EULAR recommendations 2019ではmPSL0.5~2.5gのパルス後に0.5-0.3mg/kgで治療をするよう推奨されていて、KDIGO 2020では0.75g~1.5gのパルス後にPSL0.5-1.0mg/kgで治療を開始するようにと伺いました。
ちなみに日本のガイドライン2019ではPSL1.0-0.5g/kgで、±自由な用量のmPSLとなっております。
日本人のLNにおける適切なステロイドの使用方法、使用量はいかほどなのでしょうかね。
少なくともヒントとなりそうなRCTを発見しましたので、貼っておきます。
MyLupus by Zeher-M, et al in 2011
Methods
Study design and conduct
24wの多施設RCTで増殖性腎炎の炎症を有するSLE患者が標準量のステロイドと減量ステロイドのいずれかと併用のうえミコフェノレート酸腸溶剤で治療された。患者は9ヶ国、19の腎臓内科、リウマチ科、内科または免疫センターで治療された。(略)
Study population
18歳以上の男女が以下を満たせばエントリーの資格があった;
①ACR基準4項目を満たすSLEと診断されていること、
②ISN/RPS分類ClassIII or IVの増殖性腎炎であること、
③登録前24ヶ月以内に腎生検がなされていること、
④スクリーニング時とbaselineでUPCR>0.5、
➄以下の1つ以上の臨床的活動性があること(Cr>1mg/dL、顕微鏡的血尿>5RBC/hpf、細胞性円柱)。主な除外基準はCockcroft-Gaultで計算されたCCr<30ml/min、過去3ヶ月以内にステロイド静注、経口or静注CY or MMFの投与、過去6ヶ月以内に抗体製剤の投与歴があること。
Intervention
- 2wのスクリーニング期間についで患者は1:1でステロイドのいずれかの投与群にランダムに割り付けられた。ランダム割り付けリストは治療割り付けが記載されたスクラッチカードを用いて妥当性のあるシステムを用いて作成された。このカードは患者のランダム化番号が記載されていて、調査者がカバーをとって治療割り付けが分かるようになっており、あらかじめ参加センターに配られていた。
- Day1ではすべての患者が0.5mg/dayの静注mPSLを3日間、経口ステロイドが開始される4日までに投与された。
- 標準量の群ではDay4-14の経口ステロイドは、45kg以下なら45㎎、>45㎏で55㎏以下では50㎎、>55㎏で65㎏以下では60㎎、>65㎏の場合70㎎であった。投与量はあらかじめ決められた体重調整に基づくスケジュールで24wまで5㎎ずつ減量された。
- >65kgでは10㎎ずつ減量された。減量ステロイド群では初期量は標準量の半分で、45kg以下なら22.5㎎、>45㎏で55㎏以下では25㎎、>55㎏で65㎏以下では30㎎、>65㎏の場合35㎎。投与量は≤65 kgなら2.5mgずつ、>65㎏なら5㎎ずつ減量された。
- 全例がEC-MPSを1440mg/day(720mgを2回か480㎎を3回)を2週間、その後2160mg/dayに増量された(1080㎎を2回、または720㎎を3回)。
Study endpoints
- Primary efficacy endpointはwk24時点のcomplete responseの割合。CRはUPCR<0.5で、血清Crが正常の10%以内と定義された。
- Secondary efficacy variablesには
(a) 12w時のCR達成割合;
(b) 12w、24w時のpartial response達成割合。PRの定義はUPCRがbaselineの50%以上低下しCrが改善するかbaselineの10%以内であること;
(c) 軽症or中等度~重症のSLE再燃をした患者の割合(軽症のフレアはPR/CR達成後にSLEの活動性が上昇し1つか2つのBILAG B score+A scoreゼロかつ医師がステロイドを増量する決定をすることで定義;中等症~重症のSLEフレアはPR/CR達成後に1つのBILAG A scoreか3つ以上のBILAG B scoreで定義された);
(d) 4,12,24w時のglobal BILAG scoreとSLEDAIで測定された疾患活動性;
(e) 12w、24w時のステロイドの総投与量;
(f) 血清Cr、Cockcroft-gaultのCCr、MDRD計算によるeGFR、UPCR。安全性の変数には有害事象、重症有害事象と薬剤中止を含んだ。
Evaluation
スクリーニング後の研究のための受診はbaseline (day 1) and at weeks 2, 4, 8, 12 and 24。脱落した患者は可能であれば24週までフォローされることとした。The BILAG and SLEDAI indicesはbaseline, weeks 4, 12 and 24で完全に評価された。BILAG testの重症度スケールのAからEへの減少でスコアかされた8個の臓器系各において、global BILAG scoreが以下の採点で計算された(Aは治療強化をするに十分な疾患活動性;Eは臓器系が全く侵されていないこと): A=9, B=3, C=1, D/ E=0. そのため各患者で0-72の範囲となった。
Crはセンターラボで測定された。AEsと重症AEsは受診の度に記録された。感染症を含むsAEsのKey criteriaは死亡or生命に関わるものとし、持続的or有意な身体障害、入院または入院の延期、あるいは医療的に重大とみなされるもの。
Statistical analysis
The primary efficacy variableは24w時のCR. この探究的研究のsample size の計算は両群22.5%がCRを達成するであろうことの想定に基づく。10%の非劣性マージンに基づき80例あれば19%のパワーで減量群の標準量に対する非劣性をone-sided 97.5% confidence interval (CI) approachを用いて示すことができるであろうと考えた. Sample sizes はnQuery Advisor 5.0 softwareを用いた. 略
Results
Patient population
81例がランダム割り付けされ(標準ステロイド42例, 減量ステロイド39)、ITT and safety populationsを形成した. このうち74 (91.4%) が24-week studyを完遂した (Figure 1). 標準群の2例が試験を終えるまでに死亡し、標準群のもう1例が完遂したものの内服を中断した。減量群では4例が中止した (2例がAEsのため, 1例が効果が満足できるものではなかったため, 1例が投与法に問題があったため). 最初の受診は2007年2月, 最後の受診は2009年11月. 患者のdemographicsとbaselineの特徴はTable 1のとおり. 平均年齢33.1歳で大多数が女性 (82.2%)。診断からの年数は56.9 ヶ月. 大多数がbaselineでISN/ RPS class IV。7例(2 standard- dose, 5 reduced-dose)はscreeningとbaselineで UPCR >0.5ではなかったが、プロトコールに反して登録された。
Table 1. Patient demographics and baseline characteristics at study entry (ITT/safety population)
全例 (n=81) 標準量群 (n=42) 減量群 (n=39)
Study medication
全例が24wの研究に残っている間ステロイド治療を続けた。24wまでのPSN相当量の総投与量の平均(± SD)は標準7111±1292 mg (114±15 mg/kg)、減量4630±1021 mg (73±18 mg/kg) (p <0.001).
1日の平均PSN相当量は115±8 mg/day (1.9±0.2 mg/kg/day) and 93±35 mg/day (1.5±1.7 mg/kg/day) at week 2 (p <0.001);
28±10 mg/day (0.4±0.1 mg/kg/day) and 15±5 mg/day (0.2±0.1 mg/kg/day) at week 12 (p <0.001); and
11±5 mg/day (0.2±0.1 mg/kg/ day) and 7±5 mg/day (0.1±0.1 mg/kg/day) at week 24 (p <0.001) respectively (Figure 2).
EC-MPSの平均投与量は1984±192 mg/day to week 12, and 2002±204 to week 24.
Figure 2. Glucocorticoid doses to week 24 (ITT population).
Dotted lines indicate oral steroid dose i.e. without intravenous
pulses. Values are shown as meanSD. ITT, intention to treat.
Response rate
The primary efficacy endpointであるweek 24のCRは全体で19.8% (16/81)。
標準群で19.0% (8/42)、減量群で20.5% (8/39) (p=0.87, Chi squared)であり、非劣性は示されなかった (lower limit of the 97.5% CI for the difference -15.9%, p=0.098) (Table 2).
24w時のPRは42.0% (34/81)。全体で24w時のCR or PRは61.7% (50/81), (標準群66.7% [28/42]、減量群56.4% [22/39]).
Table 2. Complete and partial response rates at weeks 12 and 24 (ITT population)
※Table 2をもとにスライドを作ってみました↓
SLE activity
baseline ~week 24の間、global BILAG scoreの平均は14.0±5.4 →5.0±3.8 (p <0.001); 平均SLEDAI score は16.2±6.9 →6.2±5.1と減少(p <0.001). 標準群の1例のみ中等度~重症のSLE flareを経験した. baseline~24wまで疾患活動性スコアの変化に有意差はなかった (Figure 3)。またどの時点においても有意差はなかった(data not shown).
baselineと24wkの中央値(range) は97 (2–561) and 39 (0–301)) IU/L for anti-dsDNA, 0.7 (0.3–167) and 1.0 (0.5–189) g/L for C3, and 95 (10–464) and 181 (12–444) g/L for C4。anti-dsDNA, C3 or C4 complementの値において群間差はなかった
Renal function
平均GFRとUPCRはbaseline →24wで有意に改善した; その他の腎パラメーターは変化なかった(Table 3). baseline →24wの変化は標準群でUPCRの改善がより大きかったこと以外は群間で同様 (Table 3).
Safety
AEsは80.2% (65/81) (Table 4). GIが最もコモンなAEであった(n=31, 38.3%). 関連が疑われたAEsの発生頻度は41.9% (n=34)で、GI が17.3% (n=14). 感染症が38 例(46.9%)で, 標準24例 (57.1%) 、減量14例 (35.9%) (p=0.056, chisquare test). 最もコモンな感染症はherpes zosterで, 標準で7例、減量で0例 (p=0.012, Fisher exact test).
Serious AEsは12 例(14.8%) (標準19.0% [8/42], 減量10.3% [4/39], p=0.266 [chisquare test]). 2例以上に見られたserious AEは高血圧が各群1例ずつのみ。標準群の2例の3回のserious GI AEs: 下痢, 嘔吐、急性膵炎を呈した. 5例がserious infectionsを呈し、そのうち5例が標準(CMV, EBV腸炎, , herpes zoster、sinusitis)で、減量群では胃腸炎の1例のみ. 標準群の1例が胃腸炎のため薬を中止し、減量群の2例が胃腸炎と皮疹のため中止した。さらに標準群の2例が死亡した。1例は重症の呼吸促拍の後に死亡し、研究薬との関連は疑われなかった。もう1例は急性膵炎による多臓器不全で、急性CMV感染とEBV感染を合併し研究薬との関連が疑われた。
Table 4. Adverse events occurring in ≥5% of patients in either treatment group (safety population)