リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

CYパルスは低用量で十分(Euro-lupus);ループス腎炎、SLE

大切な論文をまとめるのを忘れていました。
 
Euro-lupusです。
 
UptodateTherapy of diffuse or focal proliferative lupus nephritisLower-dose regimen (Euro-Lupus)で紹介されているものです。
 
ご存じ、エンドキサンパルス療法の有効性がNIHによって報告され、NIHプロトコールとして世界中に浸透しております。
 
NIHプロトコールではBSA 1.5の人なら750mg/body/月から始め、WBCを見ながら漸増し1500mg/body/月まで増量されます。
 
しかし、日本では当初よりこの通りに投与する施設は少なかったのではないでしょうか。
 
中庸的に、500~750mg/bodyで投与する施設が多かったように思います。
 
2002年、ヨーロッパよりLow doseのエンドキサンパルス療法(2週間毎に6回)を正当化する報告がでました。
 
気づけば、10年後までExtended reportが出ていたのですね。
 
日本では2週間毎でやっている施設は少なかったように思います。
 
Low doseで投与するなら短期間(2週間毎)で繰り返した方が良いと思います。
 
Abstractだけでもまとめておきます。
 
 
3年半)
Immunosuppressive therapy in lupus nephritis: the Euro-Lupus Nephritis Trial, a randomized trial of low-dose versus high-dose intravenous cyclophosphamide.
Arthritis Rheum. 2002 Aug;46(8):2121-31.
 
Abstract
OBJECTIVE:
糸球体腎炎はSLEの重症病態であり、通常シクロフォスファミド静注の長期のコースで治療される。このレジメンの副作用を考慮し、私たちは寛解導入療法として投与され、アザチオプリン(AZA)を維持療法で用いた低用量IV CYCのコースの効果と副作用を評価した。
 
METHODS:
この多施設前向き臨床試験(the Euro-Lupus Nephritis Trial [ELNT])において増殖性糸球体腎炎のSLE 90例を高用量 IV CYCレジメン (毎月6 パルスと3ヶ月毎2パルス; 用量を白血球の最低値に応じ増量)あるいは低用量IV CYCレジメン (500 mg固定の隔週の6パルス)に振り分けた。いずれもAZAを維持療法とした。ITT解析を行った。
 
RESULTS:
フォロー期間の中央値は低用量41.3ヶ月、高用量41ヶ月。低用量の16%、高用量の20%が治療失敗を経験した
 (Kaplan-Meier解析で有意でない)。血清クレアチニンアルブミンC324時間尿蛋白、疾患活動性スコアは両群とも最初の1年間有意に改善した。腎炎の寛解は低用量で71%、高用量で54% (有意差なし)。腎炎の再燃は低用量の27%、高用量の29%。重症感染症は高用量で2倍多かったが、有意差はなかった。
 
CONCLUSION:
ELNTの結果はヨーロッパの増殖性ループス腎炎を有するSLE患者は低用量IV CYCレジメンの寛解導入療法とAZAによる維持療法によって高用量レジメンで得られた結果と同様の臨床的な結果が得られることを示唆した。
 
 
イメージ 1
 
腎臓の寛解は以下で定義;尿沈渣でRBC<10/hpfAND 24時間蓄尿<1gAND Crの二倍化がないこと
 
(尿蛋白はかなり甘めですね・・・リウマトロジスト)

6年)
Early response to immunosuppressive therapy predicts good renal outcome in lupus nephritis: lessons from long-term followup of patients in the Euro-Lupus Nephritis Trial.
Arthritis Rheum. 2004 Dec;50(12):3934-40.
 
Abstract
OBJECTIVE:
the Euro-Lupus Nephritis Trial (ELNT)において、90例のループス腎炎が高用量IV CYCレジメン(HD; 投与量をエスカレートしていく毎月6パルス+3ヶ月毎2パルス)、または低用量IV CYCレジメン (LD; 2週間毎の6パルス)に割りつけられ、ともにAZAによって維持された。フォロー期間の中央値41ヶ月において二つのレジメンにおいて効果に差は診られなかった。この度の解析はフォローを延長し、予後を規定する因子を特定するため行われた。
 
METHODS:
90例全例の腎機能をLost to followup5例を除き3ヶ月毎に前向きに評価した。生存曲線をKaplan-Meier法を用いて行った。
 
RESULTS:
中央値73ヶ月のフォロー後、末期腎不全、Crの二倍化の累積確率においてLDHDの間に有意差はなかった。長期のフォローにおいて18例(LD8例、HD10例)が永続的な腎機能障害となり、腎機能の長期予後不良に分類した。多変量解析を用いて、6ヶ月における治療への早期の反応 (クレアチニンの低下と蛋白尿<1 g/24時間で定義)が長期における良い腎機能の最も良い予測因子であることを示した。
 
CONCLUSION:
ELNTの患者の長期フォローにおいて、ループス腎炎ではAZA維持の低用量IVCYCのレジメンによる寛解導入療法は高用量レジメンと同様の臨床効果を達成した。早期の治療への反応が腎の長期間の良いアウトカムを予測した。
 
 
イメージ 2
イメージ 3
 
※治療6ヶ月後の24時間蛋白尿で50%以上、75%以上の蛋白尿減少があった患者はない患者と比べ、中央値約6年において長期の腎臓の良いアウトカムが倍近く良かった。
 

 

10年)
Ann Rheum Dis. 2010 Jan;69(1):61-4.
The 10-year follow-up data of the Euro-Lupus Nephritis Trial comparing low-dose and high-dose intravenous cyclophosphamide.
 
Abstract
OBJECTIVE:
AZAを維持療法としたLow dose IV CYHigh dose IV CYを比較したELNTのフォローをアップデートすること
 
PATIENTS AND METHODS:
ELNTにランダマイズされた90例(ただし、Lost to follow-up6例を除く)において10年間で得られた生存と腎機能に関するデータを前向きに集める。
 
RESULTS:
・死亡、持続するCrの二倍化、末期腎不全の率はLDHD群で差はなかった。
死亡5/44 (11%) vs 2/46 (4%)Cr二倍化6/44 (14%) vs 5/46 (11%)、末期腎不全2/44 (5%) vs 4/46 (9%)
・最後のフォロー時における平均血清Cr24時間の尿蛋白、ダメージスコアにおいても差なし。
・両群におけるほとんどの患者がいまだステロイド、その他の免疫抑制剤、降圧剤で治療されていた。
・最初の免疫抑制療法に対する早期の蛋白尿の低下が10年間のフォローにおける良いアウトカムを予測する価値があることが確かめられた。
 
CONCLUSION:
AZAフォローのLD IVCYCレジメン、the "Euro-Lupus regimen"は長期間において良い臨床効果をえたことが確かめられた。
 
※この10年後の報告はまだ有料でした。
 

 

ps

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