リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

EGPAの治療 ①(欧州と米国の温度差)

・・あくまで私見です・・

EGPA(Churg-Strauss)を含むANCA関連血管炎の標準治療はEUVASという欧州の組織がRCTを元に気付いてきたました。
 
米国の著者による記載は以前より、これにすんなり従わない傾向を感じていましたが、最近はフランスを中心とするFVSG、EUVASのRCTの結果を無視できなくなっているように思います。
 
 
 
<Uptodate>
米国の著者(Uptodate, accessed Aug 2015
 
SUMMARY AND RECOMMENDATIONS
●以前Churg-Strauss syndrome (CSS)やアレルギー性肉芽腫性血管炎と呼ばれていたEosinophilic granulomatosis with polyangiitis (Chur-Strauss)(略EGPA)はアレルギー性鼻炎、喘息、著名な好酸球上昇によって特徴づけられる全身性の疾患。小さいサイズから中等度のサイズの動脈に分類される。血管炎はしばしば初期には明らかでないが。
 
EGPAのマネージメントの最初のステップは重症度の評価。しばしば用いられるシステムが5つの臨床要素の有無に基づくfive-factor score (FFS)である:65歳以上;心機能障害;腎不全 (安定したピークのCreatinine 1.7 mg/dL [150 micromol/L]); 消化管障害; ENTがないこと (あれば予後がよいので)
 
EGPAと全身性血管炎のある患者全てに対し、全身性ステロイド療法を勧める(Grade 1A)。プレドニゾンの投与量0.5-1.5 mg/kg/dayが典型的には6-12週間、または寛解が得られるまで投与され、次いで減量される。劇症的な疾患を有する患者は初期に静注のステロイド療法を要するかもしれない。
 
FFS2の重症患者には全身性ステロイド療法にシクロフォスファミドを併用する (Grade 1B)FFS 1の患者 (とくに心機能障害、中枢神経障害)を有する患者には全身性ステロイド療法にシクロフォスファミドの併用を勧める (Grade 2C)
 
●シクロフォスファミドによる寛解導入の後、アザチオプリンによる維持療法への移行を勧める (Grade 1B)。アザチオプリンに耐用できない場合や無効の場合には代賛としてメトトレキサート、レフルノミドを用いることができる。kじょれらの薬剤は毒性の有意に高い長期のシクロフォスファミド療法よりも好まれる。
 
●私たちは12-18ヶ月の免疫抑制療法の維持療法を続けることを勧める。より長期の期間または不定期の維持療法はたくさん再発する患者には正当であるかもしれない。
 
●免疫抑制療法の維持療法に加え、私たちはステロイド療法の併用を勧める(プレドニゾンまたは相当量) (Grade 1C)ステロイドは漸減し、EGPAの活動性の症状・サインをコントロールするのに最低限必要な量まで減量する。
 
●標準治療に抵抗性のEGPAに対するリツキシマブの役割を決めるためにはRCTが必要である。
 
 
 
Best Practice & ResearchClinical Rheumatologyより> 
リウマトロジストの治療はこちらに沿っています。2009年なのでちょっと古いのですけど・・・
 
BPRCRはヨーロッパのCurr Opin Rheumatolのような雑誌と理解しています)
 
Treatment
CSAの初期治療の基礎はステロイド剤。ステロイドによって予後は劇的に改善してきた。通常1mg/kg/dのプレドニゾンまたはその相当量を経口で投与する。メチルプレドニゾロン・パルス療法(15mg/kg静注、3日間)を最重症例には追加してもよい(Table 7)。通常2-3週間で臨床的な反応が得られ次第、緩徐に減量する[38]。しかし、ほとんどの患者がステロイド抵抗性の喘息のためステロイドの維持量を要する[38]The French Vasculitis Study GroupCSAを含む壊死性血管炎の患者において5つの予後不良因子を決定した。いわゆるfive-factor score (FFS)である[46]
[46]は以前まとめております。
 
1. Cr上昇 (>1.58 mg/dl),
2. 蛋白尿 (>1 g perday),
3. 消化管障害
4. 心筋症
5. 中枢神経障害
 
ひとつ以上の因子がある場合、5年後の死亡に関連し、その範囲は25.9–46%であったが、FFS0であれば5年後の死亡率は11.9%であった[46]FFSに基づいて、FVSGは最近二つのRCTを行った。一つはFFSを有する患者に対して、もう一つはFFS0の患者に対して。結果は最近出版され、以下のようにサマライズできる:
 
予後不良因子のないCSA患者(FFS0)において、臨床的寛解ステロイド剤のみで93%得られる。しかし、35%が最初の1年に再発し、追加の免疫抑制療法、AZPor IVCYを要する。早くから言われていたように、ほとんどの患者が喘息をコントロールするために経口ステロイドを継続し、関連する副作用の頻度は高かった。[47]
 
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予後不良因子を有する患者(FFS1以上)の患者においてステロイドに追加された12回のIVCY6回のIVCYに比べて重症CSAをコントロールする上で優れていた [48]。しかし、二群間に臨床的な寛解、治療失敗の割合、生存とMajor relapseに関しては差はなく、Minorrelapseにおいてのみ、12回の方が優れていた。[48]
 
これらの結果に基づいて、予後不良因子なしの患者(FFS0)はステロイド単独で治療されるべきである [38]免疫抑制剤の追加(AZP or IVCY)は治療失敗や再発例に対して用いられるべきである [38]
 
予後不良因子を有する患者(FFS1以上)は12回のIVCYが短期間のIVCYよりも優先されるべきである (Table 8) [38,48]。その他のAAVで証明されているように短期間のIVCY3-6ヶ月)についでAZPの維持療法を行うことが著期間のCYと同等であるかどうかについては正式にはCSAでは調べられていない [49]。しかし、短期間のCYの後にAZPによるより毒性の低い維持療法を行うストラテジーはいくつかの施設では行われている。
 
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IVCYは総投与量が少ないため、通常経口よりも好まれる。しかし、再発の頻度パルス療法で多くなりえ、パルスが失敗した時に経口CYが有効であることも示されている[38]
年齢と腎機能に応じCYの投与量の調整を行い、CYに関してモニターするというEULAR recommendationに従うべきである [34]。膀胱毒性を減らすためのsodium 2-mercaptoethanesulfonate(MESNA)の使用とニューモシスティスに対する予防が奨励される。骨粗鬆症、消化管予防と同様に。
CYの使用は重症の多発性単神経炎の患者においても身体障害を予防し減らすために推奨される。末梢神経障害が生存の予後不良因子であるが慢性的なダメージの因子ではないFFSに含まれていなくても [50,51]
 
 
 
<リウマトロジストのコメント>
最近は欧州がFFS1以上とするのに対し、米国がFFS2以上という記載がみられ、米国がEBMに準じている印象です。
ps;FFSについては以前にまとめました。
 
(1996FFS)
欧州では、最近、EGPAのRecommendationsたるものが発表されております。