リウマチ膠原病のQ&A

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抗SRP抗体を有する患者の臨床的特徴

Clinical and histopathological features ofmyopathies in Japanese patients with anti-SRP autoantibodies
 
 
Mod Rheumatol. 2009;19(2):156-64.
Takada T, et al.



日本人の抗SRP抗体陽性の患者における筋症の臨床的、および組織学的特徴
Abstract
the signal recognition particle (SRP)に対する自己抗体に関連する臨床的・組織学的特徴を明らかにするため、私たちは日本人の患者23例について研究し、PM/DMおよびその他のCTD3500例において特異性を検討した。抗SRP抗体は免疫沈降法によってRNA・蛋白複合体の解析に基づいて決定された。ALPmyosin ATPase、修正ゴモリ・トリクロム染色を含む特殊染色によって病因的な解析が行われた。23例中21 (92%)が筋炎を有し、8(38%)ステロイド剤に加え、細胞障害性薬剤を要するか、IVIGを要した。4 (16%)RAを有し、そのうち2例は筋炎の所見はなかった。11例の筋生検について詳細に調査された。11例全例に筋繊維の壊死and/or変性を認めた。11例中6 (55%)ATPase染色でtype I fiber 優位。抗SRP抗体を有さない8例の筋炎のコントロールではtype I fiber 優位ではなかった。その他の神経因性の組織学的所見は抗SRP抗体の存在と関連性はなかった。これらの研究は抗SRP抗体はステロイド治療に抵抗性で組織学的に炎症を伴わない筋症ともっとも関連しやすいことを示唆する。
 
(本文より)
Demographic and clinical features ofpatients with anti-SRP antibodies
SRP抗体を有する日本人患者23例の臨床的特徴をTable 12にサマライズした。21/23 (91%)の患者が筋炎を有した; 19例がBohan and Peterの基準でdefinite、残り2 (patient 10, 14)probableを満たした;Bohanの分類によると14例がtype I (pure adult PM), 3例がtype II (pure adult DM), 2例がtype III (悪性腫瘍関連筋炎), 2例がtype IV (オーバーラップ筋炎)。筋炎の21例は筋力低下の発症時、17-87(平均± SD, 51.6 ± 14.9)であり、15例が女性であった。3例がheliotrope rash and/ or Gottron’s signを含む典型的なDMの皮疹を有した。PM2例が後に悪性腫瘍(咽頭癌、肺癌)を発症した。各、PM発症10年後、7年後であった。抗SRP抗体を有する患者23例のうち4(17%)5 (22%)1 (4%)が各関節炎、ILDレイノー現象を有した。2例はRAとのオーバーラップ症候群。21例中3 (14%)が嚥下障害を有した。嚥下障害は筋炎や抗SRP抗体の重症度・予後と関連すると報告されている。臨床的に筋力低下があれば常に対称性で近位筋優位。20例中
12 (60%)が初診時に最も弱い筋肉でMMT3以下の重症の筋力低下を有した。筋力低下は発症から身体機能障害に関連する最大の筋力低下に至るまで急速に進行した。20例の筋力低下の発症の季節は春が7例、夏が4例、秋が5例、冬が4例。抗SRP抗体を有する患者はPM1例とRA1例を除く全例がステロイドで治療された。ほとんどは部分的に反応したが、持続的な筋力低下と比較的ステロイドには抵抗性であった。長期のステロイド治療は糖尿病、博名症、骨粗鬆症、椎体骨折、精神病のような重症の副作用に至るケースが数例あった。12/19(63%)ステロイドを減量すると筋炎の再燃を来した。ステロイドに加え、筋炎の21例中8(38%)の患者がMTX+CZPAZPCYAIVIGのような免疫抑制療法を要した。抗SRP抗体を有する難治性筋炎の全ての患者において有効な免疫抑制剤はなかった。3例が死亡し、原因は73歳時の心不全 (patient 1)48歳時の心筋梗塞(patient 3), 83歳時の肺炎 (patient 11)。代表的な臨床経過をFig.2に示す。
 

Table 1

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Laboratory findings
SRP抗体を有する筋炎の患者では全例において血清CKが著名に上昇しており、1,3879,900 IU/l (平均± SD, 5016 ± 2452 IU/l)。筋電図所見は検査された全例において近位筋の筋性MUPと著名な自発的活動を含む筋原性変化を示した。ASTALTとも著名に上昇したが、CKの最大値が記録されたときAST/ALT1未満が13/18 (72%)にみられた (Table 2)。ほとんどの患者がHEp-2細胞を使った間接的免疫蛍光法において、びまん性の細胞質型の染色パターンを呈した。抗SRP抗体を有する23例の患者におけるその他の自己抗体は抗SSA抗体5 (Table 1)1例がSScに特異的にみられるTh/Toを有したが、その患者はSScの臨床所見を有さなかった。
 

Table 2
 

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Histopathological findings of musclebiopsies
SRP抗体を有する21例の筋炎患者の筋生検における筋の変化を診療録で確認された。そのなかで11例の筋生検において詳細に調査されており、Table 3にサマライズした。全例において初期の診断過程の間に筋生検が施行され、筋炎に一致する組織所見を示した。筋生検の標本は非常に様々な筋繊維のサイズにおける筋原性変化を示した。筋繊維束周囲の萎縮がみられたものはなかった。筋繊維の壊死(変性)は9/11 (82%)でみられた。筋繊維の変性は全ての生検組織でみられた。1例を除く全例において炎症性変化がみられなかったことは特筆すべきことであった。封入体を有する筋繊維を有したものはなかった。4(36%)ミトコンドリア障害を示唆するragged red fiberがみられた。神経原性変化は1例のみであった。抗SRP抗体を有する患者11例中6 (55%)type 1 fiber優位であったが、抗体を有さない8例は持っていなかったことは注目すべきことであった (55% vs. 0%, P = 0.04 by Fisher’s exact test) (Table 3).


Table 3
 
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