リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SELENA-SLEDAI flare index (SFI)

長期安定のSLEにおいて低用量PSN中止の是非を検証したRCT、CORTICOLUP trialにおいて、対象のInclusion criteriaにはSELENA-SLEDAIとBILAG、PGAが使われていました。

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/06/17/000000

 

Primary outcomeであるSELENA-SLEDAI flare index (SFI)はSELENAとPGAで定義されており、それらをもとにmild or moderate,  severe flareを判定されていました。臓器障害をSDIで比較しています。

 

そんなこと言われても「わけが分けわからん」と思いますので(リウマトロジストをふくめ(笑))、この度はこれらのSLEの評価方法について勉強します。

 

  • SELENA-SLEDAIとSFI

 

  • BILAG 2004 (the British Isles Lupus Assessment Group 2004)

    https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/06/24/000000

 

  • SLICC/ACR Damage Index (SDI)

 

 

まずはSELENA-SLEDAIから。

 

SELENAとは、Safety of Estrogens in Lupus Erythematosus National Assessment (SELENA) の略でして、SLE女性に経口避妊薬の安全性を検証したRCTです。このtrialで用いられたSLEの活動性指標がSELENA-SLEDAIです。SLEDAI-2Kとほとんど同じようですが、10日以内の所見のみをカウントすることが特徴と言えるでしょう。

 

↓SELENA trialは以下に 青字 Abstractだけお示ししております(読み飛ばして結構です)。

 

Combined Oral Contraceptives in Women With Systemic Lupus Erythematosus

Petri et al.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa051135

 

Background: 経口避妊薬はnegativeな側面の可能性に対する懸念があるためSLE女性にめったに処方されない。この二重盲検非劣性RCTにおいて私たちは閉経前女性において経口避妊薬がLupusの活動性に影響を与えるかについて前向きに調査した。

 

Methods: 15の米国の施設で計183例のSLE女性 (非活動性76%、活動性があるが安定24%)がランダム割り付けされ、91例が経口避妊薬 (triphasic ethinyl estradiol 35 mcg + norethindrone 0.5 to 1 mg for 12 cycles of 28 days each)、92例がplacebo を投与され、months 1, 2, 3, 6, 9, and 12に評価された。中等度or高レベルの抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、血栓症の既往があれば除外された。

 

Results: プライマリーアウトカムである、重症のSLE再燃は経口避妊薬91例中7例 (7.7%)であり、プラセボでは92例中7例(7.6%)であった。12ヶ月間の重症再発率は同様であった:経口避妊薬0.084、プラセボ0.087 (P=0.95; 両者の差の95%CIの上限は0.069であり、あらかじめ設定された非劣性マージンの9%以内であった)。軽度or中等度の再発は人年経口避妊薬1.40/人年、プラセボ1.44/人年(relative risk, 0.98; P=0.86)。経口避妊薬を内服するよう割り付けられたグループでは1例DVTが起き、1例グラフトの凝固が起きた。一方プラセボ群ではDVT1例、目の血栓症1例 、表在血栓性静脈炎1例、死亡1例(試験終了後)。

 

Conclusions: 私たちの研究は経口避妊薬が活動性がstableなSLE女性において再発リスクを上げないことを示唆する。

 

 

では、本題。

 

このRCTの本文で、SELENA-SLEDAI flare compositeの説明のところにある、Supplementary Appendixをクリックして飛びます。

 

SELENA-SLEDAI flare index (SFI)

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa051135/suppl_file/nejm_petri_2550sa1.pdf

 

 

SELENA-SLEDAI Flare Composite

 

1. Physician's Global Assessment (PGA)

 

f:id:oiwarheumatology:20200620173039p:plain

 

 

2. SELENA-SLEDAI (Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index) INSTRUMENT SCORE

 

記述子が受診日またはその10日以内にあったのであればBOXをチェックする

 

重み  □ 記述子の定義

8 □ 最近の痙攣(10日以内);代謝的、感染性、または薬剤性の原因を除外し、非可逆性のCNSダメージによる痙攣を除外すること

 

8 □ 精神病;現実の認識の高度の障害によって日常活動能力が低下していること。幻覚、支離滅裂、著名な連合弛緩、思考低下、顕著な非論理的思考、奇妙で解体した行動、緊張病性行動を含む。尿毒症、薬剤性を除外すること。

 

8 □ 器質的脳障害;見当識障害、記憶障害、その他の知的活動の障害を伴う精神機能の変化。急速に発症し変動する臨床像を呈する。集中力の欠如を伴う意識混濁、おかれた環境に注意を持続させることが出来ない事、および以下の2つ:認知障害、支離滅裂な発語、不眠、日中の眠気、あるいは精神運動活動の亢進・減弱。代謝性、感染性、その他の原因を除外すること。

 

8 □ 視力障害;SLEによる網膜、眼球の変化。cytoid bodies細胞様体体、網膜出血、脈絡膜における漿液性滲出or出血、市神経炎、強膜炎、あるいは上強膜炎。高血圧性、感染性や薬剤性を除外すること。

 

8 □ 脳神経障害;脳神経の感覚または運動神経成分の障害。SLEによる回転性めまいを含む。

 

8 □ ループス頭痛;重症で持続する頭痛。 偏頭痛様でもよいが、麻薬鎮痛薬に耐性であること。

 

8 □ 脳血管障害;脳血管障害の急性発症。動脈硬化性や高血圧性を除外すること。

 

8 □ 血管炎;潰瘍、壊疽、手指の有痛性結節、爪周囲の梗塞、線条出血、あるいは血管炎の組織学的証明・血管造影所見

 

4 □ 関節炎;2関節より多い疼痛・炎症所見(圧痛、腫脹や液貯留)

 

4 □ 筋炎;近位筋の疼痛・筋力低下。CK上昇、筋電図変化あるいは組織学的な筋炎に関連するもの。

 

4 □ 尿円柱;顆粒円柱または赤血球円柱

 

4 □ 血尿>5赤血球/high power field。尿路結石、感染症、その他の原因を除外すること。

 

4 □ 尿蛋白;最近発症した>0.5 gm/24時間の尿蛋白、あるいは増加

 

4 □ 膿尿;>5 白血球/high power field. 感染を除外すること。

 

2 □ 皮疹;SLEによる活動性の炎症性皮疹

 

2 □ 脱毛;SLEによる活動性で異常な、斑状あるいはびまん性の脱毛

 

2 □ 粘膜疹;SLEによる活動性の口腔または鼻腔内の潰瘍

 

2 □ 胸膜炎;SLEによる古典的で重症の胸膜痛、胸膜摩擦音、または液貯留あるいは新たな胸膜肥厚。

 

2 □ 心膜炎;古典的な重症の心膜痛、または液貯留、または心電図で心膜炎の変化が確認できること.

 

2 □ 低補体血症; CH50, C3 or C4が検査機関の正常下限を下回ること

 

2 □ DNA結合の増加;Farr assayでDNA 結合が>25%であること、あるいは検査機関の上限を上回ること。

 

1 □ 発熱 ;>38℃感染症を除外すること

 

1 □ 血小板減少;Plt <10万/mm3.

 

1 □ 白血球減少;WBC <3,000 /mm3. 薬剤性を除外すること

 

______ 合計点

(□記述子が存在する場合の重みの合計)

 

 

#上述のPGAとSELENA-SLEDAI をもとに軽症・中等症再発、重症再発が定義されています(↓↓)

 

 

3.SFIに基づく重症度の判定

3-1. 軽度または中等度の再発 □

□ ΔSELENA-SLEDAI ≥3 points (ただし≤12)

□ 新規発症、あるいは悪化:

  • SLEによる円盤状皮疹, 日光過敏症性, 深在性ループス, 皮膚血管炎, 水泡性湿疹
  • 鼻腔・口腔内潰瘍
  • 胸膜炎
  • 心膜炎
  • 関節炎
  • 発熱 (SLE)

PSNの増量。ただし≤0.5 mg/kg/day

□ SLEの活動性に対するNSAIDまたはhydroxychloroquine の追加

□ ΔPGA score ≥1.0、ただし≤2.5

 

 

3-2. 重症再発□

□ ΔSELENA-SLEDAI スコア>12

□ 新規発症、あるいは悪化:

  • CNS-SLE
  • 血管炎
  • 腎炎
  • 筋炎
  • Plt <60,000
  • 溶血性貧血: Hb <7.0 g/dL or Hb低下 >3.0 g/dL

Requiring: プレドニゾンの倍量, または>0.5 mg/kg/dayへの増量, または入院

PSN >0.5 mg/kg/dayへの増量

□ SLE活動性のためcyclophosphamide, azathioprine, methotrexateの追加

□ SLE活動性のための入院

□ Physician’s Global Assessment スコア>2.5

 

 

ps

SLEDAI-2Kとの違いですが、10日内に評価することを明記した事くらいでしょうか。脳神経障害で回転性めまいが入っているなど、細かい違いは気にせず、ほぼ同じと覚えてよいでしょう。

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13676116

 

 

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