リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ループス腎炎の寛解導入におけるタクロリムス vs ミコフェノール酸モフェチル ② - Results -

Hong Kong (Dr. Mok) で行われたMMFとTACの非劣性試験の結果です。

※Methodは①へ飛んでください。

RESULTS
Study population
2005年から2012年の間、活動性LNを有する中国人150例が登録され、Randomiseされた (MMF 76例、TAC 74; 女性92%、平均年齢35.5±12.8)1例を除き6ヶ月の寛解導入期を完遂した。ベースラインで100 (67%)CrCl <90 mL/min64(43%)がネフローゼを有した。LN組織分類は
IVG±V (33%),
IVS±V (13%),
III±V (36%),
pure V (19%)
登録された患者の臨床・腎パラメーターは二群間で同等 (table 1)MMFに割り付けられた患者のうち58(76%)2 g/day, 7(9%)2.5 g/day11(14%)がが3 g/dayを投与された。TACで治療された患者のうち達成された平均トラフは7.8±3.9 ng/mL (median 7.0)
 
6ヶ月後の腎の反応とSLEの疾患活動性の変化
尿蛋白/Cr, Alb, lupus serology (C3,anti-dsDNA titre), 尿沈渣, 腎・腎外のSELENA-SLEDAIスコア、脂質のプロファイルが両群で見られた (p<0.001 in all)6ヶ月後、MMFTACの有意な差はみられなかった(table2)TAC で治療された患者にCrClの有意な変化は見られなかったが(p=0.78)MMFで治療された患者はCrClの有意な改善を認めた (p<0.001)
Table 36ヶ月の時点における腎の反応の率を示す。CRMMF群で59%TAC群で62% (difference 3% (95% CI −12% to 18%))ACR腎改善基準を用いた場合、MMF群の11%TAC群の14%CRを達成した (difference 3% (−8% to 14%); p=0.59)TAC群では平均TACレベルはCRを達成した患者で7.86±4.3, PR7.60±3.2NR8.53±3.9 ng/mLTACのレベルとベースラインと比べた6ヶ月後の尿蛋白/Crの改善との関連は見られなかった (ρ=−0.14, p=0.25)

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Subgroup data on pure MLN
Table 4pure MLNの患者における最初の6ヶ月のuP/Cr and CrClの変化を示す。uP/ Crの改善はMMF群よりもTAC群で明らかであった。TAC群においてMMFに比べより多くの患者がCR or PRを達成した (100% vs 75%; p=0.09)1/4MMFNRであったが、TACで治療された患者ではNRはいなかった。

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最初の6ヶ月における副作用
Table 5は最初の6ヶ月で私たちの患者が経験した副作用をサマライズする。主要な感染症MMF7 (9.2%)TAC4 (5.4%) (p=0.53)MMFで一例死亡(難治性敗血症)。帯状疱疹感染はTACよりMMFで有意に多かった (18% vs 3%; p=0.003)。下痢はMMF群でよく報告され、脱毛、糖尿病、こむら返り、振戦のような神経学的症状はTACで多かった。可逆性の30%以上のSCr上昇はTACでは除外された。死亡した1例以外にAEsで脱落した患者はいなかった。

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Relapse of LN and renal function decline
AZAの維持療法はMMF群の59 (78%) (dose 82.5±24 mg/day)TAC群の60 (81%) (dose 86.5±21mg/day; p=0.32)に投与された。その他の患者は代替の免疫抑制レジメン(高用量PSL+CYC(n=20)、低容量MMF+TAC (n=5)、クロスオーバーのTAC(N=4)、クロスオーバーのMMF(n=2))で再度寛解導入治療を受けた。寛解導入療法に今ひとつの反応であった患者にぉいてサルベージ治療の必要性は両群で同等。60.8±26ヶ月のフォロー中、蛋白尿の再発、ネフローゼレベルの再発はMMF群で各24%18%に、 TAC群で35%27%に起きた。MMFで治療されAZAで維持された患者の腎の再発の累積リスクは1年で8%3年で28%5年で38% TACで治療されAZAで導入された場合、各9%33%54% (p=0.13; figure 1A)寛解導入療法でCRを達成した患者において最初の腎の再発までの平均時間はMMF群で28.9±17ヶ月、TAC群で30.1 ±18ヶ月(difference 1.3 (−13.7 to 11.2) months)MMF群の6例が死亡し (難治性敗血症2, 自殺1, 1例、心臓の突然死2)TAC群の5例が死亡した(難治性敗血症3, 出血性の脳卒中1例、肺胞出血1)5年次におけるCrCl≥30%の低下、CKD stage4/5への進展、死亡の複合アウトカム累積発生率MMF群で21%TAC群で22% (p=0.35; figure 1B)

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<批判的吟味します>
SPELLのはじめてシートに沿って、批判的吟味を行います。
 
論文のPICO
P:成人の活動性LN (classIII/IV/V)
IPSL (0.6 mg/kg/6週間後に漸減)TAC併用 (0.060.1 mg/kg/) 6ヶ月
CPSL (0.6 mg/kg/6週間後に漸減)MMF併用 (23 g/day)6ヶ月
OThe primary outcome6ヶ月の時点における腎CRの割合。Secondary outcomesは、
(1)6ヶ月の時点におけるpartialresponse (PR)non-response (NR)の割合
(2)維持療法の間の腎再燃率
(3)腎機能悪化の複合アウトカム (CrCl≥30%の悪化、あるいはCKD stage4/5への進展(ie, CrCl <30 mL/min)、または経過中の死亡。
 
・ランダム化は中央割。Open label(隠蔽化なし)。
Baselineは同等とは言えません。抗dsDNA抗体価がMMF193 < TAC226と有意差(p=0.05)があり、SLEDAIMMF7.9>TAC6.6と有意差がありました(p=0.04)。Renal SLEDAI8.8 vs 8.6 (p=0.89)と同等でしたが。
Table1Table2を眺めてみると、結果に影響を与えそうな因子は十分検討されていると思いました。ACEI,ARBを許容されているかどうかが気になりましたが、新規・増量は禁止と記載されておりました。
ITT解析で、追跡率=149/150=99.3%と十分です(脱落は1例)。盲検化されている人はいません。
・症例数の計算はSample size calculationに記載があります。one-sided α level of 0.025を用いて、TACMMFに対する非劣性が80%のパワーで証明されるためには140例が必要との記載がありましたが、それを超える150例が登録されました。
・非劣勢は証明され、結果に有意差ありませんでした。
Pure MLN(純粋な膜性ループス腎症)では、6ヶ月後、CR or PRを達成したのはTAC 16/16 (100%)の方がMMF 9/12 (75%)よりも多かっです (p=0.09)。逆に、CrClMMFで有意に高値でした (90.8 vs 102, p=0.04)。ただし、膜性腎症における差を検出するためにSample calculationはされておりませんし、nは極めて少数です。

 
<リウマトロジストのコメント>
欧米のガイドラインでは増殖だけでなく、膜型でもMMF or IVCYを勧めています。
 
この研究は膜型には導入療法としてTacMMFよりも良いかもしれないことを示した最初の研究です。
 
LN全体では再発率に差がつきそうでつきませんでした。

サブグループ解析、すなわち増殖性腎炎、膜型に分けた場合では再発率に違いがあったのでしょうか。
 
 
(20210228追記)↓Extended reportが報告されました。

 

ps

↓SLEの緊急病態

 

 

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