リウマチ膠原病のQ&A

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Dr. Mokによるループス腎炎(LN)のレビュー②

Dr. Mokによるループス腎炎のレビューです。

Towards new avenues in the management of lupus glomerulonephritis.
Nat Rev Rheumatol.2016 Apr;12(4):221-34. Mok CC

 
寛解導入療法については先にまとめました。

維持療法について、勉強になったポイントを箇条書きで示します。
 
Maintenance therapy
 
LNで免疫抑制療法を中止すると再発率は高くなる。多くの試験が免疫抑制の維持は残存する腎の炎症を沈静化し、再発のリスクを減らすために有益であることを示した。私たちのびまん性増殖性LNの経験では、3年以上免疫抑制療法を行っていないことはCr二倍化、ESRD or 死亡のリスクを独立して上昇させた(HR 4.62; p=0.02)
 
CYによる導入療法後のLN患者を対象とした小さなパイロット試験において(n=59)、MMF, AZP3ヶ月毎のIVCYよりも優れていた(n=20, 19, 20)。IVCYの延長は嘔気、嘔吐、感染症に関連した。
 
・もうひとつの小さなRCTCiclosporin 2.5-3.0 mg/kgAZP 2 mg/kg4年間投与し比較したが、腎再発は同様。中国において導入療法後の成功についで6ヶ月のTacrolimus (n=34) vs AZP(n=36)を比較した試験ではアウトカムに有意差なし。これらの試験は症例数が不十分であった。
 
MAINTAIN(Mycophenolate Mofetil versusAzathioprine for Maintenance therapy for Lupus Nephritis)LNⅢ、Ⅳ、Ⅴc、Ⅴd105例をEuro-lupusIVCY3ヶ月の後にMMF2gAZP 2mg/kgにランダムに割り付けた。平均53ヶ月後、23%が脱落し、その理由は主に妊娠(MMF群)や副作用であった。腎・腎外の再発、Crの二倍化、感染症は両群で同等であった。10年間のフォローにおいてMMFAZPは腎再発、ESRDと死亡に有意差はなかった。最初の1年でみられた早期改善は長期の腎アウトカムを予測した。
 
ALMSの維持療法のphaseにおいて、IVCYMMFによる寛解導入を完了した227例がMMF 2gAZP 2mg/kgにランダムに割り付けられた。2.3年後、複合アウトカム(腎再発、Cr二倍化、ESRD、レスキュー治療、死亡)はMMFAZPよりも少なかった(16.4% vs 32.4%, p=0.003)。
 
MAINTENANCEALMSの根本的ないくつかの相違がこの解離を説明しうるかもしれない。MAINTAIN試験の参加者は主に白人(79%)MMF-AZP維持はLow-dose IVCYの導入レジメン後に、改善の有無を問わず、per-protocolで全例に投与された。初期のエンドポイントは腎再発であり、観察されたMMFAZPの間のこのパラメーターの差6%は計画された20%の差よりもずいぶん低かった。これはサンプルサイズが不十分であったことを示唆する。
 
・これに対しALMSはヒスパニック34%、アフリカン・アメリカン10%を含む様々な人種を対象とした。さらに導入療法で改善した者のみが維持phaseに移行した(改善しなかった者は除外された)。ALMSPrimary end pointは腎再発に加え、いくつかの臨床パラメーターの複合アウトカム。ALMSの導入療法において白人以外はCYよりもMMFに反応しやすかったため、Maintenance phaseにおける白人以外の割合が高かったことはAZPに比べたMMFの優位性に寄与したかもしれなかった。ALMSのサンプルサイズはMAINTAINの倍。MMFの優位性はすべての人種で証明された。言い換えると、MAINTAINはそのサンプルサイズの小ささと寛解していない患者を登録したため、ALMSPositive resultは見逃されているかもしれなかった。
 
 
ACR6ヶ月の寛解導入療法で良い反応を示した患者においてMMFAZPの維持療法を勧めた。しかし、このステートメントはALMSの維持phaseが入手できる前に作成された。総じてMMFAZPよりもLNの維持療法としてより良い結果を得られるようだ。とくにHisptanic+African Americanにおいて。妊娠が計画されていない限り。EULAR-ERA-EDTAguidelineMMF寛解導入療法に反応した患者では維持療法としてMMFを選択するべしと推奨した。その理由はALMSにおいてMMF導入療法後のAZP維持療法を受けた患者では腎再発が高かったため。
(ACR guideline)
(EULAR/ERA-EDTA-guideline)
 
・維持療法の理想的な期間は不明。EULAR-ERA-EDTA guidelineは維持療法を少なくとも3年は継続すべきと推奨した。
 
・導入療法に反応した患者においては。腎機能が悪化するリスクが高い患者―AfricanAmerican or Hisptanic, 若い年齢、男性、導入療法後のCR不達成;持続する蛋白尿や活動性のLupus serology、半月体形成性腎炎(chronicityindexの高い事の有無をとわず)、頻繁な再発―においては維持療法の期間は延長されるべきだ。これらがはっきりしている場合は。
 

 

 

ps

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