<Scenario case>
77歳男性、RA、SDAI32(高活動性)
じん肺による低肺機能あり、MTXの投与を控えております。SSZ投与も効果不十分・・・
関節注射でしのいでおりましたが、腫脹関節は15個におよび、有効な抗リウマチ剤を考慮しなければなりません。
ゴリムマブ(GLM)について考慮しており、安全性について調べてみようと思いました。
(症例は架空です)
< 疑問、発生!>
MTX-naïveのRAにGLM単剤を使用する際の安全性の情報は?
<情報源は?>
二つのRCTを知っております。GO-MONOとGO-BEFOREです。
(GO-MONO; 24wks)
Ann Rheum Dis. 2013 Sep 1;72(9):1488-95.
Takeuchi T, et al
Objective
DMARDs投与にも関わらず活動性のある日本人RA患者におけるGLM単剤50mg、100mgの効果と安全性を評価すること。
Methods
計316例を4週間毎のプラセボの皮下注射(group 1)、GLM 50mg(group2)、GLM100mg(group 3)にランダムに割り当てられた;group 1はweek16にGLM50mgにクロスオーバーされた。Prmary end pointはweek14においてACR20を達成した患者の割合。ACR50、70も測定された。有害事象AEsが試験期間中モニターされた。
Results
・患者背景は群間で同様;平均年齢52歳、82.8%(252/308)が女性。
・Week 14のACR20改善率はgroup1 (20/105 (19.0%))に比較してgroups 2 (51/101 (50.5%) )and 3(60/102 (58.8%))において大きかった(p<0.0001 for both)。ACR50、70改善率についても同様。
・W16のプラセボのクロスオーバーののち、week24のACR改善率はGroup1と2の間で同等。
・W16までAEsを経験したのはgroup163.8%、group 2 62.4%、group 3 60.8%、重症のAEsは1.9%, 1.0% and 2.0%。W16の後、Group 3の1例に悪性腫瘍が報告された(乳癌)。感染症はもっとも多かったAEs。W24まで死亡例、結核はなかった。
Conclusions
Golimumabmonotherapy (50 and 100 mg)はDMARDに耐性の日本人の活動性RAにおいて有効であった。
(本文より)
Adverseevents プラセボ比較期間のW16まで、AEsはgroup 1の63.8、group 2の62.4%、group 3の60.8% (table 3)。ほとんどは軽症。もっとも多かったのが感染症 (group 1 (23.8%); group 2 (26.7%); group 3 (28.4%))。GLMで治療中の患者でもっとも多かったのは鼻咽頭炎(16.3%), 咽頭炎(3.4%)、腸炎(2.0%)。AEsのために治療が中止となったのはgroup 1の3例(2.9%) (帯状疱疹、非定型抗酸菌症、肝機能障害)、group 2の2例 (2.0%) (肝機能障害、白内障)、group3の1例 (1.0%) (一過性脳虚血発作)。W16までのSAEsはgroup 1で帯状疱疹、器質化肺炎(1例ずつ)、group 2の睾丸瘤 (n=1)、group3の蜂窩織炎と一過性脳虚血発作 (1例ずつ)。フォロー期間の長さによって評価すると、24週間までの重症感染症の頻度 (95% CI)はgroups 1, 2, 3において各々3.30 (0.08 to 18.38)、1.69 (0.04 to 9.40)、2.16 (0.05 to 12.01)。W16のプラセボ・クロスオーバーの後、AEsは24週までにgroup 1の31例 (33.7%)、group 2の34例(35.4%)、group 3の33例(33.0%)に起きた。感染症はこの時期においてもっとも多かった。プラセボ比較の時期と同様であった。W16以降、薬剤中止に至ったAEsはgroup2で卵巣腫瘍 (非悪性; n=1)、RA(n=1)、group 3で乳癌(n=1)。W16の後、SAEsはgroup 2で3例 (非悪性卵巣腫瘍、歯髄炎1例ずつ; 1人の患者における発作性頻拍とRA)、group 3で2例 (W20-24の間の乳癌、器質化肺炎、1例ずつ);この時期でgroup1ではSAEsはなかった。W16までの注射部位反応は全群で同等 (group 1, 7/105 (6.7%);group 2, 8/101 (7.9%); group 3, 8/102 (7.8%))。W16-24の間、注射部位反応はgroup 1で3.3% (3/92)、group2で6.3% (6/96)、group 3で5.0% (5/100)。すべての注射部位反応は軽症。W24までアナフィラキシー、血清病、死亡の報告はなし。W24まで結核はなし; しかしGroup1においてW16までに非定型抗酸菌症が1例あった。
Table 3
W0-24 | ||
G2 | G3 | |
G50mg | G100mg | |
n | 101 | 102 |
有害事象AEs | 72 (71.3) | 72 (70.6) |
重症AEs | 4 (4.0) | 4 (3.9) |
Aesで薬中止 | 4 (4.0) | 2 (2.0) |
感染症 | 33 (32.7) | 34 (33.3) |
重症感染症 | 1 (1.0) | 1 (1.0) |
肝機能障害 | 0 (0) | 4 (3.9) |
注射部位反応 | 12 (11.9) | 10 (9.8) |
悪性腫瘍 | 2 (2.0) | 1 (1.0) |
→GO-MONOは日本人を対象としておりますが、73.7%がMTX耐性のRAでした。Inclusion criteriaは20-75歳で、実際は51.6 (±11.9)歳。この患者さんの条件とは一致していませんが、日本人のGLM単剤のデータとして、参考にします。
→7割がMTX-IRの日本人RA患者、平均年齢51歳において、GLM100mgで治療された場合、24週間までの重症感染症は102人中1人。
(GO-BEFORE; 24wks)
ArthritisRheum. 2009 Aug;60(8):2272-83.
Emery P, et al.
OBJECTIVE:
MTX-naïveの活動性RAにおけるGMの安全性と効果を評価すること。
METHODS:
・MTX-naïveの活動性RA (n = 637)をplacebo +MTX (group 1), GLM 100mg+placebo (group 2), GLM 50 mg+MTX(group 3), or GLM 100 mg+MTX (group 4)にランダムに割り付けた。
・Primary end pointである24週時のACR50を満たす割合はgroup 3+4 (combined group)とgroup1との間で有意差があること、一対比較において有意差があることとした(group3 or group 4 versus group 1)。
RESULTS:
・24週時におけるACR50改善率のITT解析はcombined groupとgroup1との間で有意さを示さなかった (38.4% and 29.4%, respectively; P=0.053)。
・事後修正されたITT解析 (治療されなかった3例を除く)ではACR50改善率はcombnedとgroup1で有意差があった (38.5% versus 29.4%; P=0.049)。group1とgroup 3との間では有意差があったが (40.5%; P=0.038)、group1とgroup 4との間ではなかった (36.5%; P=0.177)。
・group2は24週後のACR50改善率においてgroup1に劣っていなかった (33.1%; 95%CI lower bound-5.2%; predefined delta value for noninferiority -10%)。
・重症のAEsはgroup1,2,3,4において各7%, 3%, 6%, 6%に起きた。
CONCLUSION:
Prmaryend pointは満たされなかったが、修正されたITTにおいてprimary end pointとその他のあらかじめ定められた有効性の指標ではGLM+MTXの有効性はMTX単独の有効性と比較し優れており、GLM単独の有効性は同等であった。MTX-naïve RAにおけるRAのサイン、症状を減らすことにおいて。予想していない安全性の懸念はなかった。
(本文より)
Adverse events.
全体として、groups1,2,3,4各において72.5% (116 of 160), 68.2%(107 of 157), 81.6% (129 of 158), 76.1% (121 of 159)がW24までに1つ以上のAEsを有した。GLM+MTX群において最も多かったのは吐き気、上気道炎、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇(Table4)。Group 3, 4の患者はgroup 1 or group 2と比較してより多くが皮下注・内服薬とも中止した (Table4)。
SAEsは各6.9% (11 of160), 3.2% (5 of 157), 6.3% (10 of 158), and 6.3% (10 of 159)に報告された。各のSAEは肺炎(G4の2例)、貧血(G2の2例)を除き1例ずつに起きた。G4のより多くの患者が重症感染症を起こした (7 of 159 [4.4%])。これに対してgroup 1 (3 of 160 [1.9%]), group 2 (2 of 157 [1.3%]), or group 3 (2of 158 [1.3%])。G3の64歳女性は8週目のGMを投与して33日後に結核性脊椎炎と診断された。その結果患者は治験薬を中止し、結核の治療と脊椎手術を受けた。この患者は研究に登録される前より腰痛と脊髄障害のX線所見を有していた。抗酸菌染色、培養、PCRによって診断が確かめられなかったが、手術で採取した組織は乾酪性肉芽腫を示した。
24週の間に2例が死亡した。G3の1例は夫のインスリンを大量に投与しDay113(最後のGM投与はDay84)に自殺した。G4の2例目はDay34、臀部の膿瘍の手術を行った後に心肺停止となった。悪性腫瘍は4例;G1とG3の2例は乳癌、G4の1例はホジキン型リンパ腫、G1の1例は口唇の基底細胞癌。
治験薬による注射部位反応はもっとも多かったのが紅斑でG1-4の各、1.9% (3 of 160), 10.8% (17 of 157),4.4% (7 of 158), and 8.8% (14 of 159)に起きた。注射部位反応で重症のものはなく、そのために治療を中止した事はなかった。アナフィラキシー、血清病はなかった。
Laboratoryvalues. 一般に血液検査、生化学においてGLMとplaceboとの間に差はなかったが(data not shown)、G1,3,4の少数はALT and/or AST上昇を1回以上の頻度で有した (Table 4)。ALTと総ビリルビン値は任意の患者において1回以上の頻度で顕著に異常となる唯一の生化学検査であった;各の異常はG3の1例、G4の1例で見られた。ALT and/or AST異常の発生頻度の上昇について潜在性結核の治療を受けた患者において受けなかった患者と比べ、いくらかの傾向が見られたが、これらの傾向は全ての群を通して一貫していなかった(Table 4)。GLMとイソニアジドの併用は重症のALT or AST異常を来すことを示唆するものではなかった (data notshown).
W24の時点で新たにANA陽性となった患者の割合はG3、4でG1、2と比べ高かった; group 3 (13 of 57 [22.8%]) andgroup 4 (12 of 60 [20.0%])、group 1(2 of 53 [3.8%]) andgroup 2 (7 of 49 [14.3%]) (Table 4)。しかし、これらに関して臨床的な意味はないようであった。ループス様症候群は起きなかった。W24の時点で新たに抗dsDNA抗体が陽性となったものはいずれの群でもいなかった。
Antibodiesto GLM. GLMに対する抗体はGLMを投与され適切な検体が採取できた患者の6.3% (20 of 315)に検出された。MTXなしでGLM100mgを投与されていた患者はMTXとともにGLM50mg、100mgを投与されていた患者に比べGLMに対する抗体の発生頻度が高いようだった;各14 of 104 [13.5%]、4 of 107 [3.7%]、2 of 104 [1.9%].
Table4. 24週間までの安全性の結果のサマリー
MTX+pl | G100+pl | M+G50 | M+G100 | |
副作用による治験薬中止 | 2 (1.3) | 1 (0.6) | 6 (3.8) | 7 (4.4) |
皮下注製剤の中止 | 3 (1.9) | 1 (0.6) | 6 (3.8) | 9 (5.7) |
内服薬の中止 | ||||
重症副作用 | 11 (6.9) | 5 (3.2) | 10 (6.3) | 10 (6.3) |
悪性腫瘍 | 2 (1.3) | 0 (0) | 1 (0.6) | 1 (0.6) |
感染症 | 52 (32.5) | 55 (35.0) | 54 (34.2) | 50 (31.4) |
重症感染症 | 3 (1.9) | 2 (1.3) | 2 (1.3) | 7 (4.4) |
注射部位反応 | 3 (1.9) | 17 (10.8) | 7 (4.4) | 14 (8.8) |
※Extended report
GO-BEFORE(P.Emery、52wks)・・Radiographic(SHS), HAQ
GO-BEFORE ・・post hoc analysis;重症例で解析
<Scenario caseの経過>
患者さんにGLMの説明を行った。
・有害事象として最も心配なのは肺炎などの感染症です。高齢の患者さんに用いた場合のデータはないのですが、過去の臨床試験で50歳前後のRA患者さんにGLMを用いた場合、重症感染症の頻度は半年で1%程度であったとする報告があります。
・高齢者の場合はそれより高いと考えられておいた方がよいでしょう。
ps;念のため、MTX-naiveのRCTがないかを確認しましたが、ありませんでした。
GO-FORWARD(Keystone、24wks)・・MTX-IRをMTX+pl、pl+GLM100、MTX+GLM50、MTX+100に割り付け。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19066176
GO-FORWARD(Keystone、1年後、2年後の結果)
GO-AFTER(Smolen、24wksと160wks)・・TNF阻害薬を経験したRAをplacebo, GLM50, GLM100を14週後のACR20で比較。