リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Window of opportunity by Nagy, 2015 ②

Window of opportunityのレビューを読んでいます。

The Infliximab as Induction therapy inEarly Rheumatoid Arthritis (IDEA) study (78 wkDBRCT)ではT2TアプローチのもとMTX+IFXによる寛解導入とMTX+high-dose ivステロイドを比較した [21]。この研究はDMARD-naïveearly RA患者112 (症状の期間が3-12ヶ月)を含んだ。全ての患者は少なくとも 10 mg/wkMTXを内服し、20mg/wkまで、あるいは耐用できる最大の量まで増量された。患者はランダムに標準的プロトコールにそったIFX 3 mg/kg、またはIVmPSL 250 mg at week 0 (+PBO at wk 2,6, 14 and 22)に割り付けられた。wk26よりunblinded open labelphaseとして、IFX群の効果不十分(DAS44 > 2.4)の患者はIFX10mg/kgまで増量して治療された。あるいは生物学的製剤は中止され、MTXはその他のsDMARDsに変更された。高用量ステロイド群ではDAS44 >2.4なら以下の治療が適用された:MTX+SSA+HCQ;then MTX+LEF;経口MTXの皮下注射への変更; CSA+皮下注MTX; CSA+皮下注MTX+経口PSN6ヶ月間DAS44<1.6ならIFXは中止された。全体として二つの治療戦略に有意差はなかった; 24.5 %(14/55)は持続寛解のためIFXを中止でき、中止した者のうち76 % (11/14)は研究終了時も寛解を維持していた。
 
日本のRemission Induction by Remicade in RA(RRR) studyIFX(3 mg/kg)+MTXが持続的なLDAを有する患者において中止できるかもしれないことを調査するためにデザインされた(DAS28 < 3.2 for >24 wks)。平均の期間は5.9年でベースラインの平均DAS285.5Primary endpoints1, IFX中止後1年、2年後のLDA; 2, 1年後のmTSS進行 <0.51年後に評価された102例のうち55 % (56)IFXを中止できた(RRR達成)44 (43 %)寛解 (DAS28 < 2.6) を達成した。IFX中止後1年以内に29例が再燃した。mTSSRRR達成群とRRR非達成群で同等であった。IFXを中止できた患者は若く、低いmTSS、短い病歴を有し、この研究もWindow of opportunityの仮説を支持した。
 
最近出版されたEarlyRAに対する78wkの二重盲検のMTX+ADA療法の最適なプロトコールを調べるための試験(OPTIMA)MTX naïveの早期RA (disease duration <1 year) ADA (40 mg biwkly)+MTXまたはPBO+MTX26 週間、割り付けた (period 1)  [23] 26 wks後、安定したLDA(DAS28 < 3.2)に到達した患者をADA継続か中止かにランダムに割り付け、さらに52 wksフォローした(period 2)。導入療法としてADA+MTXで治療した44%の患者はLDAに到達した。重要なことはADA中止後も改善がしばしば維持されていたことである: 101人中82人がwk78時にDAS28 < 3.2を有した。これはMTX維持療法は導入療法が成功した後ほとんどの患者で有効であることを示唆する。
 
The High Induction Therapy withAnti-Rheumatic Drugs (HIT HARD) studMTXADAの効果を調査した[24].この48wksの試験においてEarly RA (病歴の平均<1)の患者をMTX+PBOMTX+ADA1:1に割り付けた。24wks後、全ての患者はMTX単独療法を継続した。Primary outcomewk48時のDAS2824wkの時に寛解率はADA+MTX療法で有意に高かった (P = 0.009)MTX+ADA群において患者の45%24wk時に寛解にあった (DAS28 <2.6)。そのうち約90%wk48時においても寛解にあった。これもMTX維持療法がBiologicalを中止後の寛解維持に有効であることを支持する。しかし、48wkの臨床効果において二つのアームの間で統計学的な差はなかった。
 
早期RA (最大の罹患期間6 mos)において最初のMTX単独療法 (group 1)MTX+ADAの併用療法(group 2)1年間の前向き非盲検・無作為化試験GUEPARDtrialで比較した[25]Group 1において12wkで効果不十分なケースではMTX+ADAMTX+ETNまたはMTX+LEFで治療された。Group 2ではDAS28<3.2であればADAは中止された;Group239%12wkから研究の終わりまでMTX単独でLDAを維持できた。二群間で臨床的、X線的なアウトカムに有意差はなかった。HIT HARDGUEPARDとも早期の抗TNF阻害薬の真の長期的な効果を検出するためにはパワー不足であったことは重要なポイントである。
 
Drug-free remission
   RAの所見・症状を減らすことに加えて、早期に積極的に治療を行うことは根底にある免疫異常をも改善しえ、少数の患者ではDFRを実現するかもしれない。DFRはいくつかの患者集団で評価されている。
the BeSt studyでは2年目以降、もしDAS44が半年以上<1.6であればDMARDは減量し中止された。4年後13%の患者がDrug-freeremissionを達成した。男性、ACPA陰性、短期の症状がDFRに関連した。さらに5年後には48%寛解し、14%DFRであった;各グループではGroup1 – 4の順に4 %, 16 %, 10 %, and 19 %
 
薬剤の減量の成功により影響を与えているのはT2Tストラテジーなのか、それとも疾患の自然歴(どの薬剤を用いるかにかかわらず)かは分かっていない。MTXIFXを用いた最初のcombination療法(19%)Drug-free remissionを達成する点において数字的には最も良い結果であた。この目的を達成するための治療方法の間に有意な差があるのかについてさらなる研究が必要である。

治療無し寛解の頻度と予測因子がthe British EarlyRheumatoid Arthritis Study (ERAS) cohortthe Leiden EarlyArthritis Clinic (EAC) cohort (prospective inception cohorts)で研究された。全ての患者がsDMARDsで治療された。DMARD療法を終了後に滑膜炎がないことで定義されるMedication-free remissionの持続はEAC15%ERAS9.4%でみられた。両群とも短期間の症状、SE陰性、RF陰性、急性発症、非喫煙者、最小限のX線変化がDFRに関連した。
 
DASに基づく治療とDASによらない治療を受けた患者で持続するDFRの頻度が比較された[29]BeSt study (a randomized treatment cohort)に登録された患者はDAS由来の治療を受けたが、EACコホートDASに基づかず治療された。medication-free remissionDASに基づく管理で9.8%DASによらない管理で10.6%と同等であった。ACPA陽性は悪い予後に関連したが、陽性患者はDASに基づく管理を行った場合、DFRの機会が高かった。RF陰性、ACPA陰性、SE陰性、男性、HAQ低値、ベースラインのDASDASに基づくコホートにおいて持続するDFRに関連した。両コホートとも短期間の症状、ACPA陰性がDFRの独立した予測因子であった。
 
The Etanercept and Methotrexate in Patientsto Induce Remission in early Arthritis (EMPIRE) trial寛解導入のためのETN+MTXの効果をMTX単独と比較した[30]RFACPASEのいずれかが陽性のDMARD-naïveの早期炎症性関節炎 (less than 3 months disease duration)がこの78-wk randomized superiority trialに登録された。primary endpoint52wk時の圧痛関節、腫脹関節であった。患者はPBOまたはETNTJC, SJC0の状態が26wk持続するまで投与され、52wk時に全ての患者が注射を中止した。ETN or PBOを中止後、もし患者が寛解を少なくとも12wks維持していればMTXを中止した。Primary endpointを達成する上で患者群の間に差は無かった。両群とも3.6%78wksDFRを達成した。すなわち早期のETNDFRの頻度を上げないことを示唆した。
 
PRIZE試験ではETN50mg+MTX52wks投与後に寛解(DAS28<2.6)を達成した早期RA患者をETN25mg+MTXMTX単独またはPBO39wks間割り付けた[31]。その後全ての治療を中止し、26wksモニターした。治療中止後117wkの時点でETN+MTX42%MTX単独群30%PBO22%寛解を維持した。このことはETN50mg+MTX寛解導入された患者の22%の患者は両方の治療をやめても1年より長く寛解を維持できるということだ。[31]
 
the Assessing Very Early Rheumatoidarthritis Treatment (AVERT) trialではABTの効果と安全性がACPA陽性の早期RA(活動性滑膜炎8wks以上)の患者で研究された。患者は12mosABT+MTX or ABT単独or MTX単独に割り付けられた。12ヶ月後にDAS28<3.2であればさらなる12mosの無治療の期間に入った:ABT+MTX14.8%ABT単独で12.4%MTX単独で7.8%12ヶ月後、18ヶ月後とも寛解(DAS28<2.6)にあった。ABT+MTX群でMTX群と比べて有意に高い%の患者が1218ヶ月後とも寛解状態にあった(P =0.01 and P = 0.045, respectively)。しかしABT単独とMTX単独ではいずれのタイミングでも意味のある違いはなかった。DFRはベースラインの症状の短いこと、最初の低いDAS28、低いHAQスコアに関連した。32 http://ard.bmj.com/content/74/1/19


3年間のDBRCTACT-RAYT2Tに基づいてMTX+TCZの効果を調べられるようデザインされた[33]。持続寛解の患者はTCZを中止し、もし寛解が維持されていればsDMARDsも中止された:50.4 %の患者がTCZを中止でき、最終的に5.9 %DFRを達成した。bDMARDを中止した患者のほとんどが再燃したが、TCZの再開はほとんどのケースで臨床的改善をもたらした。
 
TCZ単独で治療された患者におけるDFRの頻度も最近評価された。10%の患者が治療を中止することができた。MMP 3低値、血清IL-6低値がLDAの予測因子であった[34]
 
ここで述べた研究のlimitationsについて認知されるべきである。完全な分子的寛解は臨床的寛解を満たした全ての患者で起きるわけではないかもしれない。そのためいくらかのX線上の進行は臨床的寛解になっても起きるかもしれない。全ての薬剤を完全に中止出来る一部の患者はRAではなかったというのはあり得る話だ。1987年の分類基準はこれらの試験のほとんどで用いられているが(EMPIREAVERTを除く;EMPIREは全ての患者が早期関節炎を有したが、全例が1987年の基準を満たさなかった[30]AVERT試験ではEarly RAと既述された)、分類ミスが起きうるかもしれな。しかし、異なる患者集団においてmedication-freeremissionの割合が同様であったこと、ほとんどの患者で慢性関節炎、構造的破壊が既述されたことはこれらの研究の分類ミスに反論する内容である。


 
Translating pathogenesis into clinicalphases, a hypothetical model病因を臨床phaseに変換する、仮説的モデル


私たちの仮説はWindow of opportunityに一致して可能性のある自己免疫異常の是正の可能性はRAにおいて時間と共に減少し、治療効果の可能性が変わってくるというものだ。この仮説とRAの異なるphaseの特徴に基づき、ACPA/RF/SE陽性の発病する前の個々は関節痛があればRAのリスクが有意に高い(Fig. 1)。喫煙者はさらに高くなる。自己免疫がすでに存在するこの時期は確定的なRAに変換されるかもしれない。自己免疫異常が加速され、分子レベルで耐用できなくなり明らかな症状が出現するwindow of opportunity phaseである。この時期はproinflammatorycytokinesとその結果として生じる滑膜炎、破骨細胞の活性化と骨びらんの出現である。疾患の早期において積極的な治療は不釣り合いな利益をもたらし、患者は寛解のチャンスを得る。drug-free remissionですら実現可能になるかもしれない。重要なことは自己免疫はこの時期自己免疫異常はreversibleである患者もいるということだ。自己免疫異常は自己の構造に対する寛容の喪失によって特徴付けられるため、分子レベルでのDFRは恐らく疾患活動性の完全な抑制のみならず、寛容の確立をも意味する。regulatoryT helper celsの機能の回復が正常な免疫寛容の回復には必要である。後に疾患の進行期では自己免疫はもはや不可逆的であり、慢性の滑膜炎と持続するサイトカインの不均衡がさらなる構造的ダメージをもたらす。この遅い時期では十分な治療が中等度の利益をもたらし、患者は寛解のチャンスは低くなり、DFRの可能性はなくなる。
全ての確率において、サイトカイン・カスケードに対する直接的な作用を有する異なる治療戦略がmedication-free remissionのチャンスを特定する。このモデルはその他の既知あるいは未知の要素の中で疾患の期間こそが一般に不可逆性の自己免疫に特徴付けられる進行性のRAに対する重大な危険因子であることを意味する。


Conclusions
入手できる臨床試験の結果はRAで適切な治療をwindow of opportunityの間に行うことができれば急速で持続する寛解をもたらすことができることを示す。このことでしばしばBiologicalの治療を中止することが可能となり、いくつかのケースでは全ての治療を中止できるかもしれない。DFRを調査する目的で行われた研究はわずかであるが、Biologicalsがその可能性を増やすエビデンスはある;この点において治療間で差があるかもしれない。治療無しの寛解の頻度は現在のところ3.6-22%のあたりである。最も好ましい治療方法を決定するにはさらなる研究が必要である。疾患の期間、環境因子、遺伝的要因の役割の可能性についても調査されるべきである。治療を減らすチャンスが現実的にある患者を特定することは重大である;信頼できるバイオマーカーがこの目的を達成するために必要である。寛解の間に免疫寛容の再構築をもたらす状況を理解することが極めて大切である。DFRのメカニズムを分子レベルで理解することはひょっとするとRAを治癒させる治療法を開発するための重大な情報を提供するかもしれない。