リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

爪は語る

爪の話を。
 
研修医レクチャーの小ネタです。
 
おおむね、記述はAm Fam Physicianのレビュー(AFP 2004)より主だった爪の所見を意訳しています。
 
画像はAFP2004にないものは、pubmedよりあさりました。引用も示します。
 
Clubbing(ばち状指)
爪甲近位の軟部組織の肥厚による爪近位部のスポンジ化。Schamrothサイン※が有効。
IBD、肺癌、アスベストーシス、慢性気管支炎、COPD、肝硬変、先天性心疾患、心内膜炎、動静脈瘻
 
 
 
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Schamroth sign
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Tierneys Best Pearls (ティアニー先生の診断入門)
COPDの患者でばち指が見られたら、胸部CTを撮りなさい。肺癌の可能性がある。
 
 
Beau’s line(ボーライン)
爪を横断する線状の溝。ほとんど全ての爪に同じ距離のところにできる。
爪の成長を障害する全身疾患でおきる。その他、外傷やレイノーなど
※坊主の散髪は10日に1回(爪の成長する速度=10日で1mm
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(AFP 2004)
 
 

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(化学療法後のBeaus’s lineQJM 2012)
 
 
Yellow nail(黄色爪)
爪の成長が緩徐なため積み重ねられながら伸びる。爪の辺縁は過剰に凸性となる。
リンパ浮腫、胸水、免疫不全、気管支拡張症、副鼻腔炎RA、ネフローゼ、甲状腺炎、結核、レイノー病
 
 
(気管支拡張症+リンパ浮腫副鼻腔炎InternMed 2015)
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Splinter hemorrhage(線状出血)
亜急性細菌性心内膜炎、SLERA抗リン脂質抗体症候群、消化性潰瘍、悪性腫瘍、経口避妊薬、妊娠、乾癬、外傷
 
 
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(EGPAにみられた線状出血;Intern Med2016)

 
Muehrcke’s lines(ミュルケライン)
爪半月と並行で爪を完全に横断する。爪床の血管の異常なので、爪の成長とともに移動しない。→低アルブミン血症
※爪の下がみえるけ?
 
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(転移性の肉腫;NEJM 2007)
本文より;Muehrcke’s linesは蛋白を産生できないほどの代謝性ストレスで生じる。この患者はMuehrcke's linesを呈して3ヶ月後に肉腫の進行のため死亡した。
 
 
 
Mees’ lines(ミーズライン)
横断性の白色帯で爪の成長に伴なって移動する。
ヒ素中毒、ホジキン、うっ血性心不全
※三重のとなりで起きたヒ素中毒
 
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(毒入りカレー事件;Br J Dermatol2003)