リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

2010年の関節リウマチの分類基準:ACRとEULAR共同の取り組み

2010 rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative.
 
長らくサボって読んでいませんでした。
方法論まで理解することはリウマトロジストには難しかったですが、できあがったものはなんとか理解できました(笑)。
 
基本は大切ですね。
 
イメージ 1
 
 
2010ACR/EULAR RAの分類基準 スコア(便宜上前部に書きます)

・対象となる患者(誰を当てはめるか?):以下の患者
1)少なくとも1つの関節に確実な滑膜炎(腫脹)を有すること。*
2)その他の疾患では説明がつかない滑膜炎を有すること。†
 
RAの分類基準(スコアに基づくアルゴリズム:カテゴリーA-Dのスコアを合計する;確実なRAを有すると分類するためにスコア≧6/10が必要)‡
 
A. 関節炎§
 (0) 1つの大関節¶
 (1) 2-10大関
 (2) 1-3の小関節(大関節炎の有無を問わない)#
 (3) 4-10の小関節(大関節炎の有無を問わない)
 (5) >10の関節(少なくとも1つの小関節を含むこと)**
 
B. 血清学的検査(分類のために少なくとも1つを行うこと)††
 (0) RF陰性 and ACPA陰性
 (2) RF低値陽性 or ACPA低値陽性
 (3) RF高値陽性 or ACPA高値陽性
 
C. 急性期反応物質(分類のために少なくとも1つを行うこと)‡‡
 (0) CRP正常 and ESR正常
 (1) CRP異常 or ESR異常
 
D. 症状の期間§§
 (0) 6週未満
 (1) 6週間以上

 
(脚注)
*  診断基準の目的は新規患者の分類である。加えて、関節リウマチ(RA)に典型的な骨びらんを有し以前に2010年の基準を満たしたと思われる病歴を有する患者はRAと分類されるべきである。
長期病歴を有する患者は過去の入手できるデータから以前に2010年の基準を満たした者はRAと分類されるべきだ。(治療の有無にかかわらず)疾患が非活動期である場合においても。
 
†  鑑別診断は様々なプレゼンテーションを呈する患者において異なるが、SLE、乾癬性関節炎、痛風のような病気が含まれる。もし鑑別疾患が明らかでない時はリウマチ専門医にコンサルトされるべし。
 
‡ スコア<6/10の患者はRAと分類されるべきではないが、そういう患者の状態は再評価をしてよい。時間を経て累積的にこの基準が満たされるかもしれない。
 
§  関節炎は診察における任意の腫脹または圧痛関節を意味する。これらは画像検査にて滑膜炎の所見を確認してもよい。DIP、第1CMC関節、第1MTPは評価から除外する。関節分布のカテゴリーは関節炎の部位と数で分類される。関節炎のパターンに基づいて、ありえる中で最も高い分類に当てはめる。
 
¶ “大関節”は肩、肘、股、膝、足関節とする。
 
#  “小関節”とはMCPPIP、第2-5MTP、第1足趾のIP関節、手とする。
 
**  このカテゴリーにおいて、少なくともひとつの関節炎は小関節でなくてはならない;その他は大関節でもその他の小関節でもよい。特にリストしていない関節も含めてよい(顎関節、肩鎖関節、胸鎖関節など)。
 
††  陰性とは施設・検査法における正常値の上限(ULN)以下のIU値とする;低値陽性とは施設・検査法において正常値上限よりも高いが、正常値上限の3倍以下とする;高値陽性は正常値上限の3倍以上とする。リウマトイド因子の結果が陽性か陰性かでしか得られない時は陽性の結果は低値陽性とスコア化するべきである。ACPA=抗シトルリン化蛋白抗体。
 
‡‡  正常値・異常値はその施設における標準によって決められる。CRP=C-reactiveprotein; ESR=赤血球沈降速度
 
§§  症状の期間は評価時に関節炎のあった関節における滑膜炎の症状・所見(例、痛み、腫脹、圧痛)であり、患者の申告によるものとする。治療の状況は問わない。
 
 
(本文より)
 
Eligibility for testing with the new criteria. (新しい分類基準で検査するための適格)
分類基準は二つの必須項目が満たされていれば任意の患者または関節炎以外には健康な個人に適応してよい:
最初に少なくとも一つの関節に現在活動性の滑膜炎がなければならない(すなわち、腫脹)。これは専門医の評価によって決定されるものだ(Table 3)。この目的において全ての対象となる関節が評価される。ただし、DIP、第1MTP、第1CMC関節は典型的には変形性関節症で侵されるため除外する。現在、臨床評価以外の検査法は適格を決定するために滑膜炎の存在を評価するために用いられるべきであるが、これは将来、妥当性がある画像検査がより普及するにつれ変わってくるかもしれない。
第二にこの基準は観察された滑膜炎が別な診断(Table 3)ではよく説明できない時に用いられる。例えばその中で鑑別として考慮しなければならず、除外しなければならない疾患にSLE、乾癬性関節炎、痛風が含まれる。
 
Classification criteria for RA.
上述のように適格のある患者には、確実なRA患者を同定するため4つの追加的な基準が適用される;これらはTable 3に示す。これらの基準の適用はスコアを0-10とし、6以上のスコアは確実なRAの存在を示唆する。この最終的なスコアリングシステムはPhase 1Phase 2のデータに由来するものだ。6未満の患者は確実なRAとは分類できないが、後に満たすかもしれない。Figure 1のツリーアルゴリズムは各々の分野のスコアを合計し、確実なRAの分類のためカットオフ値を6とすることを表す。
確実なRAを有するか否かを分類するため、症状の期間、徹底的な関節診察、少なくともひとつの血清学的検査(RF or ACPA)、およびひとつの急性期反応物質(ESR or CRP)を測定しなければならない。
患者によっては全ての検査をしなくても確実なRAと定義することを満たすことも認められた。たとえば、長期間における十分な数の関節炎を有する患者は血清学的検査や急性期反応物質のいかんに関わらず6ポイントを達成するであろう。しかし、臨床研究と治験への登録の目的においては、各分野の記述は表現型を決めるために必要であろう。
 
Other clinical presentations: erosions and late disease.
新しい分類基準の目的はより早期に診断・治療を可能にすることによって疾患の合併症を予防することであるため、骨びらんはスコアリングシステムに含めないよう考えられた。しかし、上述のようにワーキンググループはより後期のステージにおいて患者が受診することを認識した。加えて、全ての患者に適用されうるひとつの基準が望まれた。したがって、新たに受診する患者に加え、その他の3つのグループを考慮しなければならなかった:
1) RAに典型的な骨びらんを有する者は明らかなRAの証拠を有するとみなされ、そう分類できる。
2) 活動性または非活動性の長期罹患の患者で後ろ向きのデータから以前は分類基準を満たしたと判断できる患者は同様に隔日なRAと分類してもよい。
3) 治療された早期RAでは患者は初診時に分類基準を満たさないかもしれないが、時間を経るごとにみたすかもしれない。
 
Glossary of definitions
このセクションではRAの新しい分類基準を正確に用いるために必要になる細かな定義を示す。短い版をTable 3の脚注に記載した。
 
Definition of an involved joint.
関節の分布を決定するために用いる関節炎は適格基準(上述の)における必須項目である、ひとつの関節炎の定義とは異なる:ここでは診察で活動性滑膜炎を示唆する腫脹または圧痛を伴う任意の関節を意味する。
感度を高めるために、圧痛は(とくに第2-5MTP関節において)関節炎の決定のために腫脹と同様に重要な所見であるとした。
基準を適用するための適格と同様、DIP関節、第1MTP関節、第1CMC関節は変形性関節症で頻繁に侵されるために考えられるべきではない。さらに、腫脹や圧痛を起こしうる既知の最近の外傷を伴う関節も考慮されるべきではない。MRIUSのようなその他の画像所見による付加的な関節炎の所見は臨床所見の確認に用いてよい。
 
Definition of small joints.
小関節はMCPPIP、第2-5MTP、拇指のIP、手。変形性関節症でよく侵される第1CMC、第1MTPDIPは含まない。
 
Definition of large joints.
大関節という用語は肩、肘、股、膝、足関節。
 
Determination of the joint pattern category.
(関節のパターンの分類の決定)
患者は関節炎の数と部位に応じ、最もスコアが高くなるカテゴリーに当てはめることによって分類される。たとえば、二つの大関節と二つの小関節を有する患者は1-3ヶの小関節のカテゴリーに入れる。このカテゴリーが高いスコアであるためだ。患者は彼らの関節炎に応じスコアをつけられる。ただし、上述の全ての末梢関節が評価されていることが前提である。
10関節を超える関節炎(少なくとも一つの小関節を含む)を関節炎の最も高いカテゴリーのために、ここでカウントしてもよいと考えられる追加的な関節には顎関節、胸鎖関節、肩鎖関節が含められ、RAで侵されたと合理的に予測されるその他の関節も含められる。
 
 
Definition of the serologic categories.
ACPAIgM-RFの値は通常IUで報告される。個々の検査法の正常値の上限(ULN)に基づいて、以下の定義が作られる:
陰性=検査法のULNと同じか低い;低値=ULNよりも高いが3倍未満;高値=ULN3倍よりも高い値。RFの結果が陽性や陰性というように定性のみで得られる施設では陽性とはRFが“低値陽性”としてスコア化すべきである。血清学的検査ができない場合や報告された値に対する正常範囲が得られない場合、その検査の結果は“陰性/正常”と考えられるべきだ。少なくとも一つの血清学的検査が入手できる場合に限りスコアをつけるべきだ。
 
Definition of abnormal acute-phase response.
急性期反応物質CRPESRの測定はその施設の正常値に基づいて正常または異常とスコア化される。もしこれら二つの検査のうち少なくともひとつが異常であれば患者は異常な急性期反応を有するとしてスコア化すべきだ。
もし急性期反応物質が測定できない場合や報告された値に対する正常範囲の情報が得られない場合、その検査結果は“陰性/正常”と考えられるべきだ。ESRに関しては年齢と性を考慮した標準的なアプローチが貴重であろう。少なくとも一つの急性期反応検査が得られる場合に限りスコアをつけるべきだ。
 
Definition of duration of symptoms.
症状の期間の部位は患者の自己報告でよい。評価時(すなわち基準を適用する日)に臨床的に障害される任意の関節の滑膜炎の所見・症状(疼痛、腫脹、圧痛)の最大の期間のこと。したがって、以前に症状があったと言われるが評価時には障害されていない関節は症状の期間を評価するときに考慮されるべきではない。
 

<リウマトロジストのコメント>
日本では、抗CCP抗体をSRLの基準値で考えてみると、基準値<4.5とありますので、ULNは4.5より低い値となります。4.5*3=13.5はULN3倍より高い値になりますから、13.5は3ポイント数えてよいことと理解しています。いままでにぴったり13.5という経験はありませんが(笑)。

※AR2010の方は3 times the ULNと記載されていてわかりやすいのですが、ARDの方は three of less times the ULNとあり、おそらくthree of less times the ULNの誤記と思います。