生物製剤bioを評価する際、「継続率」とは有効性と安全性の両方に影響される大切な指標と思います。
The Kansai Consortium for Well-being of Rheumatic Disease Patients (ANSWER) cohortにおいて、2018年に7つの生物学的製剤、2020年にJAK阻害薬を加えた結果を報告されています。 最近のreal-worldの結果をまとめられており、現在の日本の診療の参考になりそうです。
(Ebina 2018)
Drug retention and discontinuation reasons between seven biologics in patients with rheumatoid arthritis -The ANSWER cohort study.
Ebina K, et al.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29543846/
この研究の目的は7つの生物学的製剤(bDMARDs)の継続率、中止理由を関節リウマチのリアルワールド・セッティングで評価すること。
2009-2016年のbDMARDs治療コース1037回が多施設後ろ向き研究に含まれた。
女性81.8%; ベースラインの年齢, 59.6歳; 罹患期間7.8年; RF陽性率81.5%; DAS28-ESR, 4.4; プレドニゾロンの併用43.5%、MTX 68.6%; Bio-naïve, 57.1%; ABT, 21.3%; TCZ, 20.7%; GLM, 16.9%; ETN, 13.6%; ADA, 11.1%; IFX, 8.5%; CZP, 7.9%。
36ヶ月の時点における薬剤の継続率と中止理由がKaplan-Meier法で評価され、Cox proportional hazards modelingで可能性のある交絡因子で調整された。結果として455回(43.9%)が中止され、内訳は無効217 (20.9%)、toxicでない理由113 (10.9%)、toxicな有害事象86 (8.3%)、寛解39 (3.8%)。
調整された薬剤の継続率は、ABT, 60.7%; ADA, 32.7%; CZP, 43.3%; ETN, 51.9%; GLM, 45.4%; IFX, 31.1%; and TCZ, 59.2%(P < 0.001)。
中止理由として無効はABT, 81.4%; ADA, 65.7%; CZP, 60.7%; ETN, 71.3%; GLM, 68.5%; IFX, 65.0%; and TCZ, 81.4%(P = 0.015)。toxicな有害事象(ABT, 89.8%; ADA, 80.5%; CZP, 83.9%; ETN, 89.2%; GLM, 85.5%; IFX, 75.6%; and TCZ, 77.2%(P = 0.50)。寛解はABT, 95.5%; ADA, 88.1%; CZP, 91.1%; ETN, 97.5%; GLM, 94.7%; IFX, 86.4%; and TCZ, 98.4%(P < 0.001)。
RA治療においてABTとTCZは高い全体的継続率を有し、TCZはIFXに比べ無効がより少なかった。調整されたモデルにおいてIFXは寛解による中止がABT, ETN, GLM, and TCZと比べ高かった。
Fig 1. bDMARDsの継続率(補正前、後)
#補正後を見る限り、ABT, TCZが最も高く、ついでETN。最後にTNFモノクローナル抗体(GLM, CZP, ADA, IFX)(継続率が低い)。
Fig 2. 無効に関するbDMARDs継続率(補正前、後)
#補正後を見る限り、TCZ、ABTは無効中止が少ない
(Ebina 2020)
Drug retention of 7 biologics and tofacitinib in biologics-naïve and biologics-switched patients with rheumatoid arthritis: the ANSWER cohort study.
Ebina K, et al.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32539813/
Abstract
Background: この多施設後ろ向き研究は生物製剤 (bDMARDs)ナイーブのRA患者、bDMARDsからswitchされたRA患者において、7つのbDMARDsとtofacitinib (TOF)の継続率を明らかにするために行われた。
Methods: この研究は2001-2019年の間の3897例における4415回のbDMARDs・TOFの治療コース(naïve 2737回、switch 1678回[2剤目が59.5%])を評価した。女性82.3%, ベースラインの年齢 57.4歳, 罹患期間8.5年; RF陽性 78.4%; DAS-28 (ESR) 4.3; 併用PSL量 6.1 mg/day [使用は42.4%], MTX投与量8.5 mg/week [使用は60.9%]。治療コースに含まれたのはABT (n = 663), ADA (n = 536), CZP (n = 226), ETN (n = 856), GLM (n = 458), IFX (n = 724), TCZ (n = 851), and TOF (n = 101;ただしbDMARDs-switchedのみ)。the Fine-Gray modelを用いて、薬剤中止の理由(無効、toxic AEs、non-toxic AEs、寛解)、中止率が36ヶ月の時点で評価された。
Results: 各の理由に基づく累積の薬剤中止率は以下の通り:無効はbDMARDs-naïve群(13.7% [ABT] to 26.9% [CZP]; P < 0.001)、switch群 (from 18.9% [TCZ] to 46.1% [CZP]; P < 0.001)。toxicな有害事象はbDMARDs-naïve群(4.6% [ABT] to 11.2% [ETN]; P < 0.001)、switch群(5.0% [ETN] to 15.7% [TOF]; P = 0.004)。寛解はbDMARDs-naïve群 (2.9% [ETN] to 10.0% [IFX]; P < 0.001)、switch群(1.1% [CZP] to 3.3% [GLM]; P = 0.9)。
Conclusions: バイオ7剤+TOFにおける薬剤継続率にはbDMARDs-naïve群、switch群との間で顕著な差が見られた。
Fig. 1. bDMARDs-naive群(a)、bDMARDs-switch群(b)におけるlack of effectivenessによる薬剤中止の推定累積発生率
Fig. 2. bDMARDs-naive群(a)、bDMARDs-switch群(b)におけるtoxic AEsによる薬剤中止の推定累積発生率
Fig. 3. bDMARDs-naive群(a)、bDMARDs-switch群(b)におけるremissionによる薬剤中止の推定累積発生率
<リウマトロジストのコメント>
(Ebina 2018) PSL 44%、MTX69%の集団ではTCZ、ABTの継続率が良かったですね。後から開発されたbioが有利だったのではないかとも思いましたが、bioの使用回数もちゃんと補正されていました。TNFiファーストという考えも改めてもよいのかもしれません。
(Ebina 2020)のpopulationは、PSL使用が42%(平均6.1 mg/日)、MTX使用61%(8.5 mg/week)となっております。
bDMARDs-naïve群では無効中止、AE中止ともABTが少なかったようです。switch群では無効中止はTCZが少なく、switch群でETNが少なかったです。
両研究とも、当方が診ているpopulation(PSL使用<1割、MTX>10 mg /w)との相違が気になりましたが。