リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SLEのアウトカムの最適化:T2Tと治療ゴールの定義

古い論文ですが、読みごたえがあります。Doria教授はSLEの目標として、この論文の後にClinical remission off corticosteroidsという概念を提唱されています。

 

Optimizing outcome in SLE: treating-to-target and definition of treatment goals.

Doria A, Gatto M, Zen M, Iaccarino L, Punzi L.

Autoimmun Rev. 2014 Jul;13(7):770-7

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24480071/

 

Introduction

1. Introduction

SLE患者の生存は過去50年でdramaticに改善した。10年生存率が1950年代は50%→2000年代は90%に。これは恐らく早期診断とより適切な治療シェーマのおかげだ。しかしSLEは一般人口と比べたSMRがいまだ4.6倍。死因は長期生存とともに実に様々で、急性疾患で死亡する患者は減り、cardiovascular、感染症、cancerが増えた。特に持続的な活動性はorgan damageを増加させ、それがさらなるdamageや死亡につながる。したがってSLEにおけるunmet needsがいくつかある。長期の予後がpoorなままであるということ;そのため、remissionを延期させ、damageを最小限にするためいに新たな方法論的なstrategyが必要であるという事だ。

 

2. Treat-to-target

treat-to-targetとは疾患のoutcomeを改善させることができるgoalを目指して患者を治療するという事と定義されよう。ある人が正確に示すbestな治療目標の基礎はほとんど臨床研究でもたらされる。例えば現在のDMと心血管疾患の管理のためのguidelineは悪いイベントのリスクが高い患者の生存の確率を最大にする事を議論している。実際、コレステロールと血糖値は最も信頼できるもので、最も信頼性が高く、使用しやすくて、疾患の進行、治療反応患者の予後を表現するbiomarkerだ。リウマチ性疾患ではt2tは患者をそれに向けて治療するという疾患活動性の程度、あるいは寛解を表す。疾患のoutcomeを改善させるために。t2tストラテジーは最近RAで導入された。従来の治療のやり方に比べX線変化、機能的変化を有意に改善させることが示された。とくに10の新たな推奨がそれに従って策定され、完全寛解を第一の目標とし完全寛解が達成できない場合は低レベルの疾患活動性を許容する指標とした。SLEの疾患活動性と型はSLE患者の予後を悪化させることが知られる;したがって疾患活動性のモニタリングは、疾患管理における最も大切な課題だ。しかし、DMや高血圧と異なり、多系統のリウマチ性疾患において疾患活動性に関する情報は単一のbiomarkerで提供されず、医師評価と患者の見解を含むcomposite disease activity indexesで得られる。臨床的・血清学的所見を包括する複合的疾患活動性スコアが必要であるが、高・中・低活動性を分ける信頼できるcutoffポイントを見つけることも必要。疾患のダメージ進行を止める明確な閾値を見つけることは難しいが。

 

3. SLE disease activity

SLEの活動性は進行中で、ほとんどが可逆的なSLEの免疫学的経路による異常の合計を表す変数で定義されうる。SLEの活動性は臨床的、血清学的活動性に区別されるかもしれない。全身を侵しうる炎症性・非炎症性所見と持続する血清学的異常(自己抗体とくに抗dsDNA、低C3 and/or低C4、高ガンマグロブリン値)が考慮される。

 

3.1. SLE activity indexes

80年代半ばから異なる疾患活動性指標が開発され、SLEにおいて妥当性を評価された。最初はSLAM、ついでSLEDAI、ECLAM、BILAGと。臨床プラクティスであまり使用されないが、他にもある。中でもSLEDAIとBILAGは最も普及している。SLEDAIは24の臨床的・ラボ的な変数で疾患活動性のない0から最大の105点まで付けられる。BILAGは疾患表現型の変化を改善と悪化で表し、8臓器系を同時に包括するものだ。実際BILAGスコアは治療意図、すなわち疾患をコントロールするために必要なステロイドの投与量に応じて開発された。つまりBILAG-AはAction, BはBeware, CはContainment (封じ込め)、DはDiscount、EはNo Evidence. 時が過ぎるにつれ、最も普及した指標たちは持続的な疾患活動性を評価するため、あるいは評価するitemを広くするためにupdateされた。したがってSLEDAIはSLEDAI-2Kとなり尿蛋白、皮疹、脱毛や粘膜病変を含むに至った。一方BILAGはBILAG-2004となり、眼科所見やGI所見を含んだ。SLEDAIのようなglobalな疾患指標を用いるdisadvantageはある臓器系の改善によるスコアの改善が他の臓器系の悪化をマスクしてしまうかもしれないという点である。SLE Responder Index (SRI)はSLEDAIとBILAGとPGAを含む、composite scoring systemであり、ひとつの臓器が悪化を伴わない全体的な改善を測定するために開発された。

 

3.2. Patterns of SLE disease activity

治療に関わらずSLEにおける経時的な疾患活動性のvariationは良く認識されている。縦断的な研究が行われ、SLEにおける3つの疾患活動性のパターンが判明した;すなわち再発寛解型relapsing remitting (RRD), 長期安定型long quiescent (LQD)、慢性活動型chronic active disease (CAD)である LQDは30~40%、CADとRRDは残りの60~70%。私たちは自身のコホートにおいてSLEの標準治療を行っていて、年に3回以上受診している外来患者を対象に疾患活動性のパターンを調査した。血清は疾患活動性を評価する際に省くこととした。その結果、純粋な臨床的活動性に焦点を当てた。その結果、以下のパターンが同定された;clinically quiescent disease (CQD; SLEDAI-2K= 0 in three annual visits); CAD (SLEDAI-2K ≥ 2 in at least two out of three annual visits); RRD (SLEDAI-2K ≥ 2 in one out of three annual visits)。4つ目のパターンとしてSLEDAI-2K = 1で定義されるminimal persistent disease activity (MDA)があった。私たちのコホートから得られた結果は過去の研究と一致しており、治療中の患者の50%が三年寛解、残り50%がいくらかの活動性を有したすなわちCAD(ほとんどのケース)、MDA、またはRRD。7年後、1/3しかremissionとは考えられなかった。65%は再発性か持続性の疾患活動性を有した。

 

Figure 2

 

4. SLE and organ damage

SLEのdamageはSLE診断後に発生し6ヶ月以上持続する不可逆性の組織障害と定義される;それは12臓器系を包括するSLICC damage indexで評価される。興味深い事に時間経過とともに疾患活動性は低下するが、並行するように多様なdamageが悪化するのだ。したがってSLEの患者が長期生存するようになったため、患者は活動性疾患と長期の治療によるdamageを蓄積しやすい。実際、明らかな区別はこれまでは難しかったが、早期のダメージは活動性により関連するが、後期のダメージは薬剤の副作用、とくにステロイドの慢性曝露によってしばしばもたらされる。とくにGladmanらは眼と筋のdamageがGCによってもたらされやすい事を見出した。すなわち慢性のGC使用が早期の骨粗鬆症性骨折、無血管性壊死、筋委縮、白内障。反対に腎と肺、GI、皮膚の障害は疾患に関連しやすい。中間のサブグループとして心血管系、NPSLE、糖尿病と末梢血管疾患はGCによるものもあるかもしれない。慢性のdamageのパターンはmajorなSLEのコホートによって異なるが、筋、心血管系、腎臓は患者の予後により高頻度に関連する。

 

4.1. Disease activity and damage accrual

SLE患者における疾患活動性を分類する事はCADとRRDの患者が寛解の患者と比べ臓器damageの増加が蓄積するため重要である(Fig. 2↑)。350例のSLE患者の前向き研究は長期活動性のSLEはorgan damageが8%増加するかもしれない事を示した。これらの観察結果に加え、フォロー期間全てにおける全般的に高い活動性は重症damageの主な予測因子であることが大規模研究で示された。平均SLEDAIで見ても、合計BILAGの平均で見ても。baselineにおける高い疾患活動性もdamageを予測するようだ。LUMINAコホートでは最初のdamageまでの期間がより短かった。重要な事に持続的な活動性とBILAG-A再燃はいまだにdamageを予測する。既存のdamage、罹病期間、治療のような交絡因子となりえる因子で補正した後でも。個々の臓器障害はSDI進行に貢献するようだ;例えば診断時に腎障害を呈する患者は将来のdamageの蓄積を起こしやすい。また重要な事にトロントコホートにおいて10年生存した患者に比べ死亡した患者における過去の腎病変はずっとコモンであった。NPSLEも将来のdamageに関連する。

 

4.2. Drugs-related damage

トロントのグループは大きな開始コホートにおいてorgan-damageの進行性の増加が長期GC曝露に直接的に関連する事を述べ、GC関連damageはSLICC開始コホートの5年間のフォロー終了時にdamageの合計を説明した。実際、初期のコルチコステロイド療法は初期の障害発生を防ぐために必要であるが、長期間の治療はあらゆる臓器系において多くの副作用と関連する。重症の患者は、より高用量のコルチコステロイドを必要とするため、損傷発生のリスクが高くなると予想される。しかし、258人のSLE患者を対象とした縦断的観察では、ベースライン時の累積コルチコステロイド投与量が多いほど、グローバルな疾患活動性とは無関係にSDIの増加と関連することが判明した。注目すべきは、コルチコステロイドに関連する障害は時間とともに蓄積し続けるが、疾患依存性の障害は最初の増加の後、長期的に安定したままであることである。したがって、進行性の臓器障害の蓄積は、疾患期間そのものよりも、むしろ長期にわたるコルチコステロイド療法によって引き起こされることがほとんどである。副腎皮質ステロイドの漸減は、患者の状態や疾患のコントロールに応じてできるだけ早く行うべきである。この点で、初期から副腎皮質ステロイドを節約することを目的とした戦略がいくつか開発されている。さらに、多変量解析でシクロホスファミドの使用がSDIの増加と独立して関連していることが判明したため、より細胞毒性の強い薬剤を避けることも望まれる。

 

5.1. Damage leads to more damage

SLEにおける障害の予測因子は、いくつかの研究で評価された。高齢と疾患活動性とともに、既存の損傷負荷は、その後の損傷発生の最も強い予測因子の1つであることが明らかになった。従って、追跡調査開始時のSDIが高いほど、損傷の発生が増加することと有意に関連していた。同様のデータは、患者の性別、年齢、民族、評価に使用した活動指数に関係なく、異なるコホートの間で確認されている。

 

5.2. Damage leads to death

damageはSLE患者の長期予後不良と死亡を決定する主な因子。damageは身体障害と生産性低下にも至る。高齢と疾患活動性とともに、既存のdamageはさらなるdamageの最も強い予測因子のひとつ。従ってフォロー開始時の高いSDIはdamage蓄積の増加と有意に関連する。同様のdataは異なるコホートでも確かめられている;性、年齢、民族、活動性指標に関わらず。従って263例の前向き研究ではSDI>0の患者の25%が10年後に死亡したが、entry時にdamageがない患者では7.3%だけであった。SDIスコアを分類してみると、腎damageと心血管系疾患が死亡のリスクが高かった。疾患の進行に伴うdamageスコアの増加は死亡の高いリスクに関連する;とくに338例のSLE患者の前向きフォロー研究においてSDI≥2は3年までの死亡の相対危険度RRが7.7に跳ね上がった。腎不全と心血管系は死亡の主な予測因子。同様に7年に及ぶフォロー研究において診断から5年後のSLICC≥2は死亡のRRが3.4であった。逆に5年後のSDI=0は生存の陽性適中率が97%。患者の寿命が延びたため、過去のコホートを特徴づけていた二峰性のスパイク状の死亡率曲線は、徐々に平坦化しつつある。実際、大規模な前向きコホート研究では、死亡までの罹病期間の中央値は約10年で、死亡リスクは長期的にほぼ安定しており、死亡時期が遅い患者(罹病期間>5年)のSDIは、早く死亡した患者よりも高い。直接の死因は徐々に薄れ、感染症や心血管イベントが介在したダメージが死因の大半を占め、次いで長期罹患者における悪性腫瘍の発生が増加している。

 

5.3. Damage affects quality of life

ほとんどの慢性疾患と同様、SLEは健康関連QOLを嫌なくらいに影響する。それは健康な人と比べかなり悪い。患者のHRQOLに与える疾患のインパクトはSLEの社会的負担の一部であり、自尊心、心理社会的幸福、家族関係、感情的関係を含む無形のコストを伴う。患者は通常SF-36で評価される。SF-36とは精神的身体的健康の様々なコンポーネントを測定する8 domainsにおける36itemsからなる;すなわち身体機能、感情的・身体的な問題による役割制限、社会機能、精神的健康、一般的健康感、活力、痛み。SF-36の8domains全てにおける有意な悪化が様々な人種、地域からのSLEコホートでみられた。疾患活動性はSF-36のある特定なdomainにおける悪化に関連するが、身体的、社会的、精神的なパフォーマンスの全体的な低下および対処戦略の不備と関連し、さらに新たな臓器障害はHRQoLのさらなる低下を予測した。

 

5.4. Damage reduces productivity

SLEの多くは若年層が罹患しているため、疾病が労働関連障害に与える影響を適切に評価する必要がある。実際、SLEには、主に治療へのアクセス、医師への相談、医療費などの直接的な金銭的コストと、生産性や自営業などの間接的なコストが存在する。間接費は労働市場に影響を与えるだけでなく、日常の家事や育児も含むため、世界のSLE関連費用の大部分を占めることが示されている。多くの研究で、SLEに関連する障害は労働障害や生産性の低下と関連していることが示されており、特にNPSLEや変形性関節炎が存在する場合は顕著であった。また、罹病期間の長さ、疲労、併存疾患、精神状態の悪さも患者の生産性に影響した。

 

6. Remission is associated with a better outcome

5年以上フォローされた多施設の開始コホートの結果は寛解、とくに早期の寛解はSLEの良いアウトカムに関連する。活動性の患者では長期の予後は不良のまま。例えば腎生存は完全寛解、部分寛解を達成した患者は重症患者と比べ改善している。20年時の全体の生存は完全寛解を達成した患者でおいてのみ上昇したことは注目すべき。早期の寛解(1年以内)は疾患の再燃、ステロイド総投与量の有意な減少に関連し、病気の沈静化が持続する可能性が高くなる。

 

7. Remission in SLE

SLEの寛解は疾患活動性のスコアで定義されるものではない。SLEDAIでは寛解はSLEDAI=0と定義されるかもしれない。一方SLEDAI≥3は持続的疾患活動性を表す。すると抗dsDNA抗体や補体の値のような血清学的異常にどれほどの重要性があるのか、という疑問が沸き上がる。SLEの活動性の評価は通常フォローのためのルーチンの受診では用いられない。そのため日常臨牀では少なくとも2つの主な寛解、完全寛解と臨床的寛解が認識される。完全寛解は無治療で臨床的にも血清学的にも治った状態と定義されるかもしれない。臨床的寛解ステロイド無しの患者において症状や所見、尿検査、血液学的異常がない事と理解されるであろう。臨床的寛解ステロイド無しであるという事が強調されてきた。実際、Lupusの所見はなくてもステロイドを投与されていれば完全な臨床的寛解と考えられるべきではない。なぜならば彼らは疾患をコントロールするために薬剤のサポートを必要としているためだ。しかし臨床プラクティスにおいて調子のよい患者はPSL≤5㎎ または等用量のような低用量GCでしばしば臨床的に安定しており、これらの患者は臨床的寛解の満足のいく部分的な臨床的寛解とみなすことは妥当であるかもしれない。完全寛解、いまだSLEにおける完全寛解の達成と維持という明確なゴールは稀であり達成が難しい。ほとんどの患者が疾患によるわずかな症状を持っているものだ。観察研究からのデータによると完全寛解を達成し維持した患者は>5年の経過で<2%。通常CR達成者はより軽症の疾患を有し、NPSLEや腎病変の頻度が少ない。寛解の定義をもう少し緩めたとしても安定している患者は十分に増えず、寛解の率は薬剤の制限を高めると低くなった。早期の研究によると長期寛解を維持する患者の割合がより高かったと時々強調する様々な結果があるが、標準化された疾患活動性の測定がいまだなく、そのため結果を効果的に一般化することはできない。

 

7.2. Clinical remission: a yielding concept

近年、血清学的異常を許容する臨床的寛解の患者のアウトカムが調査された。なぜなら血清学的に活動性があり臨床的には安定(SACQ)の患者はユニークではあるがよく認識されたSLEのサブグループを表すからだ。SACQ患者は、その状態がいつまでも続くか、さもなければフレアを起こす可能性があり[49]、治療すべきかどうか、どのように治療すべきかという問題を提起している。SACQとは抗マラリア薬以外の治療なしで持続的な血清学的活動性を示すが臨床的に2年以上症状がない患者と定義できるかもしれない(すなわちSLEDAIは2-4になる;抗dsDNA抗体with/without低補体血症で)。SACQのコンセプトは、先に述べたSLEの活動指標を用いたとはいえ、臨床的寛解と同様である。最近報告された前向き研究はSACQの患者は持続的活動性があり治療を要する、マッチされた患者と比べ10年間の臓器damageが有意に少なかった。SACQの患者の中で再発を示した患者(約60%)はSACQを達成した時から中央値で3年後に再発をし、SACQ患者のうち、フレアを起こした人(約60%)は、SACQと定義されてから中央値で3年後、つまり5年後には無治療か抗マラリア薬のみになっていた。しかしGCが再燃のため再投与された場合ステロイドに関連するdamageが上昇しはじめ、活動性患者と同様に、しかし程度は低めで蓄積し始めた。この事はステロイド中止は短い期間であってもdamageの蓄積を減らすという意味で利益があるという事を示唆する。さらにこれらのデータは臨床的寛解ステロイド免疫抑制剤なしで何年も維持されうるということを示唆する。従ってタイトなフォローアップと抗マラリア薬の継続が推奨される。これらの患者の受診の間隔はこれまでのところ明らかに確立されていない。しかし縦断的研究が最近3-4ヶ月が適切であることを示した。

 

7.3. Is minimal corticosteroid intake acceptable?ステロイドの最小限の投与は許容されるか?

臨床プラクティスでは多くの患者がいまだに中等量から高用量のステロイドに曝されている。高用量ステロイドがより大きなdamageに関連するというのにもかかわらず。実際ステロイドが十分に減量できない時、可能な限り最小の投与量が推奨されている。実際、PSN≤6㎎やその相当量はSLEにおいて重大なdamageを助長しないようである。

 

7.4. Is minimal disease activity acceptable?最小限の疾患活動性は許されるか?

観察研究と日常プラクティスからの結果はMDA最小限の持続的疾患活動性はSLE患者が侵される疾患パターンであることを強調している;MDAはわずかではあっても持続する臨床的な異常であり、ステロイドフリーであってもよいし、長期維持のため低用量内服していてもよい。私たちの定義では持続的な炎症を表現しないであろうMDAは軽度の血球減少を許容してもよいこととした。しかしMDAをどのように定義するかについて広く容認された同意はない。私たちはMDAは臨床的に鎮静化した疾患と比べ疾患によるdamageを起こさないことを見つけた。さらにMDAは<6mg/日であることとしたが、異なる定義を用いても?死亡には関連しなかった。興味深い事にHopkins lupus cohort の866例ではSLEDAI低値(0-2)は経過観察中PSNの減量が成功する事を予測した。そのためMDAは真の寛解が達成できていなくても低用量のPSNの有無に関わらず安全と認識されている。

 

8. Definition of treatment goals

長期完全寛解は、SLE患者にとって治療すべき主要な目標である。なぜなら、寛解が持続することは、疾患の再燃や障害の蓄積の減少という点で、より良い転帰と関連するからである。しかし、SLE患者の大部分にとって完全寛解はしばしば達成困難であり、コルチコステロイドを使用しない、あるいはコルチコステロイドを最小量しか使用しない臨床的寛解が代替目標になり得る。また、SLEの希望リストに含まれていないが、低用量のステロイドを使用しても疾患活動性が低いことは、臓器障害の発生を最小限に抑えるために治療すべき妥当な目標として、第3位に設定することができる。

 

9. How we can achieve treatment goals

9.1. Early treatment and the window of opportunity in SLE

SLEの管理における臨床的な推奨は十分な治療の開始の必要性である事である点においては全会一致である事は注目に値する。臓器に関わらず、どの薬剤が治療に提案されていようと。前述のように治療が早い程、持続鉄器寛解の達成のチャンスが高くなり、患者の予後を改善させる。人間における早期の介入には制限があるが、既存の研究は治療の遅れはよりヘビーな治療の必要性につながり患者のより悪いoutcomeに関連する。とくに腎炎において3-5ヶ月の診断・治療の遅れは寛解を低下させ、ESRDの危険因子である腎炎再発の頻度の増加に関連した。LNにおいて早期の治療開始は長年の重大な問題である。治療開始前の6ヶ月より長い期間の症状は最も強いESRDの危険因子であることが分かっている。そのため完成した疾患や合併症(つまりwindow of oppotunity)を避けるために治療を開始しなければならな時間は少なくとも腎炎においては約3-5ヶ月と思われる。

 

9.2. Early diagnosis helps early treatment

早期診断は早期治療につながる。現在のところSLEの発症から診断までのタイムラグは約9ヶ月であり、1980年より以前の59ヶ月と比べると劇的に短くなっており、これはANAの測定が臨床プラクティスに導入されてから達成された。自己抗体は疾患が明らかになる数年前から出現しているようであり、そのため抗核抗体を高感度に検出できるようになったことで、診断に要する時間が短縮された。しかし現在の9ヶ月はwindow of opportunityのおおよそ2倍であり、臓器障害を悪化させる時間と言える。早期診断が臓器機能不全の回復を最大化させる。この目標のために最も妥当なツールは分類基準の適切な使用、SLEのbiomarkerの測定、そしてSLEの所見に気づく開業医の教育(彼らの患者の中から)である。

 

9.2.1. New SLE classification criteria do not help early diagnosis in SLE(略)

 

9.2.2. Lupus biomarkers (略)

 

9.2.3. The importance of primary care physicians(略)

 

10. Conclusions

SLEでより良好な転帰を得るには、疾患活動性をしっかりコントロールし、寛解を長く続けることが重要である。完全寛解が最も良い結果をもたらすので、患者さんは完全寛解を目指して治療されるべきであるが、臨床的寛解、あるいは低用量のステロイドを使用した低疾患活動性も、代替の治療目標としては許容されrる。早期診断は、患者を効率的に治療し(臨床的発症から3-5ヶ月以内が望ましい)、早期寛解に移行するために不可欠であり、この寛解は長期にわたって持続しやすいため、安全に治療を漸減できる。休薬が推奨される期間や血清学的パラメータに関する明確な指標はないため、治療漸減は医師の判断に基づき、選択された患者に対して慎重に行わなければならない。コルチコステロイドの完全な中止が困難な患者では、疾患の静止状態を維持するためにプレドニン<<6mg/日を継続することができる。抗マラリア薬は、疾患の再燃を防ぎ、損傷の発生を抑えることができるので、長期的に投与することが望ましい。