<Clinical scenario>
あなたはリウマチ外来デビューしたての後期レジデント。
55歳男性のRA患者の診療を任された。
罹病期間は17ヶ月。皮疹のためMTXは6mgまでしか増量できないが、中等度の活動性が持続し(SDAI12)、就労に支障をきたしている。
自己注射を勧めたが、どうしても抵抗があると。
上級医に相談したところ、「MTX-IRの活動性RA患者にはやはりTNF阻害薬でしょう。シンポニーなら病院で打てるよ。」と勧められ、1本の論文を渡された。
Golimumab in combination with methotrexatein Japanese patients with active rheumatoid arthritis: results of the GO-FORTHstudy.
Ann Rheum Dis. 2012 Jun;71(6):817-24.
Tanaka Y
(架空の症例です)
<Clinical question>
比較的低用量のMTXにシンポニーを併用することの利益とリスクを検討してみましょう。
日本で承認されている投与量はMTX+GLM50mg/4wkで、効果不十分であれば100mgに増量するようです。MTX+GLM50mg/4wkで開始したときの効果と安全性は?
<Abstract>
ABSTRACT
Objective
Methods
MTX治療に抵抗性の活動性RA269例がplacebo + MTX (Group 1), GLM50 mg + MTX (Group 2), GLM 100 mg + MTX(Group 3)にランダム割り付けされた。GLMとプラセボは4週間毎に皮下注射された;経口MTX (6–8 mg/週)が継続された。患者は14週時のSJC/TJCをもとにearly escapeになることを許可された (Group 1ではGLM50 mgの追加, Group 2ではGLM100 mgへの増量, Group 3ではGLM100 mgの継続)。The primary study endpointは14週時のACR20。検査の多様性をコントロールするため、最初にGroup2+3 vs Group1との比較を行い、ついでGroup2 vsGroup1、Group3 vs Group1を比較した。
Results
ACR20@14wはGroup2+3 (73.4%, 127/173)においてGoupr 1よりも高く、Group 2 (72.1%, 62/86)、Group 3 (74.7%,65/87)各々もGroup 1(27.3%, 24/88; p<0.0001 for all comparisons)よりも高かった。GLM+ MTXはDAS28 response/remission、X線評価を含むその他の有効性のパラメーターにおいてもplacebo+MTXよりも有意に高い改善率を導いた。16週間の固定治療の間、Groups 1, 2 and 3は72.7%, 75.6%, 78.2%がAEsを有し、1.1%, 1.2%, 2.3%が重症のAEsを有した。
Conclusion
MTXに抵抗性の活動性を有する日本人RA患者においてGLM+MTXはMTX単独よりもRAの所見・症状の改善、X線上の進行抑制において有意に優れていた。副作用について予期せぬ問題は起きなかった。
<批判的吟味>
SPELLのホームページの「はじめてトライアルシート」に従って、行います。
P; 1987改訂ACR基準によって診断された20–75歳のRA患者で、3ヶ月以上の罹病期間を有し、MTX≥6mg/週を≥3ヶ月投与中の患者。4週間以上前よりMTX投与量を固定 (6–8 mg/週)しなければならないこととした。スクリーニング・ベースラインの時点で活動性のRA(腫脹関節≥4/66、圧痛関節≥4/68)を有し、スクリーニング・ベースラインの時点で以下の2つ以上を満たさなければならない: (1) CRP >1.5 mg/dl or ESR>28 mm/h, (2) MS≥30分, (3) X線上の骨びらんの証拠、あるいは(4)抗CCP抗体かRF。
I; GLM50 mg + MTX (Group 2), GLM 100 mg + MTX (Group 3)
C; placebo + MTX (Group 1)
O; (primary) ACR20@14wk, (additional) ACR50@14wk, ACR70@14wkなど。Safetyの評価。
・ランダム割り付けの試験ですが、その方法は不明です。
・ベースラインデータはおおむね同等。ただし、Group3では罹病期間(8.1年)が短くCRP(1.5 mg/dl)が低かった; Group 1 (8.7年、2.2 mg/dl)、Group 2 (8.8年、1.9 mg/dl)
・ITT解析で、患者と介入実施者の二重盲検。(X線評価者もblind)
・脱落率はランダム化された人数→実際の治療人数→16週を完了の順に、Group1; 90→88→84、Group2; 89→86→81、Group3; 90→87→82;totalではランダム化された269例のうち267例(99%)が治療され、16週を完了したのは247/269(92%)>80%。
・後述するように、結果に有意差はあります。症例数は計算されていて、255例で>90%のパワーをもって、Group2+3 vs Group1のACR20@14wを検出するということです。
・追跡期間はこの度はPrimary outcomeの14週で見ます。ACR20の発生率はGLM50mg+MTX群72.1% vs Placebo+MTX群27.3%。RR=2.64倍、NNT=2.2→3人。(GLM100mg+MTX群は日本ではじめから承認されていない投与量なので割愛します)
・ついでにACR50、ACR70も計算してみます。ACR50@14wは43% vs 9.1%で、RR 4.7、NNT 2.95(→3人)。ACR70@14wは22.1% vs 2.3%で、RR9.6、NNT 5.05(→6人)。
以上より、GLM+MTX50mgの効果については、ACR20でRR2.6倍、ACR50で4.7倍、ACR70でRR 9.6と素晴らしい結果です。
安全性についても見てみます。Table 3において重症感染症の頻度をチェックします。14w, 24wともplacebo+MTX (n=88), GLM50mg+MTX (n=86), GLM100mg+MTX (n=87)において各0, 0, 1の発生率でした。