リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

利き手側の関節が臨床的に侵されやすく、関節破壊も高度になる

こういう当たり前と思われるテーマでも、その根拠を求められると困りますよね。その答えにbestなエビデンスをご紹介します。

 

Relationship Between Handedness and Joint Involvement in Rheumatoid Arthritis

Yaku A, et al.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27976695/

 

 

Materials and Methods

利き手とRAの関節所見との関連に関する過去の研究を検索するため、2016.5/28にPubmedを用いて“handedness” and “rheumatoid arthritis”をkeywordsとして検索した。52件ヒットして、“handedness” or “dominant hand”をタイトルに含む6件を選んだ。その他の46件は利き手と症状orアウトカムとの関連を直接的に調査したものではなかったため除外した。これらの6研究の参考文献よりさらに3件の報告を追加した。

 

Table 1. Previous reports about laterality of joint involvement in patients with RA.

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Patients.

KURAMAコホートのRA患者334例を登録した。KURAMA cohortはRA患者のtight controlを目的として、患者の連続的な臨床・検査データを臨床研究に利用するために京都大学病院のリウマチセンターで2011年に作られた。診断は1987年のACR基準または2010年のACR/EULAR分類基準に基づいた。

 

Evaluations. 利き手は患者の質問票に基づいた。関節所見を評価するためにSJCとTJCを用い、X線変化と炎症の累積で関節破壊を評価した。リウマトロジストは患者の受診の度にDAS28を評価するためルーティンに28関節の主張と圧痛を評価した。各の患者の受診回数は異なっていたため、研究期間(April 2011 to March 2015)のSJCとTJCの平均値を採用した。手と足のX線は2012年にとられ、トレーニングを受けたリウマトロジストがmTSSを用いてX線を評価した(観察者内の同意0.93)。本研究のためmTSSの読者とTJCとSJCを調べるリウマトロジストは利き手を含む患者情報とともに盲検化された。

 

Statistical analyses

患者を右利きか左利きに合わせて2群に分けた。chi-square or Student T testを用いて右利きと左利きの間で臨床的特徴を調べた。関節病変のlateralityを調べるため右側と左側のスコアの差の平均値を計算し(右マイナス左)、Student T testによって陽性と陰性のスコアの差の絶対値がお互いと違うかを検証した。

私たちは臨床的関節所見(SJC+TJC)とX線所見(mTSS)のスコアの差を評価した。SJC, TJC, erosion, JSNは別々に解析した。さらにこれらのスコアを上肢と下肢に分けて評価した。右利きの患者と左利きの患者で関節所見のlateralityに大きな差があることを示すため、私たちはWilcoxon rank sum testを用いて右利きと左利きの間で、lateralityの最も強い変数である、上肢のmTSSのスコアの差も評価した。

(略)

p値<0.05はを有意とみなした。

 

Results

この研究には334例のRA患者が登録された。右利きが322 (96%)、左利きが12 (4%) (Table 2)。

 

Table 2. Baseline characteristics. 

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(*Student-t test)

 

私たちはDAS28を用いて利き手とそのコンポーネントであるSJCとTJCを調べた。右利きの患者における利き手側のSJC+TJCの合計スコアは反対側と比べて有意に高かった(p = 0.0013)。この傾向は左利きの患者でも有意差には至らなかったが観察された(Fig. 1a)。これらは全体として右側が障害されやすいということではなく、利き手側が障害されやすいということを示唆するものかもしれない。SJCとTJCを別々に評価した場合でも、右きっきの患者では右側が左側と比べSJC、TJCとも有意に高いスコアを示した(p = 0.017 and p = 0.0008, respectively, Fig. 1a)。この傾向はやはり左利きの患者でも見られた。

 

Figure 1. More clinical joint involvement on the dominant side in patients with RA

(a) Upper+Lower extremities

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(b) Upper extremities

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(c) Lower extremities

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RAでは毎日の疾患活動性の累積が関節破壊につながるため、利き手側でのより重症の関節障害が同じ側の関節破壊をより重症にするのであろう。ゆえに私たちはmTSSのlateralityを評価した。右利きの患者は利き手側の関節破壊がより高度であった(p = 0.0030, Fig. 2a)。mTSSを詳しく解析すると利き手側の関節破壊がより高度であるのは主にerosionでもたらされていることが分かった (p = 0.00060, Fig. 2a)。利き手側の関節破壊が高度であることは左利きの患者でも見られた (Fig. 2a)。上肢と下肢で別々にlateralityを解析すると、この差は上肢で明らかであった (mTSS and erosion, p = 0.00060 and 0.00030, respectively, for mTSS and erosion, Fig. 2b). これは左利きの患者でも言えた(Fig. 2b). 下肢のmTSSとerosionは明らかな左右差を示さず、とくに右利きの患者ではそうであった (p = 0.85 and 0.74, respectively, for mTSS and erosion, Fig. 2c).

 

Figure 2. More radiological joint involvement on the dominant side in patients with RA.

(a) Upper+Lower extremities

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(b) Upper extremities

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(c) Lower extremities

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この研究は左利きの患者の数に制限があり、左利きの患者を用いた解析では統計学的有意差を得るのに十分なパワーがなかった。利き手側でより重症の関節障害の傾向は見られたが。しかしmTSSのlateralityを主にもたらしていた上肢のmTSSでスコアの差を右利きの患者と左利きの患者との間で比較すると、有意差がみられ(p = 0.040)、右利きと左利きとの間で異なるlateralityがあることが示唆された。