
OBJECTIVE:
PsAにおける抗CCP抗体の存在と臨床的重要性を決定すること。

 METHODS:

三次紹介センターに連続的に登録されたPsA102例(男性56例)におけるcross-sectionalな研究を行った。疾患の期間の中央値は36ヶ月 (interquartile range 21-81)。全例において末梢関節、体軸の障害、付着部、指趾炎を調べた。ELISAによる抗CCP抗体、IgM RFを検査した。骨盤、手関節、手指、足趾の単純レントゲンを全例で行った。

 RESULTS:

CCP102例中16例で検出され、対称性多関節炎の68例中8例、非対称性多関節炎の8例中1例、単~少数関節炎の20例中2例、ムチランス型の2例中1例、軸型関節炎のみ・DIP関節炎のみの4例中0例で検出された。指趾炎、付着部炎、排他的でない軸性関節炎またはDIP関節炎はもちろん男女比も抗CCP抗体の有無で同様。抗CCP(+)の患者はより抗頻度に抗リウマチ剤で治療され、より多くの関節炎を呈し、びらん性関節炎とRF陽性の頻度が高かった。multiple logistic regressionを用い、抗CCP抗体(RFではなく)は有意にびらん性関節炎に関連(オッズ比9.8; 95%CI 1.87-51.8) し、10関節以上の関節炎 (17.99;3.6-89.2)に関連した。

CONCLUSION:

CCPPsAの臨床所見を有する患者の少数ではあるが意味のある割合で陽性となり、骨びらんと多関節炎に関連する。
 
→イタリアの大学病院リウマチ科より。抗CCP(+)16/102(15.7%)。びらん性関節炎、10関節以上の関節炎に関連。
 
 
17. Anti-citrullinated peptide antibodies may occur in patients withpsoriatic arthritis.
Vander Cruyssen B, Hoffman IE, Zmierczak H, Van den Berghe M, KruithofE, De Rycke L, Mielants H, Veys EM, Baeten D, De Keyser F.
Ann Rheum Dis. 2005 Aug;64(8):1145-9.
 
BACKGROUND:
CCPRAに特異性が高いと考えられている。にもかかわらず、抗CCPPsAにおいても見られる。

OBJECTIVE:

PsAにおける抗CCPの頻度を決定し、そのような患者における臨床所見を述べること。

METHODS:

PsA192例の血清サンプルを抗CCP抗体について解析した。過去に決められたカットオフ値を特異性98.5%以上となる値 (42 U/ml)とした。pepApepB(二つの合成シトルリン化蛋白)に対する抗体を抗CCpを含む血清でline immune法を用いて決定した。腫脹関節数と(現在または過去の)関節炎の数を記録した。臨床所見を記載し、もし手と足部のレントゲンがあれば骨びらんをスコア化した。全てのサンプルでRFも測定した。

RESULTS:

CCP15 (7.8%)で検出された;高CCP2(+)の血清15例のうち13例はpepApepBに対する抗体も陽性。抗CCPはこの検査に用いられる特異性の高いカットオフ値の観点より期待される以上に高かった。臨床的、X線的な詳細な解析によって高CCP抗体の高頻度が乾癬+RAの合併からだけでは説明がつきにくかった。また、分類ミスでも説明がつきにくかった。

CONCLUSIONS:

CCPは乾癬性関節炎でも存在するかもしれない。このコホートの何人かは乾癬にRAを合併していたかもしれないが、少なくとも一部は最初の診断として乾癬性関節炎の典型的な所見を呈した。
 
 
→ベルギーの大学病院リウマチ科より。抗CCP(+)15/192 (7.8%)
 
 
<まとめ>
Pubmedで検索した論文は以下のように別れました。
 
・抗CCP(+)PsAは多関節炎や骨びらんを呈しRA様の病態・・・2, 5, 7, 13, 15, 16, 17
・抗CCP(+)PsAPsAらしい病態・・・17
・言及なし・・・8
 
 
<こたえ>
過去の報告をレビューすると、乾癬に合併する抗CCP抗体の関節炎は多関節炎や骨びらんを伴うことが多く、乾癬にRAが合併していると考えてもよいのかもしれません。
 
 
※ちなみに、リウマチ科の臨床セッティングでは「PsAの5-15%=1割が抗CCP抗体陽性」と覚えましょう。
 
ルーマニアのリウマチ科    5/41 (12.2%)
トルコのリウマチ科      7/56 (12.5%)
英国の国立病院リウマチ科   7/135 (5.6%)
イタリアの大学病院リウマチ科 16/102 (15.7%)
ベルギーの大学病院リウマチ科 15/192 (7.8%)
 
 
北里大学病院皮膚科      3/15 (20%)
エジプトの大学病院皮膚科   7/20 (17.5%)
東大皮膚科          2/16 (12.5%)