リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

EGPAの治療 ②(欧州のリコメンデーション)

(↓のつづきです)
 
最近、EGPA(Churg-Strauss)のリコメンデーションたるものが発表されております。
 
Eur J Intern Med. 2015 Sep;26(7):545-53.
Eosinophilic granulomatosis withpolyangiitis (Churg-Strauss) (EGPA) Consensus Task Force recommendations forevaluation and management.
Groh M, Pagnoux C, Baldini C, Bel E,Bottero P, Cottin V, Dalhoff K, Dunogué B, Gross W, Holle J, Humbert M,Jayne D, Jennette JC, Lazor R, Mahr A, Merkel PA, Mouthon L, SinicoRA, Specks U, Vaglio A, Wechsler ME, Cordier JF, Guillevin L.
 
著者のSinicoとBotteroは前項のBPRCR2009を記載したDr、Guillevinは言わずとしれたFFSを作った先生です。ヨーロッパの標準と考えてよいでしょう。
 
 
The 22 detailed recommendations for thediagnosis, follow-up and management of EGPA with corresponding levels ofevidence.
The EGPA Consensus Task Forcerecommendations Level of evidence
 
※推奨レベルはTable 1に従います。
イメージ 1
 
 
1. EGPAは小さいサイズの血管炎および中等度のサイズの血管炎の管理において十分な経験を有する施設とともに、またはその施設において診療されるべきである。NA
 
2. 私たちはtoxocariasisHIV、アスペルギルス属に対する特異的IgEIgGの血清学的検査を勧める。また、喀痰and/or気管支肺胞洗浄液においてアスペルギルス属の検索、tryptaseVitamin B12の内服、末梢のスメア(異型性の好酸球や芽球を探すため)、胸部CTを鑑別のための最初の検査として最低限行うことを推奨する; 追加の検査は患者の特異的な臨床所見によってガイドされるべきであり、好酸球上昇の広範な原因を考慮すべきである。NA
 
3. EGPAが疑われた患者において生検を行うべきである。NA
 
4. EGPAが疑われた患者においてはANCAの測定(間接的IF法とELISA)を行うべきである。NA
 
5. 現在のところEGPAを測定するための信頼性のある生物学的マーカーは存在しない。NA
 
6. 一旦EGPAが診断されれば、肺、腎臓、心臓、消化管and/or末梢神経障害の評価が勧められる。NA
 
7. EGPA寛解の定義:臨床的に全身性の所見がないこと(ただし、喘息and/orENTを除く)NA
 
8. EGPAの再発の定義:ステロイドの増量and/or免疫抑制剤の追加を要する、EGPAの臨床所見の新たな出現または再発または悪化 (ただし喘息and/or ENTを除く)NA
 
9. ステロイドの使用はEGPA寛解に導入するために適切である;投与量は臓器・生命が脅かされる所見を有する患者においてはプレドニゾン1mg/kgまで。A
 
10. 臓器・生命が脅かされるような患者 (i.e.,心臓、消化管、中枢神経、重症の末梢神経障害、肺胞出血and/or糸球体腎炎)寛解導入療法のレジメンとしてステロイド免疫抑制剤(e.g. cyclophosphamide)の併用で治療されるべきである。B
 
11. AZPMTXを用いた維持療法は臓器・生命が脅かされるような患者において寛解導入療法レジメンの後に勧められる。C
 
12. ステロイド単剤は臓器・生命が脅かされるような所見を呈さない患者には適切かもしれない;免疫抑制剤の追加はプレドニゾンが3-4カ月後に7.5mgまで減量できないような選択された患者や再発性の患者において考慮してもよい。C
 
13. 血漿交換は一般にEGPAに有効ではないが、ANCAを有し急速進行性の糸球体腎炎を有したり、肺腎症候群を呈するような選択された患者には考慮してもよい。D
 
14. リツキシマブは腎疾患や再発性の経過を有するANCA陽性の患者に考慮されてもよい。C
 
15. IVIgステロイドand/orその他の免疫抑制剤)を投与中のEGPA再燃の患者に考慮してもよい。その他の治療に抵抗性である場合、妊娠中でである場合; 重症and/or再発性の感染症を有する薬剤性低ガンマグロブリン血症の場合は免疫グロブリンの補充を考慮してもよいかもしれない。C
 
16. インターフェロンαは限定された患者におけるSecond-or third lineの薬剤としてとっておくものかもしれない。C
 
17. 必要があればEGPAの患者にLRAを処方してもよい。B
 
18. 不活化ワクチンとインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを投与すべきである;生ワクチンは免疫抑制剤and/orPSL20mgを投与中の患者には禁忌である。D
 
19. 患者の教育プログラムの導入が推奨される。D
 
20. 末梢神経障害と運動障害を呈する患者はルーチンに理学療法士に紹介されるべきである。D
 
21. 患者はタバコと刺激物を避けるようアドバイスされるべきである。D
 
22. 静脈血栓症肺塞栓症血栓塞栓症の一般的なガイドラインに応じて治療されるべきである;持続性、再発性の疾患を有する特定の患者において抗凝固療法を長期に行った方がよいかについては分かっていない。D
 
 
 
 
(この中からNo. 101112の項目をピックアップします。)
 
 
10 生命and/or臓器が脅かされる所見(i.e.,心臓、消化管、中枢神経、重症の末梢神経、重症の眼の病変、肺胞出血and/or糸球体腎炎)を有する患者はステロイドともう一つの免疫抑制剤e.q. cyclophosphamide)の寛解導入レジメンにて治療されるべきである。[B]
 
The Five-Factor Score (FFS)5項目からなる予後予測ツールである。そのうち4つは年齢65歳以上、心機能障害、消化管障害(出血、梗塞、膵炎)、安定ピーク値150μmol/Lであり、1ポイントを加えるが、5番目のENT所見は良い予後に関連し、ENTがないことは1ポイント加える。FFS1以上のハイリスクのEGPA患者を治療する際には補助的な細胞障害性薬剤が勧められる。しかし、いくつかのRCTが行われたその他のANCA関連血管炎(AAV)と異なり、この推奨を支持するためのRCTは存在しない。
さらに、重症の肺胞出血、眼の所見(EGPAにおいては稀ではあるが)、劇症的な多発性単神経炎は生命を脅かしたり、機能的予後不良をもたらしうる。そのため、それらはFFSには含まれていないが、シクロフォスファミドを含む免疫抑制剤の使用を考慮すべきである [31]
シクロフォスファミドは継続的な経口療法(2mg/kg/day)または静脈パルスとしても同様に有効。パルス療法を選択する場合、最初の静注(15 mg/kg or 0.6 g/m2)3回は2週間毎に投与でき、最大量は11.2g。次いで、3回目から6回目のパルスは15 mg/kgまたは0.7 g/m23週間毎に投与できる。シクロフォスファミドは腎機能に応じて調整されるべきである。
パルスの投与は再発が多いかもしれないが[49]、コンプライアンスがよく、長期的な罹患率と死亡率を減らすかもしれない。しかし、前向きのデータはない。暫定的なCORTAGE試験の結果で示唆されるように、65歳以上の患者は予後不良因子の有無に関わらず、薬剤関連の副作用を避けるために低い用量の免疫抑制剤を用いることで利益を得るかもしれない [51]
シクロフォスファミドの重症の副作用が起きるため、医師はそれらを予防するために努力をしなければならない。生殖器毒性のため、精子保存と女性にはGnRH-analog治療が勧められる[52]GPA(Wegener’s)analogyと同様にCo-trimexazole (400mgまたは800mg, 3/w)によるPCP予防を考慮すべきである。最後に、薬剤性好中球減少の定期的なスクリーニングを要する[53,54]
 
 
11 AZPMTXによる維持療法は生命and/or臓器が脅かされる所見を有する患者において寛解導入療法の後に勧められる。[C]
 
High-riskEGPA患者におけるステロイドCYによる寛解導入療法の利益を評価したRCTによると、維持療法を行わなかった場合の全体的な生存5年で97%8年で92%[55]。しかし、再発率は高く6パルス群で73.8%12パルスで85.7%[55]。これらの観察結果よりその他のAAVと同じようにEGPAも再発を減らし、ステロイドを減らす上で維持療法の利益を得るであろうことが示唆される。
免疫抑制剤の維持療法は最後のCYパルスから2-3週間後、内服CY2-3日後より始めることができる。その他のAAVと異なり、EGPAの維持療法の免疫抑制剤を比較した試験はない。CYCAZAREM試験はEGPAを含んでいないが、AZP (2mg/kg/day)は再発を減らす上でCYと同様であった。そのため、CYは現在、血管炎を寛解導入には用いられるが、長期の維持療法の目的では用いられない [56]
AZP以外に、MTX (10–30mg/week, along with folic acid replacement, 10–30 mg/week)AAVにおいて強力な寛解維持療法として用いられる [58]。維持療法の理想的な期間は不明である;寛解導入から18-24ヶ月が勧められるかもしれない。最近の研究によってEGPA診断時のANCA陽性、皮膚所見、好酸球低値が再発を示唆することが確立された[3]
 
 
12 生命や臓器が脅かされる所見を有さない患者にはステロイド単独の治療がよいかもしれない;免疫抑制剤はプレドニゾンを治療3-4カ月後に7.5mg/日まで減量できなような限定された患者や再発性疾患の患者に考慮してもよいかもしれない。[C]
 
CHUSPANスタディにおいてFFS=0EGPAPAN患者に対しステロイド単独の治療は有効であり、5年生存率96.8%を達成した。しかし、患者の1/3(特に末梢神経障害を呈する患者)が細胞毒性の薬剤の追加を要した。すなわち免疫抑制剤の早期の追加によって利益を得る患者はもっと多いかもしれない [31]
最近のRetrospectiveな研究によると、FFS=0EGPA患者において全身症状や難治性喘息のためPSL7.5mg未満に減量できずに免疫抑制剤を追加された。これらの患者は再発率は低く、以前のシリーズの患者に比べ、より重症の感染症イベントを起こさなかった[17]。しかし、細胞毒性の薬剤をプレドニゾンを喘息やENT症状のため減量できない患者において追加した方が良いのか否かは分かっていない。The CHUSPAN 2 trial (ClinicalTrials.gov NCT00647166)が現在進行中であり、これはFFS0EGPA患者においてAZPの追加が祐子かどうかを調べるものである。追加的なデータが入手できるようになるまで、この目的における免疫抑制剤は個々のケースで議論されるべきだ。
 
 
<リウマトロジストのコメント>
10の記述に驚いています。これまでリウマトロジストは下記のRCT(↑の[55])に基づいて、0.6g/m22週間毎に3回、ついで4週間毎に3回行って、寛解導入を行っていました。
 
とはいっても心筋症の2例だけですけど。
 
Arthritis Rheum. 2007 May 15;57(4):686-93.
Churg-Strauss syndrome with poor-prognosisfactors: A prospective multicenter trial comparing glucocorticoids and six ortwelve cyclophosphamide pulses in forty-eight patients. Cohen P1, Pagnoux C,Mahr A, Arène JP, Mouthon L, Le Guern V, André MH, Gayraud M, Jayne D,Blöckmans D, Cordier JF, Guillevin L; French Vasculitis Study Group.
 
 
このRCTにおいて、48例中4例が死亡し、そのうち3例(6%)が感染症による死亡でした。
 
それなのに、このRecommendationでは、それより多い量を短い間隔でくりかえすように勧めています(0.7g/m23週間毎)。その安全性についてはコメントされておりません。
 
比較試験で評価された投与レジメンではありませんので、日本人に応用するときは気をつけた方がよいと思います。
 
 
ps;心筋症の2例はいずれも半年後、AZPの維持療法に切り替えても安定しています;1例5年の経過で、ステロイドAZPともoffして、吸入ステロイドのみで安定しており、もう1例もまだAZP2ヶ月だけですが寛解を維持しております。
 

 

ps;↓でEGPA診断に関するreviewを執筆させていただきました!

 


 

 

↓でGCAのreviewを執筆させていただきました!


 

 

↓で執筆協力しております!