Five factor score(FFS)は1996年、フランスより報告された血管炎の予後不良因子です。
5つのProspective studyに参加したPolyarteritis nodosa(PAN)、Microscopic pollyangiitis(MPA)、Churg Strauss syndrome(CSS)の患者342例を対象としました。性、年齢、症状、臓器病変などの23の因子について、これらが死亡を予測するかを解析しました。
Table 2, 3
単変量解析
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多変量解析
|
|||
N
|
RR
|
P
|
P
|
|
尿蛋白 (> 1g/日)
|
33
|
3.6
|
0.0001
|
<0.001
|
重症消化管障害
|
24
|
3.13
|
0.0001
|
<0.001
|
心筋症
|
15
|
2.18
|
<0.08
|
Ns
|
腎障害(Cr>1.58 mg/dl)
|
72
|
1.86
|
<0.02
|
Ns
|
中枢神経症状
|
32
|
1.76
|
<0.11
|
Ns
|
※重症消化管障害・・消化管出血and/or穿孔and/or膵炎
多変量解析で有意に死亡を予測した2つの因子と、多変量解析では有意でなかったものの、Relative riskが高かった3つの因子(単変量解析では有意)を合わせ、5つの因子を設定し、その因子の数が予後に影響するかどうかを調べました。
Table 4
FFS
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No of patients
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Dead (%)
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Relative Risk
|
0
|
11.9
|
0.62
|
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1
|
81
|
25.9
|
1.35
|
2
|
37
|
45.95
|
2.40
|
Total
|
64
|
278
|
その結果、5つの因子のうち1つでもあれば死亡のRelative riskが高くなりました(Table4、Figure8)。3因子の場合と比較してみても、この5因子の方がより正確に死亡を予測したとされています。
Figure 8
Five factor scoreが信頼できる点は、前向きな臨床試験に参加した患者を対象としている点です。後向きのデータベースでは脱落例が漏れていたり、候補となる因子が揃っていないなどの多くの問題が考えられます。FFSの研究では、追跡率98.2%(336/342)でした。
では、いよいよ、このFFSの最も評価すべき点についてお話しましょう!
FFSが2つ以上の患者は、ステロイド単独に比べ、シクロフォスファミド(CY)を併用した方が予後が良いというメタ解析の結果があるのです。
対象はPAN、MPA、CSSの278例ですが、5例をのぞき、なんらかのRCTに登録された患者です。予後は疾患によらず(MPAの生存曲線はCSSよりも下だったが有意ではなかった)、FFSによって有意に変化しました。
CYのRCTに参加した患者を集積し、投与した群と投与していない群で比較したところ、CYによる予後の改善は見られませんでした。 しかし、
FFS2以上の患者ではCYが有意に予後を改善させたのです(Figure 6)。
このグラフを見る限り、5年生存率はステロイドのみ4割弱、CY併用で6割余りであり、Absolute risk reduction(ARR)は20%余り、Number needed to treat(NNT)は5となりそうです(NNT=5とは5人にCY併用をすれば一人を助けるという意味)。10を切るNNTの意味は重大です。
こういう背景も影響してでしょうか、欧州では、
MPA(腎限局型をふくむ)ではどうでしょうか?
CYCLOPSの適応にあるように、Cr>1.7であれば、GPA(Wegener肉芽腫症)と一緒にANCA関連血管炎として、70歳台でもCYが使用されます。
フランスでは、FFSがひとつでもあれば、CYパルスを併用します(6パルスと12パルスのRCT)。
以上、まとめです。
・FFSが1つの患者においてCYが有効であるかどうかは分かっていないが、欧州ではCYの併用が勧められている。
日本でこのFFSが論じられることは少ないですが、リウマトロジストは
ps;GPA(Wegener肉芽腫症)は一般にそれだけでCYの適応と考えられています。1970年台にCYが使用されるようになって、この致命的な疾患がcurableになったという歴史的な経緯があるからです。肺病変がなければ、MTXを一考しても良いかもしれませんが、長期的にはCYよりもコントロールが難しい傾向があるようです。
※Five factor score revised
※Five factor score revised
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