リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Biologics-IRのRA患者

Scenario case
50代女性、RAMTX-IRのため、ETNTCZABTGLMを使用したが効果不十分で、高活動性(SDAI>26)が持続している。

Biologicsのスイッチを続けてもよいが、そろそろあの薬を考慮する時期が来たか・・・
 
Clinical question
Tofacitinibについて勉強しよう。
 
Uptodateにて>
Uptodateで手っ取り早く勉強します。
Treatmentof rheumatoid arthritis in adults resistant to initial biologic DMARD therapy
 
Tofacitinib —tofacitinibは多くのサイトカインとgrowth factorの受容体によるシグナルを抑制する経口JAK阻害薬。経口で5mg12回。tofacitinibは有効。MTX-IRの中等度・高活動性のRAに対し単剤でもMTXとの併用でも、その他のnonbiologic DMARDsとの併用としても使用できる(著者達はMTXとの併用をよく用いる)[42-48]。その他のnonbiologic DMARDsMTXに耐用できない患者において、MTXの代替として用いることができる(?)。tofacitinibBiologicsAZP/Cyclosporineのようなその他の免疫抑制剤と併用で使用すべきでない。
RAにおけるtofacitinibの効果と安全性はMTX-IR、その他のconventional or biologic DMARD
効果不十分の患者におけるいくつかのRCTで評価されている[42-47]tofacitinibはこの薬とMTXの使用歴がない患者において単剤としてMTXと比較されてもいる[48]。以下に例を挙げる。
●tofacitinibMTX-IRに単剤としても有効たりうる。少なくとも一つのnonbiologic or biologic DMARD(通常MTX)にIR611例のRCTにおいて、tofacitinib単剤 (5 mg twice daily)3ヶ月の治療後、プラセボと比べ活動性RAの所見・症状を有意に改善させた (ACR2060% vs 27%)[42].
●tofacitinibMTX単剤にIRの患者においてMTXとの併用療法としても利益が証明されている[43,44,46];この状況においてTNF阻害薬と比べても同等に有効:
  • MTX-IRの活動性RA797例の試験はMTX継続の上tofacitinib 5mg or 10mg 12回投与を6ヶ月併用した後、MTX+プラセボと比べ有意に大きな利益をもたらした (ACR2052% and 62% vs 25%)[44]. 6ヶ月後、tofacitinibで治療された患者はHAQ-DIの改善 (–0.4 and -0.54 vs -0.15)X線上の骨破壊の進行が小さかった。製造会社が臨床的な使用に推奨している5mg12回を投与された患者ではX線変化は有意差に到達しなかったが。
  • MTX-IRの活動性RA717例を対象としたRCTにおいて、tofacitinib (5 mg twice daily)ADA(40 mg皮下注2週間毎)6ヶ月の治療後、プラセボと比べ同等に有意な利益を示した (ACR2052% and 47% vs 28%) [43].
●tofacitinibTNF-i-IRの患者においても有効性を示した。MTX+TNFi-IR399例を対象としたRCTにおいてtofacitinib (5 or 10 mg twice daily) MTXへの追加はプラセボ+MTXに比べ3か月後に有意な改善率(ACR2042 and 48% vs 24%)、および身体機能障害の程度の有意に大きな改善を示した (HAQ-DI -0.43 and -0.46 versus -0.18)[45].
tofacitinibの相対的な安全性は一般的にbiologic DMARDsと同等のようだ。感染症のリスクと肝機能障害の増加;臨床上さらに注意を要する懸念として好中球減少、リンパ球減少、おそらくCr上昇がある[42,43,49-51]。消化管穿孔も報告されている。帯状疱疹のリスクがプラセボとADAで治療された患者と高いことが報告された。
tofacitinibの相対的な安全性はtofacitinibRCTと長期延長試験解析で評価され、この薬に暴露された4789例、8460人年を対象とした[35]。重症感染症の頻度は100人年で3.09イベント (95% CI 2.73-3.49)。時に応じて安定していた; 全ての死因による死亡率は100人年あたり0.30イベント(95% CI 0.20-0.44)。これらのイベント発生率はbiologic DMARDsを投与中のRA患者において報告されたものと同等。tofacitinib投与による重症感染症のリスク増加に関連する独立した危険因子は年齢、ステロイド、糖尿病、tofacitinibの投与量、リンパ球数<500/m3.もしリンパ球がこのレベルより下がったらtofacitinibを中止すべきだ。
帯状疱疹は試験+延長試験の患者 (239)5%に発生する; 帯状疱疹のリスクはプラセボを投与中の患者と比べ有意に増加する (発生率4.4/100人年, 95% CI 3.8-4.9)[52]。多数のデルマトームをおかしたのは1例のみ。臓器播種や死亡はなかった。トファシチニブの使用に伴って帯状疱疹のリスク上昇に関連した唯一独立した因子は年齢とアジアの試験の参加者。可能であればtofacitinib開始前のZostavaxのワクチネーションを提案する。
tofacitinibMTXを併用する必要性は分からない。RCTでは確立されていない。併用療法が単剤よりも優れている科を決定するための試験が進行中である。
 
Uptodateの孫引き>
まずは初期のNEJM2012の2本の論文です。Oral soloはDMARD-IRを対象にtofacitinibへの切り替え、Oral standardはMTX-IRを対象にMTX+tofacitinib併用を評価したものです。

42
Placebo-controlledtrial of tofacitinib monotherapy in rheumatoid arthritis.
Fleischmann R, etal; ORAL Solo Investigators
N Engl J Med. 2012Aug;367(6):495-507.
BACKGROUND:Tofacitinib (CP-690,550)は新しい経口Janus kinase阻害薬であり、RAのための分子標的の免疫促進剤+疾患修復療法として開発された。
METHODS: このプラセボ比較のパラレル・グループの6ヶ月間の第3相試験において、611例がtofacitinib 5mg12回、10mg12回、プラセボ3ヶ月後のtofacitinib 5mg12回、10mg12回に4:4:1:1に割り付けられた。3ヶ月後に評価されたprimary end pointsACR20%HAQ-DIスコア(0~3の範囲で高いほど高度の身体障害を表す)の変化、DAS28-4ESR(0~9.4の範囲で高いほど高活動性を表す)<2.6の割合。
RESULTS: 3ヶ月の時点でtofacitinib群はプラセボ群よりも高い割合でACR20を達成した (5mg59.8%10mg65.7% vs. プラセボ群26.7%, ともにP<0.001)。ベースラインからのHAQ-DIの改善はtofacitinib 5mg群、10mg群においてプラセボよりも高かった (-0.50 and -0.57points, vs. -0.19 points; P<0.001)DAS28-4(ESR)<2.6の割合はプラセボに比べtofacitinibで有意に高くはなかった (5.6% and 8.7% in the 5-mg and10-mg tofacitinib groups, respectively, and 4.4% with placebo; P=0.62 andP=0.10 for the two comparisons)。重症感染症tofacitinib投与中の6例に起きた。コモンな有害事象は頭痛と上気道感染。tofacitinibの治療はLDL-cholesterolの上昇と好中球数の減少に関連した。
CONCLUSIONS: 活動性RAの患者ではtofacitinib単剤はRAのサイン・症状の改善に関連し、身体機能に関連した。 (Funded by Pfizer;ORAL Solo ClinicalTrials.gov number, NCT00814307.).

(追記・まとめ)ORAL soloの対象はDMARD-IR;活動性RA (6/6/28 or CRP7);一つ以上のnonbiologic or biologic DMARD-IR、または副作用中止;DMARDを中止していること(tofacitinibAdd-onではなく単剤での評価;なのでSoloなのですね);投与量を変えない抗マラリア剤、PSL10mg以下は許可。

→3ヶ月後のACR205mg2回で59.8%vs26.7%HAQ-0.50 vs-0.19(P<0.001)DAS寛解5.6% cvs4.4% (NS)
 
43
Tofacitinib or adalimumab versus placebo in rheumatoid arthritis.
van Vollenhoven RF,et al; ORAL Standard Investigators
N Engl J Med. 2012Aug;367(6):508-19.

BACKGROUND:Tofacitinib (CP-690,550)RA治療のために調査された新しいJanus kinase阻害薬。

METHODS: 12ヶ月の第3相試験において、MTXstable doseを投与中の717例がtofacitinib 5 mg2回、10 mg2回、ADA 40 mg 2週間毎, or プラセボにランダム割り付けされた。3ヶ月後、ベースラインよりSJCTJC20%の減少を達成しなかったプラセボ群の患者は盲検を維持した状態でtofacitinib 5mg or10mg12回にスイッチされた; 6ヶ月後、プラセボ群の全ての患者が盲検下のままtofacitinibにスイッチした。3つのprimary outcome measure6ヶ月後のACR 20; HAQ-DIのベースラインから3ヶ月後の変化(0~3の範囲で高いほど高度の身体障害を表す)の変化、DAS28-4ESR(0~9.4の範囲で高いほど高活動性を表す)<2.6の割合。

RESULTS: 6ヶ月後、ACR 20を達成したのはtofacitinib 5 mg or10 mg (51.5% and 52.6%)を内服していた患者とADAを投与されていた患者において(47.2%)、プラセボ群と比較し(28.3%)高かった (P<0.001 for all comparisons).3ヶ月後のHAQ-DIスコアでもより大きな減少が診られ、6ヶ月後のDAS28-4[ESR]<2.6の割合もプラセボ群に比べ高かった。プラセボに比べtofacitinibにおいて有害事象は多かった。tofacitinib10mg群で肺結核2例発生した。tofacitinibLDL+HDL cholesterolの上昇と好中球の減少に関連した。

CONCLUSIONS: MTXを内服中のRA患者においてtofacitinibの効果はプラセボに比べ有意に優れておりADAよりも数的に同等であった

 (Funded by Pfizer; ORAL StandardClinicalTrials.gov number, NCT00853385.).

ORAL standardの対象はMTX-IR;活動性RA (6/6/28 or CRP7) ;MTX7.5-25mg/wに不十分な反応を示す患者です。そういうMTX-IRの患者にAdd-onの併用療法を評価した試験です。過去のBiologicsと同様に、MTX-IRを対象に介入するという点で、Standardな使い方を評価するための試験なのですね)。

6ヶ月後のACR205mg2回で51.5%ADA47.2%、プラセボ28.3% (P<0.001)ADAと同等。