リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

パラシュートのRCT-メタ解析-

2012年にはじめて丸3年、のべ10万人の方に訪問していただきました。
 
ありがとうございます。
 
当初は気合を入れて書いていたのですが、
 
最近は「日常診療でやっていることをそのまま書こう」と肩の力を抜いてやっております。
 
どなたかのお役に立てることがあれば幸いです。
 
さて、この度はパロディ的な論文をご紹介します。リウマトロジストには少々耳に痛い内容です(笑)。
 
2012年のACRガイドライン2008改訂の際に紹介された論文です。
 
皆でルールを決めていくとき、RCTがないテーマについて批判をかわすために使われたものと理解しています。
 
 
 
BMJ. 2003 Dec 20;327(7429):1459-61.
Parachute use to prevent death and major trauma related to gravitationalchallenge: systematic review of randomised controlled trials.
Smith GC, Pell JP.
 
 
重力チャレンジにおいてパラシュートの使用は死亡とメジャーな外傷を防ぐことができるか:Randomisedcontrolled studyのシステマチックレビュー
 
Abstract
Objectives
重力チャレンジに関連したメジャーな外傷を防ぐ上でパラシュートが有効であるかどうかを決めること
Design
Randomised controlled studyのシステマチックレビュー
Data sources:
Medline,Web of Science, Embase, and theCochrane Library databases; appropriate internet sites and citation lists.
Study selection:
自由落下の間パラシュートを用いることの効果を示した研究
Main outcome measure
死亡と外傷の重症度スコア>15で定義されるメジャーな外傷。
Results
私たちはパラシュートの介入のRCTを見つけることができなかった。
Conclusions
不健康を予防するための多くの介入と同様、パラシュートの効果はRCTを用いた厳格な評価にさらされることはなかった。EBMの支持者は観察研究のみを用いて評価された介入の導入を評価してきた。私たちはもしEBMの最も過激な主唱者がパラシュートの二重盲検の無作為化プラセボコントロールのクロスオーバー試験を組織し参加すれば、全ての人が利益を得るかもしれないと思う。
 
イメージ 1
 
Introduction
パラシュートは自発的に行う娯楽、あるいは軍隊の設備であり、典型的には飛行機からのジャンプにおける重力の負荷の後の整形外科的外傷、頭部外傷、軟部組織外傷のリスクを減らすために用いられる。パラシュートがよい介入であるという認識は逸話的な根拠に基づくところが大きい。
観察研究のデータではパラシュートの使用は介入による失敗、医原性の合併症のため死亡率に関連するとされる。さらに、自然落下の自然歴の研究によるとパラシュート装着の失敗や破損は必ずしも悪いアウトカムに至らないというものである。したがって、私たちはパラシュートのRCTのシステマチックレビューを行った。
 
Methods
Literature search
私たちはQUOROM(メタ解析の報告の質)ガイドラインに沿ってレビューを行った。Medline, Web of Science, Embase, the Cochrane Library, appropriateinternet sites, and citation listsにおいてパラシュートのRCTを検索した。使用した検索用語はparachute” および “trial”。言語による制限を行わず、100mよりも高いところからのジャンプに関する任意の試験を登録した。容認される介入は被検者が装着するハーネスに意図で固定された装置で、自然落下の間、転落の速度を制限する目的で自動的またはマニュアル式でリリースされるものとする。コントロール群を置いていない研究は除外した。
 
Definition of outcomes
調査されたMajor outcomeは死亡、および外傷重症度スコア>15.6で定義される大きな外傷。
 
Meta-analysis
統計のアプローチはパラシュート群とコントロール群のアウトカムをオッズ比で評価するというものである。95%信頼区間の推定値の正確さを定量化した。
不均一性を評価するためにthe Mantel-Haenszel testを用い、不均一性の原因を調査するためにsensitivity解析、サブグループ解析、固定効果荷重回帰分析を行った。We chose the Mantel-Haenszel test to assess heterogeneity, andsensitivity and subgroup analyses and fixed effects weighted regressiontechniques to explore causes of heterogeneity. Publication biasがないかを視覚的に評価するためファンネルプロットを用い、それを定量化するためにEgger’s and Begg’s testを用いた。全ての統計解析にStatasoftware, version 7.0を用いた。
 
Results
私たちの検索の戦略においてパラシュートのRCTをひとつも見つけることができなかった。
 
 
Discussion
Evidence based pride and observationalprejudice
観察研究で得られたデータに基づく医療的介入はRCTによって正当化される必要があることは一般に知られた真実である。観察研究はデータ収集に問題があり、交絡因子やバイアスによって汚されたものである。たとえば、観察研究によってホルモン補充療法を行った女性において虚血性心疾患の頻度が低いことが示され、これらの結果は健康な女性、虚血性心疾患の既往がある女性、虚血性心疾患のリスクがある女性においてホルモン補充療法を推奨するように解釈された。しかし、実際はホルモン補充療法は虚血性疾患のリスクを上昇させることがRCTで証明され、観察研究で明らかであった保護的な効果はbiasによるものであったことが示唆された。この件のようないくつかの例によって、観察研究にのみ基づく医療的介入は注意して調べる必要があることが示された。パラシュートも例外ではない。
 
Natural history of gravitational challenge
介入の効果は介入をしなかった場合と比べて評価されなければならない。そのため、自然落下の自然歴の理解は必須である。パラシュートを使い損ねた場合の死亡率が100%であれば、パラシュートの使用に関連し生存があれば有効性の証拠と考えられるかもしれない。しかし、自然落下の有害事象は決して100%ではない。
1m33000 feet)よりも高所からの重力負荷の後の生存が報告されている。加えて、パラシュートの使用自体死亡に関連することがある。これは部分的にはパラシュートの介入の失敗によるものである。しかし、全ての介入でもそうであるように、パラシュートも医原性の合併症に関連する。そのため、パラシュートのリスクと利益のバランスを計算するための研究が必要である。
 
The parachute and the healthy cohort effect
観察研究のデータの最も弱い点のひとつがバイアスの可能性である。これにはselectionbiasreporting biasであるが、RCTを行えば大きく取り除くことができる。パラシュート使用の関連性はパラシュートを用いずに航空機からジャンプする個人は既存の精神疾患罹患率が高そうであるということ。パラシュートを用いる個人は精神疾患罹患率がすくなそうである。そのため収入や喫煙のようなカギとなる患者背景において違うがあるかもしれない。そのため、パラシュートの保護的な効果はthe “healthy cohort” effectの一例にすぎないかもしれない。観察研究は典型的には多変量解析のアプローチを用いる。最大尤度に基づくモデルを用いてこれらのバイアスの相対危険度の見積もりを補正しようとするために。Distasteful as these statistical adjustments are for the cognoscentiof evidence based medicine, no such analyses exist for assessing the presumedeffects of the parachute. これらの統計学的な補正がEBMの専門家のためのものであることは不快であるが?パラシュートの保護的な効果を評価したそのような解析は存在しない。
 
The medicalisation of free fall
医師は疾患と権力のことで頭がいっぱいで、私たちの生活の全てをコントロールしないと満足できない、干渉してくるモンスターであるとよく言われる(Journal of Social Science, pick a volume)。パラシュートを使う個人にかかるプレッシャーは人生を充実させるはずの自然体験が恐怖と依存の状況に変化してしまうことの一例と言えるかもしれない。パラシュートの普及は医師が疾患の予防に夢中になっていることのもうひとつの例かもしれない。偶発的な有害事象に対して予防効果があるのかよく分かっていないテクノロジーに対する医師の誤った信仰の一例にすぎないかもしれない。
 
Parachutes and the military industrialcomplex
しかし、悪意のある医師がいるかもしれない。一般には悪徳とも言えるほどの権力があるかもしれない。パラシュート産業は巨大な多国籍企業においては10億ドルを稼ぐ。その利益はパラシュートの効果に対する信用に依存している。勇気を持って彼らの生産物をテストするRCTを行うことについて、商業的に大きな懸念があることを予測するのは難しいであろう。さらに、産業がスポンサーとなった試験はその商品に好ましい結論になりやすい。そのような産業がスポンサーとなった試験の結果が信頼できるものなのかは分からない。
 
A call to (broken) arms
二つの選択しかない存在する。ひとつは例外的な状況においては、私たちは介入のリスクと利益を考慮して常識を適応してもよいかもしれないというもの。もうひとつは、排他的な根拠に基づいた介入という聖杯に対する疑問を持ち続け、適切な試験がない限りパラシュートを使用しないというもの。
私たちが自分たちの集団で創造した思想は、啓発されていない集団をそのような試験にリクルートすることを難しくしているかもしれない。もしそうであれば、私たちはEBMを主張し根拠に基づかない介入を批判する者はクロスオーバーの二重盲検RCTに参加することでその信仰を示すことを躊躇しないであろうと確信する。
 
Contributors: GCSSが最初のアイデアを思いついた。JPPは彼に辞めるよう説得した。JPPは最初の文献検索を行ったが、GCSSはしなかった。GCSSが論文を書いたが、JPPは全てのジョークを削除した。GCSSが保証人となったが、JPPは彼にとって自業自得だと言う。
 
Funding: None.
 
Competing interests: None declared.
 
Ethical approval: Not required.