リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ウパダシチニブはbDMARDs-failureのRA患者でアバタセプトよりも有効!?

SELECT-CHOICEはほぼJAK-1阻害薬のウパダシチニブ(Upadacitinib)をbDMARDs failureのRA患者、すなわちEULAR recommendationのPhase 3に相当する状況で、アバタセプト(ABT)と比較したHead-to-head RCTです。

 

これまでMTX-IR(phase2)に対するABTのHead-to-head trialは多くありましたが(ATTEST, AMPLE※)、phase 3で標準療法となることを狙った画期的なRCTと思います。

 

 (ABTがphase2に来ない事が前提となってるwww)

 

※AMPLE

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/14301810

 

では読んでいきましょう。

 

Trial of Upadacitinib or Abatacept in Rheumatoid Arthritis.

Rubbert-Roth A, et al. N Engl J Med. 2020 Oct 15;383(16):1511-1521.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33053283/

 

Patients

少なくとも3ヶ月、2010ACR/EULAR基準に基づく18歳以上のRA患者を登録した。患者は中等度から重症の活動性疾患(SJC≧6、TJC≧6、CRP≧0.3)で、少なくとも一つの生物学的製剤≧3ヶ月に抵抗性、あるいは少なくとも一つの生物製剤に耐用できない者とした。JAK阻害薬or ABTの投与歴があったり、RA以外の炎症性関節炎の病歴がある患者は除外。詳細はappendix↓

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa2008250/suppl_file/nejmoa2008250_appendix.pdf

 

Trial Design

20ヶ国の120ヶ所で二重盲検PhaseIII、active-comparater controlled trialを行った。患者は相互反応テクニックシステムを元にUpa 15mg/day or iv ABTに1:1で無作為に割り付けられた。Upa群はプラセボのiv点滴を受け、ABT群は経口のプラセボを内服した。全てのbiologicはプロトコールで定められたwashout periodで中止されなければならなかった。生物製剤はtrial中禁止とされた。患者はプロトコールで定められたcsDMARDs、NSAIDs、アセタミノフェン、経口or吸入ステロイドの変化のない量を内服しなければならなかった。 12w以降、2回の受診でTJCとSJCの両方で20%以上の改善を示さない者は治療を調整or追加されることになった。24wを完了した全ての患者がopen-labelでUpa15mgを内服するという、長期の5年までのtrialの資格があることとした。randomizationは過去のbDMARDsの数と地域に応じて層別化された。

最初のプロトコールに従って、私たちは30㎎のUpaを評価するプランを立てていたが、RA患者のPhase 3 trialにおいて30mg群で15mgに比べ付加的な利益がわずかであることが示唆されたため、2017/10/12に15mgのUpaを評価するように改訂した。44例の患者が30㎎に割り付けられていたが、これらの「うち24wまで完了していたものはopen-labelのlong-term extension trialに30mgのまま残った。これらの患者の効果と安全性はここには含まれていない。Table S6, S7に示されている

 

Trial Oversight

Abbvieが試験をデザインし、データの収集と解釈に参加し、プロのwriting assistanceに支払いをした。Abbvieが統計解析を行った。著者とAbbvieとの間で秘密保持契約が結ばれた。ABTはBristolで作成され、Abbvieによって商品として購入された。データは調査者と彼らのチーム、およびAbbvieによって収集された。全ての著者がprofesssinalのmedical writerの援助のもと論文作成に参加した;データの解釈、ドラフトのレビュー、最終ドラフトの承認において。著者らは正確性と完璧性、AE報告について、またプロトコールに対するtrialの忠実性について投票した。

 

End Points

primary end pointはDAS28からの変化率@12wk。ABTに対する非劣性を検証した。DAS28-CRPは連続するがnonlinearなcomposite measureで、0-9.4の値をとる。高いほど活動性が高い。TJC28, SJC28, PtGA(VAS0-100に基づく)、hsCRPから計算される。

 

DAS28-CRP = 0.56 × √(TJC28) + 0.28 × √(SJC28) + 0.36 × ln(hs-CRP + 1) + 0.014 × PtGA + 0.96

 

√は平方根で、lnは自然対数で計算される。DAS28-CRP <2.6、LDA 3.2-5.1, MDA>5.1, HDA>17.

 

Key secondary endpointsは12wk時のUpaのABTに対するDAS28-CRP からの変化量に基づく優越性。およびDAS28-CRP 寛解の割合における優越性。14のあらかじめ設定された探究的なendpointがTable S1にリストされ、定義されている。

 

Safety

有害事象AE、診察所見、バイタル測定、心電図、臨床ラボ結果(CBC、生化学、尿)は研究を通してモニターされた。AEはMDA activities, ver 22.0に基づいてコードされた。The Rheumatology Common Toxicity Criteria, version 2.0がAE、ラボ変化のgradeを決めるのに用いられた;CKとcreatininについてはthe Common Toxicity Criteria of the National Cancer Instituteに基づいた。外部のデータ管理委員会が安全性データをレビューした。割り付けをしらない独立したexternal cardiovascular adjudication committeeが報告された心血管系イベント、全ての死亡を評価した(MACE、VTEをふくみ)

 

Statistical Analysis

550例あれば90%のpowerでUpaのABTに対する非劣性を検証することができると計算された。DAS28-CRP @12wkの両群の差が0.6をマージンとして。DAS28-CRP 0.5であれば想定されるSDを2.0として(at a two sided 0.05 level accounting for withdrawal of 10% of the patients)。0.6のマージンはbio-IRの患者におけるDAS28に基づくbioの効果のメタ解析に基づく[20,21]。

Primary and ranked key secondary end pointsの全体的なtype I errorはstep-downアプローチを用いることでコントロールされた;有意差があるということはひとつ前のendpointが群間差を示した場合のみ下位にランクされたendpointが宣言されるという具合に。post hoc解析でDAS28-CRP を構成するTJCとSJCのベースラインからの変化の解析が行われた。解析しすぎを避けるためあらかじめ決められたexplaratory endpoints とposthoc解析は調整されなかった;調整されていないCIのみ提示した;臨床的な干渉はdrawnされうる? 効果と安全性の解析はmITT人口で行われ、少なくともUpa15mgを1回、ABT1回投与された患者を含んだ。二値変数のため治療はCochran–Mantel–Haenszel テストを用いて比較した;過去の失敗されたbioの要素による層別化で補正されて。missing dataを補正するためにNRIを用いた。連続変数はANOVAを用いて行った;治療群をfixed factorとして、ベースラインの値とともに、主要な層別化因子をcovariateととして。missing dataのためにMultiple imputation with the fully conditional specification methodを用いた。詳細はSection S3

 

Results

Patients

2017-2019の間、613例がrandomizationを受け、612例が少なくとも1回の治験薬を投与された(Upa303例, ABT309例)Fig. 1。約90%が24wkを完了した。治療を中止した患者の割合は両群で差なし。baselineの患者背景、疾患の特徴、重症度はmITT人口で両群間の差はなかった(Table 1)

 

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Efficacy

ベースラインのPrimary and key secondary end pointsである、DAS28-CRP の平均はUpa 5.70, vs ABT5.88であった。wk12で平均変化量は−2.52 and −2.00(差は−0.52; 95%CI, −0.69 to −0.35; P<0.001 for noninferiority; P<0.001 for superiority) (Table 2 and Fig. S2)。

 

Figure S2. Non-inferiority/Superiority of Upadacitinib Versus Abatacept in Change from Baseline in DAS28(CRP) at Week 12

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疾患のベースラインの特徴に基づくprimaryのサブ解析はFigure S3

 

Figure S3. Forest Plot of Change from Baseline in DAS28(CRP) at Week 12 by (A) Demographic Subgroups; (B) Baseline Disease Characteristic Subgroups

 

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DAS28-CRP <2.6に基づくremissionの割合はUpa30% vs ABT13.3% (difference, 16.8 %; 95% CI, 10.4 to 23.2; P<0.001) (Table 2)。同様の結果はposthoc解析でもえられた;multiple imputation for missing data を用いて(Table S2)。

 

DAS28-CRP のcore componentの24wkの変化はfigure 2に示すとおり。12w時に平均変化はprimary end pointのcomponentための変化は以下の通り;TJC28, −10.49 vs −9.32; SJC, −7.73 vs −7.31; PtGA, −33.85 vs −28.35; CRP, −1.234 mg/dL and −0.713 mg/dL; 95%CIは Table 2.

 

Table 2. Primary and Key Ranked Secondary End points and Changes from Baseline in DAS28-CRP Components at Week 12. 

 

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Figure 2. Mean Change from Baseline over a Period of 24 Weeks in the Core Components of the DAS28-CRP

 

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Exploratory End Points

hsCRPを含まないexploratory endpointsは通常primary endpointと同様の方向を示した。DAS28-ESRに基づくremissionはfigure S6。CDAI remission@12wkはfigure S7。

 

Figure S7. Low Disease Activity and Remission According to CDAI, SDAI, and the Boolean Remission Over 24 Weeks (NRI)

 

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Safety

24wkの期間を通してsAEの発生率、治療薬中止に至ったAE、sAEの数はUpaでABTよりも多かった(Table 3)。sAEはUpaで10件3.3%、ABTで5件1.6%。

 

Table 3. Adverse Events through Week 24.

 

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MACE(nonfatal stroke)が1例Upa群で起きた(Section S4);過去に脳血管のアクシデントがあった人。VTEがUpaで2例;1例は高血圧とobesityがあり、過去に肺塞栓の既往があった人の肺塞栓(Section S5)。治療によらない急性死亡はABTでは最終投与から>70日、Upaでは最終投与から>30日と定義された。3例が死亡し、1例のtreatment emergent deathはUpaで、肺炎で入院した最初の入院で心停止、1例のnon-treatment emergent deathが各1例ずつ。これらの死亡はSection S6。

 

血液検査の平均はbaseline、全ての受診時において両群とも正常範囲内。より多くのGrade 3 or 4のHb↓、Ly↓がUpaでみられた。Grade 3の好中球減少は両群で同等の%。

Grade3のCK上昇、grade4のCK上昇がUpaでみられ、3例とも無症状。横紋筋融解症はなく、そのためにUpaを中止した者はいなかった。Grade3のALT上昇がUpaの2.6%、ABTの0例でみられた。Grade3のAST上昇がUpaで2.6%、grade4で0.3%。ABTではASTでgrade3が0.3%だった。Hy’s law criteria(薬剤性肝障害を疑う)を満たした患者はいなかった。
baselineからのラボの変化をTable 4に示す。24wkを通してLDL、HDLの平均変化はUpaでABTよりも多かった(s13)。LDL/HDL、TCH/HDLの変化において、24wを通して意味のある変化はなかった

 

 

<リウマトロジストのコメント>

ほぼJAK-1阻害薬のUpaはJAK1,2でシグナル伝達されるIL-6を強力に抑えることが想定されているにもかかわらず、CRPに基づいたDAS28-CRPをPrimary end pointとしていることが残念でした。しかも早さが苦手なABTとの比較で12wkで評価をしていることはsponsor、なかなか計算ぶかい。やはりJAK1/2阻害薬と抗IL-6阻害薬の評価はCDAIに基づいて行うべきではないでしょうか。

Figure 2でTJC、SJC、gVASでは差が見られませんね。CDAI寛解、CDAI-LDA、Boolean寛解、HAQ-DI寛解の割合でも24wkでは差がなかったようです。CRPだけは有意差がありますが。

より臨床的に重要な指標である関節所見やPatient reported outcomeでの優越性がないかぎり、安全性↓の懸念はovercomeできないように思いました。

sAEは10例 (3.3%) vs 5例 (1.6%)

重症感染症は3例 (1.0%) vs 1例 (0.3%)

日和見感染 4例 (1.3%) vs 1例 (0.3%)

DVTは2例 (0.7%) vs 0例 (0%)