リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ループス腎炎の管理においてよくある10の誤り

Ten common mistakes in the management oflupus nephritis.
Bose B, Silverman ED, Bargman JM.
Am J Kidney Dis. 2014 Apr;63(4):667-76.
 
Ten Common Mistakesin the Management of Lupus Nephritis
1. Assuming thatintravenous cyclophosphamide is the gold-standard induction agent for lupus nephritis
IVCYLNのゴールドスタンダードだと思っている
 
2. Improper dosingof corticosteroids
ステロイドの不適切な投与量
 
3. Not usingantimalarial agents routinely
マラリア薬をルーチンに使用していない
 
4. Using urinarysediment for response criteria
尿沈渣を反応の基準に用いる
 
5. Not scaling theintensity of immunosuppression to the different classes of lupus nephritis,especially class V membranous lupus
LNの異なる型に応じて免疫抑制の治療の強さを見積もることをしていない。とくにV型。
 
6. Missingnonadherence to therapy as a cause of “treatment failure”
 
治療失敗の原因としてnonadherenceを見逃している
 
7. Not reducing orminimizing immunosuppressive exposure in patients with advanced kidney disease
進行した腎機能障害の患者において免疫抑制剤の曝露を減らしたり最小限にしない
 
8. Forgetting tomonitor side effects of immunosuppression and to use prophylaxis
免疫抑制の副作用をモニターすることを忘れ、予防投薬を忘れること
 
9. Performing abiopsy on the kidney, especially in a highrisk patient, when it will not affecttherapy
治療に影響しないにもかかわらず、ハイリスクの患者に腎生検を行う
 
10. Neglecting toaddress pregnancy
妊娠の問題に取り組むことを怠る
 
リウマトロジストは2,3,4510に興味があったので読んでみました。
 
2. Improper dosingof corticosteroids
ステロイドの不適切な投与量

The National KidneyFoundation’s KDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcomes) とその他のガイドライン (ACR and EULAR/EDTA)はプレドニゾンの初期量として1 mg/kg6-12ヶ月をかけた緩徐な減量を推奨している。ガイドラインは維持療法として少量プレドニゾン (PSN10 mg/d)を勧め、再発例には最初の寛解導入に有効であった投与量を勧めている。経口ステロイドの量と期間についてはRCTで評価されたものではないが、これらの現在の推奨は寛解の導入・維持に有効であるようにみえる。
しかし、ほとんどの臨床医が二次的な薬剤により注目して、私たちの印象では多くの患者が少なめのPSNで治療され早期に減量中止されている。これはPSNの多くの副作用への懸念から来るものである。PSNの急激な減量and/or中止は患者を再発させやすくしている。寛解を維持するために二次的な薬剤を使用していても、より長期の、あるいは生涯の低用量PSNを要する患者もいる。
同様に難治性のLNの患者ではPSNの投与量よりむしろ二次的な薬剤がより注目されている。二次的な薬剤を変更しても難治性の経過が続く患者もいる。これらの患者はPSNの投与量を増やせば利益があるかもしれない。
 
  1. Not usingantimalarial agents routinely
    マラリア薬をルーチンに使用していない
     
    HCQのような抗マラリア薬はSLEの粘膜皮膚、筋骨格、漿膜炎、全身症状を治療するために使われてきた。RCTとpost hoc解析でダメージの蓄積を減らし、生存を改善し、再燃を減らすことが示されている。腎臓のアウトカムを改善することも示されている。MMFで治療された膜性腎症の患者においてHCQとの併用により寛解の確率を高め、LN発症前に用いられれば腎機能悪化の確率を低くする。確立されたLNにおいて腎臓のダメージの発生を遅らせ、妊娠中も安全に使用できる。
    これらのエビデンスにもかかわらずSLE患者における抗マラリア薬の役割は腎臓内科では歓迎されていない。抗マラリア薬を投与される患者の確率はリウマトロジストに比べネフロロジストが最初の主治医であればかなり減少する(OR, 0.51; 95%CI, 0.31-0.84)。たしかに腎臓内科のコミュニティでは二番手の薬剤についてdiscussionはたくさんあったが、長期的なステロイドや抗マラリア薬を含む補助的な治療には重視されてこなかった.
  2.  

 

 
4. Using urinarysediment for response criteria
尿沈渣を反応の基準に用いる
 
ACRが招集したLNのアウトカムマーカーを調査する委員は反応を評価するために尿沈渣を使った推奨を行った。委員会によると改善とは活動性の尿沈渣が非活動性になることと定義した (eg, RBC 5以下,WBC 5以下,AND RBCWBC円柱がないこと)。彼らは非活動性の尿沈渣を有した患者において活動性の尿沈渣を認めれば悪化と定義した。委員会は活動性尿沈渣をRBC>5, WBC>5, and/or 細胞性円柱が過去にはなかったのに出現することと定義した。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16453282
しかし、実際の医療現場では観察される細胞や円柱の定量は遠心時間に影響されうる。遠心分離管の底の沈殿物をいかに精力的に上清で再混濁したかにも影響されうる。私たちはメサンギウム増殖のようなより良いタイプ(class II nephritis)でもRBCRBC円柱円柱が尿中に検出されることがあることを知っている。これらの病変は免疫抑制療法を必要としない。このように尿沈査を反応基準に用いることはmisleadingになりえ、不必要な細胞障害性の薬剤の使用に至る。私たちの経験ではこれはリウマトロジストよりもネフロロジストでよく認識されている。しかし、残念なことにループスにおける腎の反応基準を作成したガイドラインの委員会はネフロロジストが少なかった。
 
5. Not scaling theintensity of immunosuppression to the different classes of lupus nephritis,especially class V membranous lupus
LNの異なる型に応じて免疫抑制の治療の強さを見積もることをしていない。とくにV型。
 
膜性ループス腎炎 (MLN)LNの約10%-20%を占める。腎機能低下のリスクは管内増殖のタイプほど高くはないが、MLN20%までの患者が10年以内に透析や腎移植を要する。MLN20年後の腎生存率は50%に過ぎないが、最近の研究では15年で80%であった。さらにMLN血栓塞栓症のリスクはかなりのものである。血栓性のイベントは抗リン脂質抗体とネフローゼに関連する。高用量の隔日ステロイドが第一選択として広く用いられている。しかし、この治療レジメンは特発性膜性腎症の研究に由来するものであり、MLNで有効であるというエビデンスはほとんどない。またそのことは連日投与が無効であることを意味するものではない。小さなRCT (42-patient)において補助的な免疫抑制療法がPSN単独と比べられた。補助的なレジメンは11ヶ月のcyclosporine、隔月のIV cyclophosphamide 6コース; コントロール群はPSN単独の隔日投与であった。その研究はcyclosporine or IVCYを含むレジメンがいずれもPSN単独に比べMLN患者における蛋白尿の寛解導入において有効であるという結果であった。1年後、蛋白用の寛解の累積確率はPSN27%(4/15), IVCY60% (9/15), cyclosporine83% (10/12)PSN or cyclosporineに反応しなかったかcyclosporine中止後に再燃した10例中8例が IVCYにて寛解を達成した。
カルシニュリン阻害薬の抗蛋白尿作用は中止後に消えることはよく知られている。前述の研究においてcyclosporine11ヶ月投与された。そのためcyclosporine群で1年後の再燃が多かったことは驚くことではない。さらにこの研究でステロイド単独が効果がないことが広く認識されているが、そのレジメンは隔日投与である。私たちは多くのMLN患者が控えめな連日投与 (0.5-mg/kg)寛解導入されることを観察している。さらに毒性の強い治療法を必要とせず。

 

class V MLNにおける最近の二つの大規模な多施設RCTにおけるpooled analysis寛解導入療法としてのMMFIVCY24週で比較した。両群とも高用量のPSNを投与された。両群とも尿蛋白の改善とCreatinineの安定化を示した。これに基づきMMFclass V MLN寛解導入においてIVCYと同等と結論付けられた。しかし、寛解は高用量のステロイドのため達成でき、secondagentの効果を消してしまったことが想像できる。著者らはあるsecond agentがもうひとつと同等と結論付けたが、単にステロイドによって寛解がもたらされただけかもしれない。
しかし、ネフローゼレンジの蛋白尿を有するclass V LN24の研究のメタ解析は免疫抑制剤PSNへの追加はPSN単独とくらべ有意に高い完全・部分寛解率に関連することを示した。しかし、AZP, MMF, cyclophosphamide, cyclosporineの間で統計学的な有意な差はない。http://jim.bmj.com/content/59/2/246
Class I+IILNはわずかな異常と良好な腎機能のアウトカムを有するため、それだけで免疫抑制療法の適応になるべきではない。同様にburnt-outしたclass IVLNも血圧コントロールと進行抑制のためのその他の方法にフォーカスをあて、CKD患者と同様に管理されるべきである。
 
10. Neglecting toaddress pregnancy
妊娠の問題に取り組むことを怠る
 
90%lupus患者が女性である。いったんlupusの診断がつくと妊娠に関して多くの懸念事項がある。これらの患者に妊娠のアドバイスをすること、妊娠期間中の患者を管理することはchallengingである。ハイリスク妊娠の産科医とループスの妊娠患者の管理に経験のあるリウマトロジストが協力することが大切である。
活動性ループスの多くの患者がこの時期の妊娠が母体と胎児において危険であることを理解していない。ループスの再燃や活動性の持続する期間は強く否認をカウンセリングすることは患者のケアをする医師の責任である。繰り返し避妊について実践的なアドバイスを行うべきである。患者はエストロゲンを含む避妊用ピルを使用する前にループスアンチコアグラントを測定されるべきである。なぜならこの組み合わせは血栓症のリスクが高いため。
lupusの多くの患者が成功的な妊娠をすることができる。しかし、lupusの患者は一般人口と比べ妊娠合併症を起こしやすい。これらの疾患は患者が妊娠する前に寛解していなければならない。一般的な推奨はループスの疾患活動性、特に腎炎が完全にコントロールされた後少なくとも6ヶ月は避妊することとされる。http://refhub.elsevier.com/S0272-6386(13)01456-X/sref61
患者には疾患がコントロールされていない時期やMMFのような催奇形性の薬剤を内服している間には適切な避妊のアドバイスをするべし。MMFazathioprineにスイッチすることは前もって行うべきであり、それから患者がスイッチ後も安定し続けている場合に限って妊娠が承認されるべきである。患者はACE阻害薬やARBのような妊娠中に安全でない薬を中止すべきである。ステロイドHCQAZPCyclosporineは妊娠中に安全に使用でき、それらの使用は妊娠中の再燃のリスクと天秤にかけられるべきだ。HCQを妊娠中に継続することは中止後のリスクがあるため推奨される。
患者には死産、胎児消失、子宮内胎児発育遅延、早産のリスクがあることについてカウンセリングを受ける必要がある。出産可能な年齢のlupusの女性は抗リン脂質抗体のスクリーニングも受けるべきだ。胎児消失に関連するため。私たちはこれらの患者をSLEのハイリスク妊娠を管理する専門医に紹介することを勧める。
 

ps

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