リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

抗NXP2抗体

Clinical Scenario
70歳男性、DM患者
 
発症時のmalignancyのスクリーニングは陰性でした。
 
PSL1mg/kgAZP寛解し、1年後に薬を中止しましたが、1ヶ月くらいで、皮膚+筋力低下で再発をしました。
 
再度スクリーニングでX線をとってみると、肺陰影を認め、MesotheliomaStage4でした。
 
金沢大学に依頼し、MSAを調べてもらったところ、抗MJ抗体(対応抗原はNXP2)が陽性でした。

(症例は架空です)

 
 
< 疑問、発生!>
NXP2抗体について調べよう。
 
 
Pubmed
NXP2を検索すると・・17件しか出ていません。
 
その中で↓の論文が見つかったのです。金沢大学からの多施設共同研究です。
 
Ann Rheum Dis. 2012 May;71(5):710-3.
Anti-NXP2 autoantibodies in adult patientswith idiopathic inflammatory myopathies: possible association with malignancy.
 
Ichimura Y, Matsushita T, Hamaguchi Y, KajiK, Hasegawa M, Tanino Y, Inokoshi Y, Kawai K, Kanekura T, Habuchi M, IgarashiA, Sogame R, Hashimoto T, Koga T, Nishino A, Ishiguro N, Sugimoto N, Aoki R,Ando N, Abe T, Kanda T, Kuwana M, Takehara K, Fujimoto M.


Abstract


Objectives
MSAは臨床的にPM/DMを含むIIMの均一なサブセットを見つけ、予後を予測する上で有用なツールである。最近、抗NXP2抗体は若年皮膚筋炎 (JDM)MSAであることが分かった。


Methods
日本人のIIM507 (DM445PM62) の臨床データと血清サンプルを集めた。JDM11例、SLE108例、SSc433例、特発性間質性肺炎124例を疾患コントロールとして評価した。血清は免疫沈降法とpolyclonalNXP2抗体を用いたwesternblottingを用いて抗NXP2抗体を測定した。


Results
7 (1.6%)の成人DM患者、1例の成人PM (1.6%)が抗NXP2抗体陽性。JDM2例を除き、疾患コントロールのなかでこの自己抗体が陽性であったものはいなかった。成人IIM8例のなかで3例が内臓悪性腫瘍を3年以内に発症し、もう1例のDM患者はDM診断時に悪性腫瘍の転移を認めた。癌はいずれも進行期 (stage IIIb–IV)


Conclusions
若年IIMよりも頻度が低いが、抗NXP2抗体は成人にも見つかる。抗NXP2抗体は悪性腫瘍を有する成人IIMに関連しているのかもしれない。



(本文より)


Results
Clinical and laboratory profiles of patientswith IIM with anti-NXP2 Abs
IIM507例のうち8例が抗NXP2抗体陽性:DM冠者445例中7 (1.6%)PM62例中1(1.6%)。全例が強い筋力低下とCK高値を有した。特に内蔵の悪性腫瘍がIIMの診断から3年以内に37.5% (3/8)に存在した (table 2)。いずれも進行期 (stage IIIb–IV)。さらに1 (C)では前立腺癌が42ヶ月より前に見つかり、DMの診断時に転移性の病態となった。しかし、上記の基準を満たさなかったため解析から除外された。間質性肺炎1例もなかった。2-61ヶ月のフォローアップチュ、8例中7例(Hを除く)が全身性ステロイドで治療された。さらに、患者Aはメトトレキサート、D免疫グロブリン療法を受けた。治療への反応は良好であったが、2例(患者CD)は悪性腫瘍のため死亡した。
 
Table 1NXP2抗体陽性のDM/PMの成人患者の臨床・検査プロファイル
 
 
イメージ 1
 
Comparison with other MSAs
NXP2抗体陽性の7例に加えてこの研究には74例の抗TIF115例の抗Mi-2抗体を含んだ。また51例の抗MDA526例の抗PL-718例の抗Jo-18例の抗PL-12抗体を含んだ。抗TIF1と抗Mi-2抗体はDMに特異的な自己抗体なので、抗NXP2抗体の臨床所見を抗TIF1と抗MI-2抗体のそれと比較した (table 2)。抗NXP2抗体は男性に主に見つかる。Gottron’s signはやや稀であるが、各の皮膚所見の頻度に有意な差はない。発熱の頻度は抗TIF1陽性のDM患者よりも高い。最大のCK値は抗Mi-2抗体陽性DMと同様であり、抗TIF1抗体陽性の患者よりも高い。抗NXP-2抗体の内臓悪性腫瘍の頻度は抗TIF1抗体の患者よりも低く、抗MI-2抗体の患者よりも高かった。有意差はいずれにもないが。
 
Table2
NXP2、抗TIF1、抗Mi-2抗体のDM成人患者の臨床・検査プロファイル
 
 
 
イメージ 2
 
 
<リウマトロジストのコメント>
訳しませんでしたが、NXP2は140kdの蛋白で、MDA5と同じ重さなのですね。これらのケースにおいて、抗MDA5はELISAで全例陰性であったそうです。
Conclusionに興味深い記載がありました。「NXP2は腫瘍抑制遺伝子であるp53の活性化と局在化に関連する。TIF1蛋白もp53との関連を有している。これら二つの自己抗体は同様の臨床的特徴を有するかもしれない。特に癌との関連性において。そのため、これらの自己抗体は癌に対する免疫反応の間に出現するものかもしれない。」
 
 
 
Scenario caseの経過>
当科よりステロイド治療を開始した。呼吸器科より化学療法中を開始された。

本例では、腫瘍に発現したNXP2に反応して、抗NXP2抗体が発生し、これに関連して皮膚筋炎が発生したというセオリーを想像しました


ps; 抗TIF1、抗Mi-2抗体が測定できるようになったようです!
 
抗TIF1抗体
抗Mi-2抗体
 
<2016.5/23追記>
若手に教えてもらいました。nxp-2で検索すると、20件も出てきて、以下の論文がみつかっちゃいました。抗nxp-2陽性のCancerは米国で新たに9例報告されておりました。