リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

抗リン脂質抗体が高値陽性の健常人においてアスピリンの一次予防は正当化されるか?

EULAR recommendations for APS 2018(抗リン脂質抗体症候群に対するEULARの推奨)を読みましたが、無症候性aPLキャリアにおける一次予防の推奨には正直、驚きました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31092409

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/05/25/000000

 

『偶然発見されたaPL高値陽性の個人(まだ患者とは言えない)は血栓症の一次予防の適応になるのでしょうか!?』

 

その根拠となった論文や反論も含めて、この度勉強したことを書き留めておきます。

 

※長文のため ポイントを 赤字 にまとめてます。

 

#まずはEULAR recommendationsの説明文から

 

Primary thromboprophylaxis in aPL-positive subjects

  1. 無症候性aPLキャリア(APSの血管or産科的基準を満たさない)で、高リスクのaPLプロフィールを有する者は古典的危険因子の有無に関わらず、低用量アスピリン(LDA)(75–100 mg daily)が推奨される。

一次予防のためのLDAの使用は7つの観察研究からの460例の無症候性aPLキャリアのメタ解析の結果によって支持される。この研究で最初の血栓症のリスクがLDAを内服しているものでは内服していない者にくらべ約半分になったことが示された(14)。ほとんどの患者がハイリスクのaPLプロフィールを有したが、ほとんどが古典的なCVDの危険因子はもっていないかった。同様の割合との関連がこれらの研究からなるより小さなメタ解析でも示された(15)。いずれのメタ解析も方向性は明らかであったため懸念すべき異質性はなかった。エビデンスは観察研究に大きく由来するものであるが、委員会はハイリスクのプロフィールを有する無症候性aPLの個人において一次予防のためのLDAの使用を推奨した。介入によって利益がありそうであることと低い有害事象のリスクを考慮して。

 

  1. 血栓症や妊娠合併症の既往のないSLE患者において:

A. ハイリスクのaPLプロフィールを有する場合、LDAの予防的治療が勧められる。

B.低リスクのaPLプロフィールを有する場合もLDAによる予防的治療を考慮してもよい。

高リスクのaPLプロフィールを有するSLE患者におけるLDA治療はほとんどが観察研究である8つの研究のメタ解析のサブ解析によって支持される。この解析で最初の血栓症のリスクはLDA内服では非内服と比べ半分くらいまで低下し、主要な出血イベントを増やさなかった(14)。個々の患者の解析においてこの関係はヒドロキシクロロキン(HCQ)の使用とは独立した結果であり、LDAがこの患者グループにおいて追加的な利益をもたらすことを示唆した(15)。ハイリスクのaPL患者が全てではないが大多数を占めていた。試験の間に不均一性はあったものの効果の方向性ははっきりしていた。低リスクのaPLプロフィールを有するSLE患者におけるLDAの使用のエビデンスは少ないがあった。しかし二つのコホート研究をプールしたデータはLDAの使用はこのグループにおいても血栓症のリスク低下と関連すること関連した(16, 17)

 

 

#このRecommendations 1の根拠となったメタ解析14)15)のAbstractを読んでみます。

 

14) Efficacy of Aspirin for the Primary Prevention of Thrombosis in Patients With Antiphospholipid Antibodies: An International and Collaborative Meta-Analysis

Laurent Arnaud, et al.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24189281/

 

Abstract

私たちはアスピリンがaPL+の患者における最初の血栓症のリスクを下げるか否かを決めるためメタ解析を行った。Medline, Embase and Cochrane databasesを検索し、aPL+患者における最初の血栓症の発生率を評価した観察研究と介入研究を選択した。

random-effects modelを用いてPooled effectの評価を行った。1211の引用をレビューし11の研究(観察研究10件、介入試験1件)が登録基準を満たし、1208例の患者と139回の血栓症イベントを含んだ。

アスピリン(n=601)で治療された患者における最初の血栓症のpooled ORは、非内服群(n=607)にくらべ0.50 (95%CI: 0.27 to 0.93)であった。試験間に有意な不均一性はあったが(I^2=46%, p=0.05)、

サブ解析はアスピリンの動脈血栓に対する保護的な作用を示したが、静脈血栓に対しては保護的ではなかった(OR: 0.48 [95%CI: 0.28-0.82]、OR: 0.58 [95% CI: 0.32-1.06])。動脈血栓の保護的作用は後ろ向き研究で有意であったが(OR: 0.23 [0.13-0.42])、前向き研究ではそうではなかった(OR: 0.91 [0.52-1.59])。

基礎疾患によるサブ解析では無症候性aPLの個人(OR: 0.50 [0.25-0.99])、SLE (OR: 0.55 [0.31-0.98])、産科的APS (OR: 0.25 [0.10-0.62])におけるアスピリン血栓症に対する保護的な効果は有意であった。

このメタ解析は無症候性aPLキャリア、SLE患者、産科的APSにおいて低用量アスピリンによって最初の血栓症のリスクを有意に減少させることを示した。重要なことに前向き試験だけを含んだ場合、すなわち最善の方法論のqualityでは、リスク低下は示されなかった。

 

15) Patient-level Analysis of Five International Cohorts Further Confirms the Efficacy of Aspirin for the Primary Prevention of Thrombosis in Patients With Antiphospholipid Antibodies

Laurent Arnaud, et al.        

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25461472/

 

Abstract

私たちはアスピリンがaPL陽性の患者において最初の血栓症のリスクを有意に下げるか否かを決定するため個々の患者に基づくメタ解析を行った。

aPL患者における低用量アスピリンによる一次予防効果を報告し、個々の患者レベルのデータが入手できる国際的コホート研究5件が登録された。

主なアウトカムはLDA治療群における非治療群に対する最初の血栓症発生率である。

Pooled HRと95%CIをfraity modelsを用いて計算した。私たちは497例の患者と79件の最初の血栓症のイベント(3469人年)をプールした。心血管リスク、aPLプロフィール、HCQ治療で調整を行った後、LDAで治療されたaPLキャリアの非治療群における最初の血栓症のリスクのHRは0.43 (95%CI 0.25-0.75)であった。

アスピリンの動脈血栓症に対する保護的な作用が示されたが(HR: 0.43 [95%CI: 0.20-0.93])、静脈血栓症に対しては保護的でなかった(HR: 0.49 [95%CI: 0.22-1.11])。

基礎疾患によるサブ解析はSLE、無症候性aPLキャリアにおけるアスピリンの動脈血栓症に対する保護的な作用を示した(HR: 0.43 [95%CI: 0.20-0.94]、HR: 0.43 [95%CI 0.20-0.93])。

私たちはHCQの独立した保護的作用を見出すことはできなかった。この個々の患者のデータに基づくメタ解析は最初の血栓症のリスク、および最初の動脈血栓症のリスクがSLEとaPL+キャリアにおいてLDAで治療されることで有意に減少することを示した。

 

 

#うーん、なるほど~~と思えます。でもGCAの推奨において、観察研究のメタ解析をもってアスピリンの使用を勧めるとしたこれまでの見解をひっくり返したEULAR recommendations for LVV 2018の記載と好対照ですよね!?

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/2020/05/18/082708

 

一次予防として介入することを正当化するためにはどの程度のエビデンスが必要でしょうか。SLEならまだしも、検査が陽性なだけで病気でない人に介入することにはそれ相応の根拠が必要かとも思うのですが。

 

では次にUptodateの記載を見てみます。Europeanというよりは 米国の著者のようです。

 

<Uptodate @2019/5/26>

Uptodateの記載はどうでしょうか。Treatment of antiphospholipid syndromeより。

 

PRIMARY THROMBOSIS PREVENTION血栓症の一次予防

血栓症の一次予防に関する疑問は、ときに患者が急性血栓症の精査としてではない別の理由で測定されたaPLが陽性であった場合に湧き上がる。これはaPLがSLEの疑い、あるいはリベド―や原因不明のaPTT延長、梅毒反応陽性の評価のために測定された場合などがある。

 

  1. Risk of thrombosis 血栓症のリスク

血栓症の一次予防の合理性はaPLに関連した血栓症のリスク上昇に基づく。しかし血栓症の既往がない個人において、aPLに関連した最初の血栓症の実際のリスクに関するデータは限られている。これらの個人における推定されるリスクの評価は観察研究の限られた人数に基づく。これらの研究はほとんどの場合血栓症のリスク上昇を有することが知られているSLE患者を含んでいる。レビュー論文はaPL陽性のSLE患者における年間の血栓症のリスクは4%未満であろうということ、およびSLEのないaPL陽性の個人におけるリスクは1%未満であろうことを示唆している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21104348/

 

1-1. Patients without autoimmune disease 自己免疫疾患を有さない患者 ― 全身性自己免疫疾患のないaPL陽性の個人における最初の血栓症のリスクを調査した2-3の研究のうち、ひとつは178例を含む前向き観察研究である。患者は手術のようなハイリスクの状況がない限り血栓症の予防的治療を受けなかった。3年間のフォロー期間中血栓症は全く起きなかった。もう一つの研究では、ループスアンチコアグラントが単一で持続的に陽性であったSLEを有さない個人179例で血栓症リスクを評価した。約3年間フォローされた。7例(100人年あたり1.3)の血栓塞栓症イベントが起きた。この7例は全例が別の血栓症のリスクを少なくともひとつ有しており、これらの危険因子が同時に血栓症に寄与した可能性を示唆した。

[8] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25456002/

 

1-2. Patients with SLE –いくつかの研究がaPLを有する個人において最初の血栓症のリスクを評価した:

 

  • SLE 2248例のSystematic review and meta-analysisはLAを有する患者が静脈血栓症VTEを起こすリスクはLAが陰性の場合にくらべ約6倍であることを示した。aCLを有するSLE患者のVTEのリスクは陰性の場合にくらべ約2倍であった。しかし、この解析はそのような患者で血栓塞栓症イベントのリスク上昇に同様に寄与したであろうその他のリスクを考慮していなかった。

[9] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9229367/

 

  • もう一つの研究はVTEとaPLの関連を678例の前向きSLEコホートで評価した。LA(the Russell viper venom time assayで評価された)とaCLの存在は3ヶ月毎に評価された。多変量解析によってLA単独陽性とaCL高値を伴うLA陽性がVTEのリスク上昇に関連することを見出した。しかしaCL高値単独はVTEの独立した危険因子ではなかった。

[4] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12465147/

 

  • さらに、あるコホート研究は血栓塞栓症の既往ないaPL陽性のSLE患者144例と性年齢をマッチさせたaPL陰性のSLE患者144例を約9年フォローした。aPL陰性の患者に比べ、aPL陽性患者は血栓症の率が高かった(8 versus 20 percent; hazard ratio [HR] after adjustment for smoking and aspirin use, 3.88, 95% CI 1.82-8.23)。

[3] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19116963/

 

1-3. Patients with obstetric APS but no history of thrombosis 血栓症の既往のない産科的APSの患者 ― いくつかの研究が産科的APS患者の最初の血栓症イベントのリスク上昇を報告した。APSの産科的基準を満たす妊娠損失を経験しているが血栓症イベントの既往がない、1592例の女性の前向き研究において、aPL陽性の女性はその後の血栓症イベントが多いようであった。その他の2つのグループ、すなわちFactor V Leidenのような遺伝的血栓性素因が陽性のグループと陰性のグループと比べて。

[13] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22147897/

 

さらに、aPL陽性の女性のグループにおける血栓症イベントの率の上昇は全てのグループにおいて低用量アスピリン使用の有無によらなかった。産科的APS 115例の後向き研究において、12例(10.4%)がフォロー期間平均10.91±4.47年の間に血栓症イベントを発症した。ほとんどの女性が動脈イベントを患い、脳梗塞が3例、TIAが6例であった。この研究の重要なlimitationとして、血栓症のその他の危険因子が解析に含まれていなかった。

[14] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28748519/

 

  1. Is there a role for primary prophylaxis?一次予防の役割があるか

 

APSの基準を満たさないaPL-私たちはAPSを有さないaPL陽性者においてSLEの有無によらずアスピリンや抗凝固療法のような抗血栓療法のルーチンの使用を勧めない。心血管系リスクを減らすというようなその他の合理的リスクがない限り。全てのaPL以外の血栓症の危険因子の全てが注目されるべきであり、可能な限り除去されるべきである。

 

このアプローチは私たちの臨床経験、観察研究、小規模RCTに主に基づいている。いくつかの観察研究は低用量アスピリンがaPL陽性者においてSLEがあってもなくても保護的に働くことを示唆しているが、アスピリン単独の有効性はRCTで示されたものではない。さらに一般人口において心血管系イベントと癌に対するアスピリンの保護的な役割は予測される利益と出血のリスクのバランスに基づいて、個別的に判断されるところが大きい。一般人口の予防ガイドライン(例、American Heart Association guidelines)はSLEの有無によらず、低用量アスピリンの使用に関する決定の役割を持つべきである。なぜならSLEに特異的な心血管系の予測ツールはないからだ。

 

aPL陽性者におけるアスピリンまたはアスピリン+弱いワーファリン療法による一次予防の役割を評価した研究について以下に論じる:

 

  • 血栓症の歴のないaPL陽性者1044例を含む9つのRCTを含んだ2018年のCochraneレビューはこれらの個人においてアスピリン、あるいはアスピリン+抗凝固療法の利益も有害性も示すエビデンスに不足していると結論した。しかし、全体としてイベントの数が少ないため、このデータを理解しにくい。

[19] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30004572/

 

また注目すべきことにアスピリン単独とプラセボを比較した試験はひとつしかない。解析に含められたこれらの研究の全てがバイアスのリスクが高いか不明であった。

[2] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17599766/

 

血栓症の歴のないaPL陽性者における血栓症の一次予防としてのアスピリンと抗凝固療法の役割をより良く理解するためにはさらなるデータが必要である。

 

  • aPL陽性者1208例(いくらかはSLEを有しいくらかは有さない)においてアスピリンの効果を調べた2014年のメタ解析は低用量アスピリンの予防的効果を見つけた(最初の静脈・動脈血栓症のOR, 0.50; 95% CI 0.27-0.93)。しかし解析に含まれた11の研究のうち1つ以外は全て観察研究であり、これらの試験の間には有意な不均一性が診られた。さらにサブグループ解析のひとつは低用量アスピリンが動脈血栓症に対してのみ予防的であることを示し、別のサブグループ解析はアスピリンの予防的効果は後ろ向き研究のみで統計学的に有意であった(前向き研究では予防的とは言えなかった)。

[20] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24189281/

 

  • aPL陽性であるが血栓症の既往がないSLEと非SLE患者497例の観察研究のフォローアップのメタ解析は低用量アスピリンで治療された患者において(非内服群とくらべ)血栓塞栓症のリスク減少を示した(補正HR, 0.43, 95% CI 0.25-0.75)。サブグループ解析は動脈血栓症に対してアスピリンの予防的効果を示したが(HR 0.43, 95% CI 0.20-0.93)、静脈血栓症では示されなかった(HR 0.49, 95% CI 0.22-1.11)。しかしこのメタ解析ではいくつかの大切な研究が除外されていた。

[21] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25461472/

 

  • The Antiphospholipid Antibody Acetylsalicylic Acid (APLASA) studyはaPL陽性の個人においてアスピリンの予防的治療vsプラセボを比較した唯一の二重盲検RCTである。この研究はアスピリンの予防効果を確立するためには小さすぎた;持続的にaPLが陽性であるが血栓塞栓症や妊娠合併症のない98例が登録された。これらの個人は平均2.3年の間、ランダムにアスピリン(81 mg/日)とプラセボに割り付けられた。約3分の2がSLEを有した。アスピリン群の3例が血栓症(2例が静脈、1例が動脈)を起こしたが、プラセボ血栓症を起こした者はいなかった(HR 1.04, 95% CI 0.69-1.56)。

[2] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17599766/

 

  • aPL陽性者にアスピリンに加えワーファリンを併用することの意味は2014年の研究で評価された。この研究は産科的合併症があったりなかったりするaPL陽性者166例を低用量アスピリンと低用量アスピリン+弱いワーファリン(INR 1.5; 範囲は1.3-1.7)に無作為に割り付け、約3年フォローされた。約3/4がSLEを、1/4が産科的合併症を有した。各群とも血栓塞栓症が4例に起き(5 percent; 1.8 percent per person-year)、併用療法は有意な血栓症リスク減少をもたらさない事が示された。しかしこの研究は標準療法であるワーファリン単独の利益を焦点を当てたものではない。

[22] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24097288/

 

EULARガイドラインはハイリスクのaPLプロフィール(12週間離れて2-3回、ループスアンチコアグラントが陽性、または2-3のaPLが陽性、持続的な高抗体価のaPL;いずれもSLEの有無を問わない)を有するがAPSの基準を満たさない患者において一次予防として低用量アスピリンを勧めている。低用量アスピリンは低リスクのaPLプロフィール(aCL単独や低~中等度の抗体価の抗β2GPI抗体や持続的なaPL陽性)の者においても提案されている。低用量アスピリンによる予防的治療は出血症状のリスクを容認する意図をもつ個人には合理的な代替療法となるかもしれない。ただし、彼らが低用量アスピリンの予防効果を支持するエビデンスが極めて弱い(主に観察研究による)ことを知らされていればの話である。

[23] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31092409/

 

妊娠合併症に基づくAPS ― 私たちは過去の妊娠合併症に基づいてAPSと診断された妊娠していない女性において最初の血栓症を予防するために抗血栓療法(アスピリンor抗凝固剤)を使用しないことを提案する。この治療が心血管系リスクを減少させるというような別な理由で推奨されていない限り。このアプローチは主に産科的APSを有さない女性における血栓症の一次予防としてのアスピリンや抗凝固療法の予防的効果を示した限られたエビデンスに基づいている。妊娠を経験したことのある65例の患者の後向き研究において、平均8年間のフォロー後の追加的な血栓症イベントのリスクが低用量アスピリン群で10%、非内服群で59%であることが示された。この研究は低用量アスピリンによる予防がAPSのこのサブグループでは有用であることを示すものかもしれないが、この研究のlimitationは交絡因子(血栓症のその他のリスク)が解析にほとんど含まれていない事、アスピリンコンプライアンスは確認されていない事が挙げられる。

[17] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11407709/

含んだ研究のほとんどが観察研究であったメタ解析において、SLEを有さない産科的APS患者のサブグループ解析で低用量アスピリンに予防的な効果があったことを見つけ、最初のpooled ORが0.25 (95% CI 0.10-0.62)であったことを示した。この集団における低用量アスピリンの役割を明らかにするためにはさらなるデータが必要である。

[20] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24189281/

上述のとおりEULARガイドラインは産科的APSの妊娠していない女性のために(SLEの有無によらず)低用量アスピリンの使用を提唱している。

 

 

#あなたはどちらの見解を支持されますか?

 

 

 

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