リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

高用量MTXに併用するときのGLMの臨床効果(GO-FORWARD)

Clinical scenario
あなたはリウマチ外来デビューしたての後期レジデント。
 
66歳女性のRA患者の診療を任された。
 
罹病期間は10ヶ月。MTX16mgに耐用できているが、SDAI17(中等度活動性)。
 
自己注射を勧めたが、どうしても抵抗があると。
 
指導医に相談したところ、「MTX-IRの活動性RA患者にはやはりTNF阻害薬でしょう。シンポニーなら病院で打てるよ。」と勧められ、2本の論文を渡された。
 
Golimumab, a human antibody to tumour necrosisfactor {alpha} given by monthly subcutaneous injections, in active rheumatoidarthritis despite methotrexate therapy: the GO-FORWARD Study.
Ann Rheum Dis. 2009 Jun;68(6):789-96.
Keystone EC, et al
 
Golimumab in patients with activerheumatoid arthritis despite treatment with methotrexate: a randomized,double-blind, placebo-controlled, dose-ranging study.
Arthritis Rheum. 2008 Apr;58(4):964-75.doi: 10.1002/art.23383.
Kay J, et al
 
 
Clinical question
高用量のMTXにシンポニーを併用したときの効果と安全性について勉強しよう。
 
(以下二つの論文をAbstractの訳、批判的吟味の順で記載します)
 

<GO-FORWARD by Keystoneトロント大学
Abstract
OBJECTIVE:
III GO-FORWARD試験においてMTXに耐性の活動性RA患者におけるGLMの効果と安全性w調査した。
METHODS:
患者はランダムに3 : 3 : 2 : 2placebo+MTX (group 1, n = 133), GLM 100 mg+placebo (group 2, n =133), GLM 50 mg+MTX (group 3, n = 89), or GLM 100 mg+MTX (group 4, n = 89)に割り付けられた。4週間毎に注射を行った。二つのprimary endpointsACR2014w、ΔHAQ-DI24w
RESULTS:
W14時にACR20を達成したのはpl+MTX 33.1%, GLM100mg+pl 44.4% (p = 0.059), GLM50mg+MTX 55.1% (p =0.001), GLM100mg+MTX 56.2% (p<0.001)
W24時にHAQ-DIスコアのベースラインからの改善の中央値は各0.13, 0.13 (p = 0.240), 0.38 (p<0.001) and 0.50 (p<0.001)
W16までのプラセボコントロールの間、重症のAE2.3%, 3.8%, 5.6%, 9.0%、重症感染症0.8%, 0.8%,2.2% and 5.6%に起きた。
CONCLUSION:
MTX耐性の活動性RA患者にGLMを追加することはRAのサインと症状を有意に減らし、身体機能を改善した。
 
批判的吟味
SPELLのホームページの「はじめてトライアルシート」に従って、行います。

P:3ヶ月より前に1987RA基準を満たしたRAMTX15mgに耐用するが、SJC4TJC4 and 2 of [CRP2,ESR28, MS30, erosion, and seropositive]
IGLM50mg/4wk or100mg/4wk(ただし16wkでレスキューが入る)   
CGLM wo MTX
O14wkACR2024wkHAQ-DI
 
・ランダム割り付けは、「電話の音声自動応答システムを使った」とされているので、「中央割り付け」でしょう。各施設で層別化されたとある。
Table 1に記載されたベースラインのデータをGroup1(MTX+Placebo)Group3 (MTX+GLM50mg)で比較します。罹患期間6.5 vs 4.5年、TJC21 vs 26、患者の全般VAS 5.3 vs 6.0DAS28-CRP 4.8 vs 5.1と少しの差があるようです;有意差検定は行われていません。
ITTの記載はないですが、Table 2 Efficacyresults at weeks 14 and 24において、ACR20を達成した人数に対する分母は割り付け時のものと同じであり、脱落はないとしてよいでしょう。
・二重盲検。
・結果に有意差がありました。サンプル数は計算されており、90%以上のパワーで差を検出できるための人数(Group1120人、Group3,480人)より多い症例が登録されていました。
ACR20@14wkMTX+placebo33.1% vs MTX+GLM50mg55.1%RR1.66NNT=100/(55.1-33.1)=4.55
ACR50@14wkは同様に9.8% vs 34.8%RR3.55NNT=100/(34.8-9.8)=4
ACR70@14wkは同様に3.8% vs 10.3%RR3.55NNT=100/(13.5-3.8)=10.3
MTX+GLM100mgMTX+GLM50mgとそれほど差がないのが印象的でした(ACR20/50/7056.2%/29.2%/9.0%)。
・重症感染症MTX+placeboMTX+GLM50mgMTX+GLM100mgの順に1/133 (0.8%), 2/89 (2.2%), 5/89 (5.6%)と漸増する傾向がありました。ここは有意差検定をされていないのですが、100mg使うことは50mgと比べ、リスクが上がるようです。
MTX+GLM50mg群の重症感染症24wk212例中2例であり、内訳は蜂窩織炎1例、皮下膿瘍1例でした。こういう情報があるとは、いい論文ですね。
 
 
KayMGHの論文>
Abstract
OBJECTIVE:
MTX耐性の活動性RAの患者においてGLM皮下注射の効果、安全性、薬理学を評価する。
METHODS:
患者は二重盲検でMTX+placebo、、MTX+GLM 50mg or 100mg/2 or 4wks48wkまで受けるよう割り付けられた。最初に2週間毎に注射されることになった患者は20wk時に間隔を4wkに伸ばされた。primary endpointACR20W16。研究の規模を設定する上でGLM+MTXを合計した群と少なくとも一つの個々の群がプラセボと比較して違いを検出できるように設定された。
RESULTS:
primary endpointは達成された。GLM+MTXを合計した群では61%W16ACR20を達成したが、pl+MTXgんでは37%だった (P=0.010)GM100mg/2wkの群は79%ACR20を達成した (P<0.001 versus placebo)。(プラセボを投与された患者がIFXにスイッチされた)W20までの間、重症AEGLM併用群の9%プラセボ6%
CONCLUSION:
GLM+MTXRAのサインと症状を有効に減らし、MTX-IRの患者によく耐用された。
TRIAL REGISTRATION:
ClinicalTrials.gov NCT00207714.
 
批判的吟味

Pthe 1987 revisedcriteriaを満たすRA患者で3ヶ月activeactiveとはMTX10mgに耐性。6SJC+6TJC+2 of 3;CRP≥1.5 mg/dl, ESR≥28, ≥30分。NSAIDs,PSL10mgまでは良いが試験期間中は同じ量。             
I14wkまでは GLM50mg/4wk, 50mg/2wk, 100mg/4wk, 50mg/2wk
CCombi vs placebo,GLM50mg/4wk vs placebo     
O16wks時のACR20    
 
・ランダムは各施設でなされ、隠蔽化された(4wkの人もplaceboGLM2wkおきに交互に投与された)。
・ベースラインに差は有意な差はなかった(ただし、CLM全体 vs placeboにおいて)
ITTに関する記載はないが、プロトコール違反、効果不足で脱落した者はPrimary outcomeを達成しなかったものと考えられたとの記載があり、ITT解析としてよさそうであった。
・脱落について;追跡率は14wkで全体で149/172=86.6%プラセホ82.8%GLM/4wk88.5%)。Primary outcome16wkACR20なので、十分。さらに脱落はNon-responderとして扱われるとStatistical analysisに記載があったので、Outcomeを評価する上で問題にならない。52wkでは129/172=75%プラセボ21/35=60%GLM/4wk=83%)とさすがに落ちますが。
・二重盲検
・サンプルサイズはGLM全体vs placeboの差が出るように計算されており、4つの各群が35例ずつあれば>90%のパワーをもって違いを検出できることになっていたが、実際に登録されたのは50mg/4wk(35)50mg/2wk(34)100mg/4wk(34)10mg/2wk(34);結果的には差が出ました。
Primary outcomeであるACR20@16wkMTX+placebo37.1% vs MTX+GLM50mg60.0%RR1.62NNT=100/(60.0-37.1)=4.35人。
ACR50@16wkは同様に5.7% vs 37.1%RR3.18NNT=100/(37.1-5.7)=3.184
ACR70@16wkは有意差がなかったので計算は控えておきましょう。
・安全性についてはMethodに記載がなかったのですが、結果だけTable 3に記載されています。14週時のplacebo vs GLM全体では重症感染症4群とも1例か0例でした。placebo2.9% vs 2.2%52wk時のplaceboからIFX群、GLM群で4% vs 2.2%。長期の安全性はIFXとの比較なので、なんとも言えません。またnが少なくて安全性を評価するのには適した集団とは言えないでしょう。
 
 
Scenario caseの経過>
 
勉強した内容をふまえ、患者に説明をした。
 
・海外の試験の結果ですが、いくらかの効果(おおむね2割以上の改善)は4ヶ月後、約6割の方に見られます。
 
・同じく、少なくとも3割の方が関節炎の程度が半分くらいにまで改善します。
 
・最も心配な副作用は感染症です。重症の感染症が起きる頻度は半年で1%程度です。
 
患者さんは、「それなら」と治療に同意をした。