28歳女性のSLE患者、横断性脊髄炎を経験し、Uptodateの孫引きをしています。
https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13899969
(utd114)
Transverse myelopathy in systemic lupus erythematosus: an analysis of14 cases and review of the literature.
Ann Rheum Dis. 2000 Feb;59(2):120-4. Review.
Kovacs B, et al.
アメリカからの14例のシリーズ
・二つの学術施設で診られたSLE患者約600例のうち14例のTMが検出された。全例がSLEのACR基準を満たし、TMは感覚または運動障害、膀胱直腸障害、または任意の組み合わせを伴う脊髄病変を示唆する臨床所見で診断された。
・患者のデータは入院カルテ、外来カルテより抽出。SLEとTMの臨床所見、経過、血清学検査、抗リン脂質抗体のような検査データ、MRI所見を含む。(略)
・以下の3群に分けた:Group A、メチルプレドニゾロンパルス(IVMP)1g3日間後に経口プレオニゾン(n=5)、Group B、IVMP1g3日間後、1g/m2までのIVCY(n=4)、Group CはIVMP1g3日間、ついで4回交換の血漿交換5日間、後にGroup Bと同様のIVCY(n=4)。
・英語またはドイツ語の35の症例報告・シリーズをレビューした。1972-1999年、91例を含む。自験例と合わせ105例。
・ほとんどのケースでTMはSLE発症時または発症5年以内。自験例では9例(64%)がすでにSLEの診断を受けていた。全例では54例(54%)。TMのエピソードは79%が1回、14%が2回、7%が3回以上。
・自験例はTable 2、3。ほとんどのケースで感覚障害が胸髄レベル検出でき、Th7が最もコモン。3例では感覚障害を認めなかった。興味深いことに症例1では感覚障害は検出されないが、MRIはTMに一致した。全例の解析ではTh5-8が最もコモン。
TMの患者はその他の神経症状を有することが前提とされてきた。自験の3例(21%)が視神経炎を有した。全例では27例(48%)。
・脳神経障害はSLEの3-16%に起きるが、視神経炎の発生率は不明。しかし、恐らくSLEとTMよりはずっと稀。
・自験例でaPLを検査された11例のうち6例がaCLまたはLAC陽性。全例では105例中64例しか検査されていなかった。この64例中41例(64%)が陽性。SLEにおけるaPLの頻度は30-50%なので、TMを有するSLE患者におけるそれはやや高い。
・MRI所見は下位胸髄の高信号と脊髄の萎縮。MRI所見とアウトカムを関連づけようとした。完全寛解はMRI異常の患者、正常の患者で同等(46%vs51%)。しかし、MRI異常の患者の28%が対まひが持続したのに対し、MRI正常の患者では6%だった。これはMRI異常の患者は予後が良くないことを示唆する。
・自験例で完全回復は3例(22%)のみ。9例(64%)は不変、2例(14%)は部分的に改善。全体のアウトカムはもっと良かった。105例のうちアウトカムは86例に得られ、治療とアウトカムは考慮されず、その他の数人は早期に死亡した。完全回復は50%、部分回復は29%、改善がないか悪化は21%。
・古い研究ではステロイド静注のみで治療されたが、最近のいくつかのセンターはIVCYと静注ステロイドによる積極的な治療を好んだ。血漿交換はこの治療レジメンに補足的に用いられ、自験例でも少しの患者に用いた。
・静注MP単独は有意な改善に導いた。IVMPに次いでIVCYを行うとIVMP単独よりも有効に見えた。IVMPとIVCPに耐性の血漿交換の治療はアウトカムをそれ以上改善させないように見えた。治療抵抗性を示唆する所見は同定できなかった。
・TM発症時のSLEの活動性が患者のアウトカムに関連したら面白かったかもしれない。文献の症例よりSLAMを計算することは臨床データが揃っておらずできなかった。自験例ではSLAMスコアが高いとより積極的に治療された。しかし、それは臨床的に良いアウトカムと関連しなかった。Group Cの患者は全例対まひのままだった。
(Table 2, Table4 のまとめ)
年齢 | 症状 | 治療 | FUP | アウトカム | |
1 | 67 | 対まひ | ivMP, pp, ivCY | 3年 | 対まひ |
2 | 52 | 疼痛、尿閉 | ivMP, pp, ivCY | 6年 | 対まひ |
3 | 49 | 異常感覚、右下肢不全まひ | ivMP, ivCY | 7年 | 改善、右下肢不全まひ |
4 | 41 | 異常感覚、左下肢不全まひ | ivMP | 4年 | 改善、異常感覚 |
5 | 36 | 不全対まひ | ivMP, pp, ivCY | 5年 | 対まひ |
6 | 23 | 異常感覚、左下肢不全まひ | ivMP, ivCY | 13年 | 異常感覚、感覚喪失 |
7 | 58 | 異常感覚 | ivMP | 9年 | 対まひ |
8 | 57 | 異常感覚、不全対まひ | ivMP, pp, ivCY | 6年 | 異常感覚、不全対まひ |
9 | 23 | 異常感覚 | ivMP | 14年 | 回復 |
10 | 27 | 異常感覚、不全対まひ | ivMP | 22年 | 対まひ |
11 | 25 | 不全対まひ | ivMP, ivCY | 10年 | 不全対まひ、神経因性膀胱 |
12 | 77 | 不全対まひ | ivMP, ivCY | 2年 | 不全対まひ、神経因性膀胱 |
13 | 49 | 不全対まひ | ivMP, ivCY | 1年 | 対まひ |
14 | 26 | 異常感覚 | ivMP | 6ヶ月 | 改善、感覚喪失 |
※ ivMP;メチルプレドニゾロン静注、pp;plasmapheresis、血漿交換、ivCY; 静注シクロフォスファミド
→自験例(28F)は不全対まひ、尿閉の状態であった。
→このシリーズで有意な運動障害を呈していたのは14例中10例。尿閉は1人。
※ 対まひが1例、不全対まひが6例、片方の下肢不全まひが右1例、左2例
→その10例の予後は、左不全まひの2例は改善したが、残り8例は不変か悪化。
→前項のref 113、イギリスの15例は完全回復 3例、良い機能 6例、まずまずの機能 5例。
これに対し、アメリカの14例の予後は完全回復 3例、部分改善 2例。残り9例は不変か悪化。
とくに、麻痺のある10例は積極的に管理されてはいますが、予後は厳しいものでした;改善は2割。
<リウマトロジストの見解>
治療はTMが稀過ぎてRCTはないようです。
二つのシリーズのうちひとつはIVCYの併用が有効かもしれないというもの、もうひとつも肯定的でした。
急性期のCNSループスにおけるIVCYのRCTではIVCYの有効性が示されていました。ただし、TMの登録は4例のみ。
ループス腎炎では、IVCYのエビデンスは確固たるものです。
<Clinical Scenarioの経過>
入院日よりメチルプレドニゾロンのパルス療法15mg/kg3日間を開始。次いで、PSL1mg/kgとし、
第5病日にIVCY0.75g/m2を開始;4週間後1.0g/m2に増量する予定とした。
最近のIVCYの使用法として、ALMSの方法に従った。
→ Pubmedでも調べてみました。最新の論文あり、病態に迫る論文もありました。