リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

強皮症と妊娠①

Clinical Scenario
著患を知らない35歳女性がレイノー現象のため紹介された。爪上皮内出血点、爪郭の毛細血管異常、手指より肘を越える皮膚硬化を認め、びまん皮膚型強皮症と診断された。
昨年結婚したばかりであり、挙児希望がある。(架空の症例です)
 
< 疑問、発生!>
SScと妊娠について勉強しよう
 
Uptodateで>
Systemic sclerosis (scleroderma) andpregnancyをかいつまんで行きます。
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1.Fertility妊孕性・・・SScの女性の妊孕性に関して明確な結論は存在しない。1950年代、SScの女性の妊孕性は低いと考えれていた。しかし、その後の研究で診断前後のSSc女性の妊娠率、妊娠困難の頻度について様々な結果が報告された。
 
SSc診断前の後向き研究において、不妊・自然流産の複合アウトカムは有意ではないものの3倍であった。
 
・健常人と比べ、不妊率はOR2.3と高く、SSc診断前において受胎までより時間がかかること(12ヶ月以上)OR2.6と高い。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1464871
 
SSc診断前は出生率が有意に高く、SSc発症後の出生率は有意に低い。一般人口と比べて。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18975360
 
RAや健常人と比べ妊孕性に差はない。
 
2.Spontaneous abortion自然流産・・・SSc女性は自然流産のリスクが高いことが全てではないが多くの試験で示唆されている。
 
14例を対象とした研究において自然流産の発生率はSScの発症前でも後でも高かった。発症前の患者では健常人と比べ有意に高かった (22 vs14%)SScが既にある患者においても有意に流産率が高かった。
downloadに障害あり
 
・同様のリスク(Relative risk 2.1)は約270例のSSc患者の研究でも示された。
 
・これに反して、三番目の研究はSSc発症後自然流産ではなく、人工流産が多かったことを示した。
 
3.Pregnancy outcome妊娠のアウトカム・・・SScの女性は通常妊娠には成功するが、医師は妊娠合併症が多いかもしれないことを気づくべし。
 
・ある研究で、99例の109回の出産のデータを前向きに集め、一般の参加人口と比較した(total3939delivery)SSc患者は早産、子宮内胎児発育遅延、低体重児のリスクが有意に高い。葉酸の使用と抗Scl-70の存在はprotectiveであったが。この研究はSSc群の妊娠が比較的少ないという制限があるが。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22213060
 
SSc女性の妊娠アウトカムをRA女性、健常人と比較した研究では、有意ではないが、早産のリスクが他の2群と比べ高かった。年齢に比し低体重の新生児のの率が高かった。胎児死亡のリスクは有意に高く花かかったが。同じグループによるexpanded study214例のSSc167例のRA105例の近隣者と比較した。SSc患者は発症後は早産が多く、年齢に比し低体重児が多かった;しかし同じく早期破水、低体重児に関連するステロイドを含む薬剤歴を解析していなかったため制限がある。
 
SScによる頸管、会陰の障害の症例報告があり、経膣分娩が難しく、帝王切開が必要になるかもしれない。
 
4.Impact of pregnancy upon diseaseactivity疾患活動性における妊娠の影響・・・データに制限はあるが、妊娠がSScを悪化させることはない。SScの妊娠結果が悪かったという症例報告はあるが、99109回の妊娠においてほとんどの患者において疾患は妊娠中安定していた。出産後1年以内に病気が進行した例が4例。これらは全例抗Scl-70抗体陽性で、3例が3年以内の病歴であった。
 
SSc renal crisis強皮症腎・・・腎疾患はSScでコモン。妊娠患者では強皮症腎を子癇前症や子癇と区別することは極めて難しい。ある文献レビューでは子癇前症と考えられた9例中7例が腎生検において強皮症腎により合致する所見を呈した。もうひとつの出産後の時期の可能性のある鑑別疾患はHUSである。これは組織学的に強皮症腎と区別することはできない。
 
・妊娠が強皮症腎の発生率を増やすか否かについては不明。研究はSScの妊娠女性では妊娠していないSSc女性と比べて強皮症腎は増えない事を示した。しかし、早期のびまん皮膚では強皮症腎がコモンであると信じる者もいる。
 
・妊娠中に強皮症腎を発生すると死亡率が極めて高いことが観察されている。ACE阻害薬の使用が有効であった症例があるが、胎児に対するリスクのため妊娠中は禁忌である。このようにSScと活動性の腎症を有する患者は妊娠中の高い死亡率についてカウンセリングされるべし。妊娠中にSRCを発症した患者には透析、ICUにおける胎児モニタリングを含む侵襲的治療を行うべし。
 
5.Other considerations・・・妊娠中、腹圧上昇によるGERDの症状の悪化があるが、レイノー現象は妊娠中の血管拡張のため通常軽減する。
 

(つぎに

孫引きでSSc99例の109回の妊娠について調べた単施設研究を読んでみました。