リウマチ膠原病のQ&A

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マルチターゲット療法(ループス腎炎)

Multitarget therapy for induction treatmentof lupus nephritis: a randomized trial.
Ann Intern Med. 2015 Jan 6;162(1):18-26. LiuZ, et al.
 
Abstract
Design: 24週間のOpen-labelの多施設RCT: 中国の26の腎センター
Patients: 18-65歳の生検で証明されたLN
Intervention: Tac 4 mg/dMMF1.0 g/d, vs IVCY 開始時0.75 g/m2BSA (0.5-1.0g/m2で調整)4週間毎を6ヶ月。両群ともメチルプレドニゾロン・パルス3日間、ついでPSN漸減で加療。
Measurements: Primary end point24週時のCRSecondary end pointsは全般改善率(CR+PR), 全般改善までの時間, および有害事象
Results:
24週後、MT(45.9%)において、IVCY(25.6%)よりも多くの患者がCRを達成した(difference, 20.3 % [95% CI, 10.0 to 30.6 %]; P < 0.001)
・全般改善率はMT群において高かった (83.5% vs. 63.0%; difference, 20.4 % [CI, 10.3 to 30.6 %];P<0.001)
・全般改善までの時間の中央値はMT群で短かった (difference, 4.1 weeks [CI, 7.9 to 2.1 weeks])
・副作用の頻度はMTIVCYで違いはなかった (50.3% [91 of 181] vs. 52.5% [95of 181]).
Limitation: 本研究は24週までのデータでしかない。
Conclusion: MTLN寛解導入においてIVCYと比較して高い効果を有した。
 
METHODS
Design Overview
本研究はMMF+TacMTIVCYLNの治療において比較した。患者と治療する医師は二つの治療が異なる投与法(経口vs静注)、Laboのモニタリング、薬剤の副作用を有するため、盲検化されなかった。研究プロトコールはClinicalTrials.govに登録された; 登録後のプロトコールの主な変化はwww .annals.orgにサマライズした。各地域の倫理委員会がこの研究を承認し、すべての患者が書面での同意書を提供した。Helsinki宣言、および“Guidelines for Good ClinicalPractice” International Conference on Harmonisation Tripartite Guideline(January 1997)に説明された主旨を遵守した。本試験の研究者はAppendix 1(available at www.annals.org)でわかる。
 
Setting and Participants
登録からさかのぼって6ヶ月以内に診断された、組織学的証明のあるLNを有する18-65歳の患者 (class III, IV, V, III+V, and IV+V LN according to ISN/RPS分類2003)で、SLEACR分類基準を満たす者が中国の26の腎センターより登録された (22)。患者は少なくとも1.5g/dの蛋白尿とCr3.0 mg/dL以下 (≤265.2 μmol/L)を有する必要があった。重要な除外基準は過去のMMFCYTac、高用量メチルプレドニゾン;現在の腎代替療法血漿交換、Randomization12週間以内のIVIG;肝機能障害・血糖値の上昇;腎組織のChronicity index>3inclusion+exclusion criteria、脱落基準の詳細はSupplementより入手できる。
 
Randomization and Interventions
センターで層別化されたrandomization listRundo International Pharmaceutical Research & Development(Shanghai) Co. Ltd.にてコンピューターによって造られた。連番が付いた封筒が調査者に提供され、割り付けグループはその封筒の中にあった。資格のある患者が書面のICを提出した後、封筒が開封されin sequence患者は無作為に1:1MT or IVCYに割り付けられた. 両群の患者はメチルプレドニゾロン・パルス療法 (IVMP0.5 g/d)3日間、ついで経口PSN (0.6mg/kg/d)を毎朝4週間投与された。PSN20 mg/dまでは2週間毎に5 mg/dずつ、10mg/dまでは2週間毎に2.5 mg/dずつ減量された。IVMP後、MT群はMMF (0.5 g12)Tac(2 mg12)内服した。IVCY群の患者はIVMP後、IVCY0.75 g/m2 BSAで開始され、0.5-1.0 g/m2BSA4週間毎に6回投与された。
 
Outcomes and Follow-up
Primary end pointは導入療法24週後のCR率。CRの定義は24時間蛋白尿≦0.4 g、尿沈渣での活動性の消失、血清Alb35 g/L (3.5 g/dL)、正常Cr値。Secondary endpointsは全般改善率 (CR+PR [PRの定義は蛋白尿の50%以上の改善+24時間蓄尿で尿蛋白<3.5 g/24h+血清Alb ≥30 g/L+正常Cr値またはベースラインから25%までの上昇]); 全般改善までの時間; 異なるLNの組織系におけるCR率と全般改善率; 蛋白尿、血清Alb、血清CreGFRSLEDAIの変化、C3C4の変化;抗dsDNAの陰性化。アウトカムは治療レジメンを知らされていない臨床エンドポイント委員会によって審査された。患者はweeks 24に評価され、以降24週まで4週間毎にフォローされた。受診毎に研究者は患者がSLEの活動性上昇を経験していないか、Crの二倍化がおきていないかを評価した。ベースラインの腎生検の組織と24週後の2回目の生検を中央で評価した。腎病理の病理医2名が独立して組織を分類し、病理学的変数をスコア化した (すなわち病理のactivity indexchronicity index)。医師と病理医の委員会は病理医の評価が異なった症例について議論し、審査した。試験薬のコンプライアンスは患者が実際内服した量を内服すべき量で割り算することで計算し、100%でかけ算をした。安全性の評価は病歴・身体所見、ラボ・データ、TacMMFの濃度と投与量、有害事象を評価した。
 
Statistical Analysis
この試験はMT24週後のCRをもたらす上でIVCYの標準治療に勝っていないという帰無仮説をテストするようデザインされた。出版されたデータをもとにIVCY導入療法による24週後のCR率は20%と見積もられた(4, 23, 24)MT群におけるCR率が15%増加することを見積もり、α値0.05、β値0.2を用いて、サンプルサイズ302例を必要とした。loss to follow-upを考慮して、私たちは362例をこの試験に登録することを計画した。効果と安全性の評価にはランダム割り付けされ、試験薬を1回でも投与された全ての患者を対象とした。カテゴリー変数(例えばCR、全般改善率、有害事象)はFisher exact testで解析した。連続変数(ラボ・データなど)はt test, Wilcoxon signed-rank test, またはWilcoxon rank-sum testで解析した。もしデータがゆがめられたら。CR、全般改善率および全般改善までの期間の中央値の累積確率のKaplan–Meier推定値が計算された;両群間の差はlog-ranktest (PROC LIFETEST)で比較された。全般改善の累積確率と全般改善までの時間の95%信頼区間bootstrap法で評価された。CRと全般改善率のためにデータはランダムに失われることが仮定された。全体の試験のレジメンを完了しなかった患者におけるデータの欠損を帰属させるためmultiple imputation(欠損値にもっともらしいデータを補完する方法)を用いた (25)。結果の脱落による可能性のある影響を評価するためn感度解析を行った。改善しなかった患者の解析はプロトコールに最初の解析としてあらかじめ記載されてあり、試験を完了しなかった全ての患者、改善のデータがわからない全ての患者を改善しなかったものと考慮した。さらに、事後のCR例の解析、縦断的データ解析、パターン混合モデル解析が行われた。frailtymodel をセンターの調整を伴うhazard比を推定するために用いた (26)。詳細な統計学的解析の付加的な事項はwww.annals.org Appendix 2に提供されている。統計解析はSAS software, version 9.2を用いて行った。プロットはSTSgraph in Stata software, version 9.0 (StataCorp)を用いて作成された。両群間の差は統計学的にthe two-sided P value<0.05のときに有意と決めた。.
 
Role of Funding Source
ファンドは研究デザイン、実施;データの収集・管理・解析・解釈;論文の準備・レビュー・承認においていかなる役割も有さなかった。
 
RESULTS
Patients
20094月より20116月の間、368例が登録され、2群のいずれかに無作為に割り付けられた。約半数が新規発症LNIVCY群の6例はrandomizationの後いかなる薬剤も投与されなかった。ベースラインの疾患と臨床背景の特徴はTable 1。両群26例、計52例は早期に研究を中止した(Figure 1)。これらの患者においてフォローアップの中央値 (25th and 75thpercentiles)MT11.9 (4.6 and 16.3)週間、IVCY6.6 (2.6 and 12.7)週間。2群いずれも155例が24週の導入療法を完了した;MTX+CZP群群とIVCY群は各3880回の受診なしがあった。
 
Treatments
MT群はMMFTacを初期量、各1g/d4mg/d内服した。投与量は血中濃度と副作用に沿って調整された。治験薬の平均血中濃度は研究の間安定していた (Appendix Table 1)PSN量は漸減され、両群とも同様にまで減量された。MT群では95%MMF+Tacを継続し、IVCY群では92%であった。MT4例、IVCY5例がプロトコール違反のため研究から除外された。
 
Efficacy
24週時CRを達成したのはMT群でIVCY群よりも有意に多かった (45.9% vs. 25.6%; Δ=20.3 % [CI, 10.0 to30.6 %]; P< 0.001) (Figure 2; Appendix Table 2, available at www.annals.org). 累積CR達成率もMTで高かった (45.8% [CI, 38.5% to 53.8%]) than the IVCY group (26.8% [CI, 20.6%to 34.4%]) (Δ=19.0% [CI, 9.4 to 29.5%]; HR=2.03 [CI,1.39 to 2.97]; P < 0.001). 失われたデータに関する仮定の効果を評価するための感度分析を行ったところCR発生率について同じ結果であった (Appendix Table 3,available at www.annals .org)
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24週時の全般改善率(CR+PR)MT83.5%IVCY63.0% (=20.4%[CI, 10.3 to 30.6 %]; P<0.001) (Appendix Table 4, availableat www.annals.org). 累積全般改善率はMT (85.0% [CI, 79.1% to 89.9%])において、IVCY群よりも高かった(68.6% [CI, 61.3% to 75.6%]) (=16.4%[CI, 7.0 to 26.0%]; HR, 1.72 [CI, 1.34 to 2.21]; P<0.001)(Figure 3)
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全般改善までの期間の中央値はMT8.9 (CI, 7.7 to 9.9)IVCY13.0 (CI, 11.3 to 16.1) (Δ=4.1 [CI, 7.9 to 2.1])LN- IV型におけるCR率はMT群でIVCY群よりも高く(51.5% vs. 29.9%; Δ=21.6% [CI, 5.7 to37.6%]), LN-V(33.1% vs. 7.8%; Δ=25.3% [CI, 6.2 to 44.4%])LN-IV+V (45.2% vs. 26.5%; Δ=18.7% [CI, 0.5 to37.8%]) (Figure 2; Appendix Table 2).
寛解導入療法後、MT群はIVCY群に比べて尿蛋白、血清Albのより大きな変化を有した (尿蛋白変化, 3.38 [SD, 2.77] vs. 2.68 [SD, 2.69]g/24 hours; Δ=0.70 [CI, 1.31 to 0.09] g/24 hours; P=0.025; 血清Alb 15.15 [SD, 7.11] vs. 13.51 [SD,6.84] g/L, Δ=1.63 [CI, 0.07 to 3.19] g/L; P=0.040). 両群とも血清Cr変化に関してわずかに腎機能の改善を認めた (6.33 [SD, 26.39] vs.9.92 [SD, 24.68] μmol/L; Δ=3.59 [CI, 2.12 to9.30] μmol/L; P = 0.22). MT群はIVCY群よりも高いSLE-DAI scoreの変化を有した (11.01 [SD,6.07] vs 8.55 [SD, 5.05]; Δ=2.46 [CI, 3.77 to1.15]; P<0.001)。治療後のC3の改善も大きかった (0.38 [SD, 0.30] g/L vs 0.31 [SD, 0.25] g/L; Δ=0.08 [CI, 0.01 to 0.14] g/L; P=0.022) (Appendix Table 5, availableat www.annals.org).


 
Repeated Renal Biopsy
33例が治療後の書面での同意のもと繰り返しの腎生検を受けた。2回目の腎生検は両群とも著名な病理学的活動性の減少を示したが、MT群において数的により顕著な変化であった(Appendix Table 6 and the Appendix Figure, available atwww.annals.org). Chronicity indexは両群間で有意差はなかった。


Adverse Events

両群は有害事象AEs、重症AEsの発生率において同等であった (AEs 50.3% [91 of 181] vs.52.5% [95 of 181]; serious AEs: 7.2% [13 of 181] vs. 2.8% [5 of 181])MT群においてIVCY群よりも多くの患者がAEsのため脱落した (5.5% vs 1.7%, P= 0.086) (Table 2)Serious AEsの患者をフォローした;全ての状況において患者の症状は薬剤中止後・治療によって改善した。両群とも死亡はなし。

上部GI症状の発生率 (3.9% [7 of181] vs. 20.4% [37 of 181]; P<0.001)、白血球減少 (0.6% [1 of181] vs. 6.6% [12 of 181]; P= 0.003)MTX+CZP群でIVCY群よりも低かったが、振戦の頻度は高かった (4.4% [8 of 181] vs.0.6% [1 of 181], respectively; P=0.037) (Table 2).
 
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ps

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