リウマチ膠原病のQ&A

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Dr. Mokによるループス腎炎(LN)のレビュー①

アジアで最もご高名なSLEの専門家であろう、Dr. Mokによるループス腎炎のレビューです。

 
Towards new avenues in the management of lupus glomerulonephritis.
Nat Rev Rheumatol.2016 Apr;12(4):221-34. Mok CC

寛解導入療法について、勉強になったポイントを箇条書きで示します。
 
Induction therapy
Cyclophosphamide
・オランダからのRCT・・NIHプロトコールのIVCYAZP+mPSLよりも再発率が少なかった(フォローの中央値9.6年)。
 
Euro-lupus trial500mg/2wk*6回はIVCY0.5g/m2*8回と同等の効果を有した。10年後両群間でCrの二倍化、ESRD、死亡の割合は変わりなかった。しかし、Euro-lupus trialは主に白人でNIHプロトコールの試験の参加者よりも軽症の腎炎の患者が多かった。
 
Euro-Lupusnoレジメンを白人以外で使用した経験は乏しい。
 
ACREULAR/ERA-EDTAのガイドラインともEuro-lupusのレジメンは軽症から中等症のLNにしか勧めていない。またそのレジメンで治療された患者はAZP or MMFで維持されるべきである。
(ACR guideline)
 
NIHプロトコールは腎機能障害がすでにある患者、腎機能が悪化しつつある患者、組織学的に半月体形成がある患者、Activity+Chronicityスコアが高い患者にとっておかれるべき。寛解導入の時期は6ヶ月を超えないこと。
 
・経口レジメンは有効かもしれないが、卵巣毒性もあり、ハイリスク患者・難治性LNにとっておくべき。
 
Mycophenolate mofetil
・いくつかの大規模RCTMMFNIHプロトコールのIVCYに劣っていないことを確認した。増殖性LN、膜型LNにおいて。
 
ALMSにおいてMMFIVCYは全体としては同等の効果であったが、HispanicAfrican AmericanLNでは改善率が60% vs 39% (p=0.03)。嘔気、嘔吐、脱毛がIVCYではよくあり、MMFでは下痢が多かった。死亡例の9例中7例が中国人であり、アジア人はその他の人種に比べMMFにより耐えれなかった。
 
ACR、アジアLNネットワークガイドラインはNIHプロトコール、またはMMFを導入療法として勧めている。African American, HispanicではMMFが好まれる。アジア人ではMMF2gが推奨される。
(ACR guideline)
(アジアLNネットワークのguideline)
 
 
EULAR/ERA-EDTAガイドラインはMMFEuro-lupusレジメンのIVCYを勧める。臨床的・組織学的に良くない因子を要する患者ではNIHプロトコールのような高用量のIVCYが勧められ、より軽症の患者ではAZPも選択肢となる。
・半月体形成成人炎、初診時の腎機能障害、治療抵抗性の患者におけるMMFの役割は不明。小さなRetrospectiveなシリーズでは半月体形成性LNに有効。しかし、文献と逸話的経験によるPooled dataではMMFはハイリスクの患者において長期的な腎機能の保護においてIVCYに劣ることを示した。
 
Calcinurin inhibitors
・シクロスポリンやタクロリムスのようなカルシニュリン阻害剤は臓器移植の領域で長期に使用されえきた。いくつかのRCTによってタクロリムスがシクロスポリンよりも優れていることが示されており、LNでも好まれている。
 
・少数のOpen-label studiesがタクロリムスが増殖LN+膜型LNにおいて有効であることを報告した。二つの小さくて十分な症例数でないRCTにおいて増殖性LNにおけるTacの短期効果はIVCYと同等であった。
 
・私たち(Mok)の研究グループは大規模なRCTにおいてLNの最初の導入療法としてMMFTacを比較した。このコホートの79%AZPによる維持療法に移行した。6ヶ月後CRは同等(59% vs 62%)。純粋な(増殖性の合併がない)膜型28例ではTacは有意でないものの数滴に高い改善率 (CR+PR=100 vs 75%)、蛋白尿のより大きな改善を示した。5年以上の経過で有意ではないが、TacではMMFに比べ蛋白尿・ネフローゼの腎再発率、および腎機能低下がより高い頻度で見られる傾向があった。主な感染症帯状疱疹、下痢がMMFで多く、脱毛、糖尿病、こむら返り、可逆性の振戦、一過性のCr上昇がTacで多かった。
 
MMFTacとステロイドの組み合わせによるMulti-targetアプローチがLNで試験された。最初の混合型の増殖性+膜型LNにおける成功についで、多施設RCTが中国人LN368例(class,,,or mixed-+Ⅴ)においてMMF1gTac4mgIVCY0.5-1.0g/m2と比較した。高用量ステロイドを併用。短期効果はMMF-TacIVCYよりも優れていた;6ヶ月のCRは有意に高く(46% vs 26%, p<0.001)、改善までの期間の中央値も短かった。一方、上部消化管の副作用、白血球減少はIVCYで多かった。このMMF-Tacのコンビは従来型IVCYよりも優越性を示した唯一のレジメン。この結果を中国人以外に応用することはできないが、このコンビがMMFとの比較して長期的な安全性と効果があるかを評価する必要がある。
 
・同じMMF-Tacレジメンで高用量ステロイドを併用しない投与法が標準的な導入療法に反応しなかったLN患者の蛋白尿を減らした。この治療法はハイリスクのLNに考慮してよいかもしれない。
 
・まとめると、これらのデータはTacの導入療法として期待できることを示す。とくにCYMMFの禁忌例、効果不十分例において。しかし、現在のTacMMF+Tacコンビのエビデンスは6ヶ月間の導入療法に限られる。TacMMF-Tac導入療法による寛解導入の後の理想的な維持療法のレジメンを考えるにはさらなる研究が必要である。
 

Treatment of pure membranous disease
・増殖性腎炎と比べると純粋な膜型LNESRDへの進展のリスクが低い。血栓塞栓症のリスクは高いが。免疫抑制療法が適応となるのはネフローゼ・レンジの蛋白尿、腎不全または支持療法に反応をしない患者に適応となる。しかし、膜型LNの理想的な治療は臨床試験の患者数が少ないため解釈が難しい。
 
・あるRCTでは膜型LN42例をランダムにPSN単独隔日(1mg/kg/d, 8wks, then tapered to 0.25 mg/kg/day)、同じステロイドレジメンにIVCY0.5-1.0 g/m2/2mos or cyclosporine 5mg/kgを加えたレジメンに無作為に割り付けた。1年後、CR+PRの累積確率はciclosporin (83%)で高く、次いでIVCY(60%)PSN(27%)だった。ネフローゼ再発はciclosporin中止後においてIVCY中止後よりもとりわけ多かった。副作用に差はなし。
 
・二つのRCTにおける純粋な膜型LN65例のpooled dataの解析によると、MMFIVCYに割り付けられた患者において改善率、死亡、脱落率は同様だった。
 
・多くの専門医が蛋白尿>2g/日の膜型LNに対しMMFまたはAZPで治療を開始し、その他のレジメンを難治例のレスキューとして温存する。実際、ACREULAR/ERA-EDTAガイドラインはネフローゼ・レンジ(>3g/日)の膜型LNの初期治療としてMMFとステロイドを勧めた。

・低容量MMFTacは難治性膜型LNに有効であったと報告された。
 
その② (維持療法)

 

 

ps

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