リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

Multicentric reticulohistiocytosis (多中心性細網組織球症)の治療法

< Scenario case >
Multicentric reticulohistiocytosis (多中心性細網組織球症)が紹介された。
 
MTX 16mg/週、PSL 5mg投与中であったが、皮膚結節は増悪傾向で、多関節炎が持続している。
 
追加治療が必要と判断した。
 
 
< 疑問、発生! >
最善の治療は?
 
 
< Pubmedにて >
以前に2012年のreviewを読んでいましたが、稀な病気なので最新の治療法を調べてみます。
  
pubmedmulticentric reticulohistiocytosis を検索し、352件ヒットしました。Englishで限定すると281件。。titleを流し読みして、治療の記載がありそうなものをひっかけました。
 
使われた薬とその効果のみ記載しています。Abstracしか読めなかったものは[ab]、titleしか読めなかったものは [title] と記載します。
 
8[ab] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23872542
35歳女性。PSL+MTXを高用量に耐性。Tocilizumabにて関節、皮膚症状とも寛解
 
55歳男性。MTXにETN加え皮膚症状改善。関節痛にPSL5mg投与も持続。ADA40mg隔週に変更し、改善。PSL中止で来た。関節痛再燃し、MINO加え改善。
  
29 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22070706
60歳男性。Zoledronic acid 4mg投与後も骨シンチで対称性滑膜炎。AZA10カ月後に皮膚症状消失し、関節痛も消失。LTBIに対しINH併用。
 
35[ab] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21485770
IFX+MTXで治療し、3回目のIFX投与後に関節炎は著名に改善。皮膚症状は変わらず。
 
55 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19438863
74歳男性。follicular non-Hodgkin lymphomaの既往あるが、再発なし。PSL40mg(漸減し17.5mg)、MTX(PSLの2週間後より漸増し20mg/wに)に反応せず、HCQ+SSZに反応なし。Alendronate使用。LEF開始し、2ヶ月後に関節痛、4.5ヶ月後に皮膚症状が改善。
 
60 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18936400
63歳男性。PSN(up to 60mg)、INH(300mg)、MTX(15mg/w)、ETN(50mg/w)にて改善なし。ETN中止し、IFX 5mg/kg(0,2,6,以降8週間毎)に。3回投与後に新たな皮疹が止まり、関節痛も改善。PSN7.5mgに漸減。IFX 5週間毎、MTX15mg/w、PSN7.5mg/dにて軽度の倦怠感と関節痛。
 
MTX6mg/w+PSL30mg+Alendronate5mg/dayにて皮膚、関節とも寛解し、PSL→10mg→1mgと漸減できた。
 
67歳女性、卵巣癌(未分化腺癌)合併。術後、カルボプラチン+シクロフォスファミドにて皮膚症状は改善したが、多関節炎が持続。mPSLパルス療法を投与したが無効。Zolendronate(4mg)投与したところ、関節痛は2週間後劇的に改善。
 
Successful treatment of multicentric reticulohistiocytosis with a combination of infliximab, prednisolone and methotrexate.
 
37歳女性、53歳女性はステロイド、HCQ、細胞毒性のある薬剤に耐性であったが、MTX or AZAに加え、IFX 3mg/kg(後に5mg/kgに増量)で治療したが、皮膚症状には有効で関節炎にはそうでなかった。後者はETNにスイッチしたが、関節炎は改善しなかった。
 
37歳女性。4か月間の手指DIPsの対称性関節炎。巣状糸球体硬化症にてシクロスポリン、ミコフェノレートモフェチルにて加療中。ADA40mg隔週にて寛解副鼻腔炎で1か月中断すると再燃し、再開にて再度寛解
 
106 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15313806
46歳男性。MTX20mg+PSN20-40mg2ヶ月にて効果不十分、7か月目にHCQ追加したが無効。Chlorambucil+PSNにて3ヶ月治療したが悪化。シクロフォスファミド(-200mg)、MTX(-25mg/w)、PSN20mgにて皮膚のみ改善。血尿にてシクロフォスファミド中止。
ETN50mg/wをPSN20mg、MTX15mg/wに加え、1ヶ月以内に皮膚、関節とも改善。PSL漸減し10mgのところで再燃。ETN 50mg/w、PSL10mg投与下、MTX→LEF20mgに変更。その後皮膚と関節炎は完全寛解し、PSL5mgに減量。その後、LEF20mg隔日、PSL4mgに減量。2年間症状なし。
 
44歳女性。Alendronate(10mg/週)を6週間投与した。1週間後に関節、皮膚とも改善傾向を示し、6週間以降は月1回にしたが悪化なし。1年後皮膚、関節ともほぼ完全寛解
 
22歳女性。MTX15mg/wにて無効。MTX25mg/w+PSN15mgにて無効。HCQ, Cyclophosphamide無効。シクロスポリンを追加し、一過性の症状の改善を認めたものの、Dupuytren拘縮、Pencil-in-cupをきたす。エタナセプト50mg/wに変更したところ、6週間後に皮膚、関節とも改善し、MTX、PSNを漸減中止。ETN+HCQのみにしたが再燃なし。
44歳女性。ナプロキセン+MTX7.5mg/wで開始しMTX15mg/wに。骨びらんは1.5年のフォローで進行なし。
 
44歳女性。膝の滑膜切除術についで、PSL20mg2wks投与したが皮膚症状には無効。10mgに減量し、MTX2.5mg併用→→7.5mg/wに。皮膚、関節炎とも消失。6か月後も寛解を維持。
 
SLEに合併したMRH。IVCYにて効果不十分。結節はシクロスポリン投与1ヶ月以内に著明に改善。
 
8年以上の低用量MTXにて皮膚症状、関節炎とも改善した。
 
56歳女性。HCQ+MTXで30ヶ月治療した。このレジメンは副作用のリスクが少ない状態で長期的に疾患をコントロールできるかもしれない。
 
66歳女性。PSN60mgにて皮膚結節の2割が改善。MTX開始し20mg/wに増量。PSN2.5mgに。8ヶ月後2か所に新規結節が出現し、結節は当初の50%。シクロフォスファミド50~100mg(消化器症状、血球減少に応じ調節)投与し、MTXは肺炎のため中止。皮膚は85%まで改善。MTX5mg再開され、シクロフォスファミド中止。MTXは18ヶ月投与後に中止。25ヶ月後も寛解を維持。
 
165[title] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7657881
Multicentric reticulohistiocytosis and methotrexate.
 
63歳男性。NSAIDs+ステロイドの関注。IVCY 15mg/kg/moにて一時的に少し改善したが、皮膚は変わらず。関節炎は進行。Subtotal penile amputationを施行。その4か月後、皮膚症状は改善。
 
68歳女性。MTX 10mg/wに反応し、治療34ヶ月にて寛解状態にある
 
13歳男性。シクロスポリンを使用したが、良い結果は得られず。
 
 
<まとめ>
IFXの報告が4例あり、2例は寛解、2例は各々関節炎のみ、皮膚症状のみに有効であった。
ADA 2例、ETN 2例、TCZ 1例において使用され、各々1例ずつで奏功した。
Zolendronic acidは2例で有効。
 
 
<Scenario caseの経過>
MTX16mg/wにて効果不十分であり、IFXの併用を勧めた。