リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

白血球破砕性血管炎、Leukocytoclastic vasculitis③

< Clinical scenario >
62歳男性の白血球破砕性血管炎(Leukocytoclastic vasculitis;LCV)の分類をしています。
 
① 過敏性血管炎とは・・
 
② 悪性腫瘍に合併する白血球破砕性血管炎

https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/13235425

 

 
 
Uptodateで調べる限り、LCVMicroscopic polyangiitis (MPA) の皮膚病変の組織型であり、Small vessel vasculitis7つの分類(※)に当てはまらない場合、過敏性血管炎であることが多いようです。
 
 
しかし、過敏性血管炎の原因は多くの場合薬剤で、まれに慢性感染症があるくらい。この方には原因らしい所見がありません。
 
 
PubmedにてParaneoplastic LCVも勉強し、悪性腫瘍の検索をしましたが、みつかりません。
 
 
< Uptodate >
 
さて、Uptodateに戻りますが、 以下を読んでみます。
 
 
Management of adults with idiopathic cutaneous small vessel vasculitis
 
こういう皮膚が主体で、LCVの原因が見つからないとき、「特発性皮膚小血管炎、Idiopathic CSVV」と呼ぶのでしょう。
 
 
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Management of adults with idiopathic cutaneous small vessel vasculitis
 
INTRODUCTION —皮膚の小血管炎(CSVV)は皮膚の小血管を侵す白血球破砕性血管炎(LCV)によって特徴づけられる疾患。定義上、その他の臓器に及ぶ血管炎があってはならない。CSVVは様々な要素に関連して発症する;薬剤、感染症、全身性疾患や悪性腫瘍。1/3から1/2の患者ではいかなる誘発する要素も検出されない。そのような患者はここでは特発性CSVVと呼ぶ。
特発性CSVVはしばしば2-3週間以内に改善する。したがって、ほとんどの場合患者の管理は特定できる原因を除去することと症状の改善を確認すること。疾患プロセスを停止するための全身性の免疫療法は通常、出血性のう胞や潰瘍、慢性・再発性疾患のような合併症を呈する一部の患者に温存しておくべきだ。
 
TERMINOLOGY —皮膚小血管炎(CSVV)を表すために用いられる用語には、皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎(angiitis or vasculitis)、皮膚壊死性細静脈炎があり、いずれもCSVVの特徴的な組織学的所見を表す。過敏性血管炎もCSVVを表すのに用いられるが、ほとんどの場合既知の薬剤や感染症によるCSVVに用いられる。
 
CLINICAL FEATURES AND EVALUATION —CSVVは皮膚の毛細血管、細静脈、細動脈を侵す白血球破砕性血管炎の組織学的所見とともに皮膚の病変があることで特徴づけられる。触知可能な紫斑が最もコモンな皮膚所見であるが、点状出血、出血性のう胞、潰瘍、蕁麻疹も出現してもよい。皮膚病変はしばしば下腿やその他の荷重領域に出現する。
CSVVを来たしうる様々な要素には薬剤、感染症、全身性疾患、悪性腫瘍が含まれ、稀に食事の要素もある。特発性CSVVは約30-60%を占め、臨床・ラボの検査が根底にある原因と全身性血管炎の両方を説明できなかったときのみに付けられる除外診断名だ。病因要素の根気強い検索は重要である。根底にある原因の除去はCSVVの改善につながるからだ。加えて、全身性の疾患をこの診断をつける前に除外しておかなければならない。内臓病変を有する患者には通常より強力な治療アプローチが適応となるからだ。
皮膚血管炎の臨床的、病理的な所見、原因物質の評価については別に詳しく述べる。また、持続的蕁麻疹性の皮膚病変を呈するCSVVのタイプ、蕁麻疹性血管炎の臨床所見、診断、治療は別にレビューする。
 
DISEASE COURSE —CSVVの患者のほとんどにおいて、病気は自然に治り、2-4週間以内に改善する。自然に治る疾患では新たな皮疹の形成は最初の1-2週間は続く。慢性または再発性の疾患は約10%に起きる。
皮膚の炎症後の色素沈着、滲出した赤血球の破壊による赤褐色のヘモジデリン沈着は通常CSVVの後に残る。これらの病変は時間とともに改善する傾向がある;数か月以上を要するこもある。
 
TREATMENT —特発性CSVVの臨床所見は治療のアプローチに影響する。急性疾患の患者の管理は慢性、再発性の患者とは異なる。
 
Acute and uncomplicated idiopathic CSVV(急性・非複雑性の特発性CSVV自然に改善する可能性が高いため、急性の触知可能な紫斑または点状出血の診呈する患者に血管炎プロセスを抑制する治療は必要ない。しかし、これらの患者は掻痒、疼痛、局所の浮腫を呈し、これらの症状を緩和する介入には利益があるかもしれない。
 
臨床的な経験では以下の方法が有益になりえる:
Rest, leg elevation, and compression stockings(安静、下肢挙上、弾性ストッキング) - 病変部位を運かしたり、従属位置に長く保持することによって疾患が悪化するかもしれない。下肢挙上と弾性ストッキングの使用は下肢の免疫物質の沈着を減らすかもしれない。それゆえ、血管炎による皮膚病変の進行を和らげる。
 
Nonsteroidal antiinflammatory drugs (NSAIDs) –NSAIDsは疼痛に有効かもしれない。
 
Oral antihistamines –抗ヒスタミン剤は掻痒を抑えるのに有効かもしれない。
 
Complicated or chronic idiopathic CSVV(複雑性・慢性の特発性CSVV) - 症状を改善する方法は全ての患者に有益でありえるが、疾患プロセスを止める事を目的とした治療は出血性水泡、皮膚壊死、または皮膚潰瘍を合併した特発性CSVVの患者には適応となる。これらの皮膚病変は感染症、慢性の創傷、瘢痕になりえるため。慢性(活動性が4週間を超えて持続するもの)や再発性のCSVVの患者は治療介入の候補だ。慢性または再発性の疾患が無症状で患者が皮疹の様相によって悩まされていなければ、治療を延期することも選択肢となる。
特発性CSVVの治療アプローチをガイドするための多くのデータは増悪因子に関連した皮膚白血球破砕性血管炎の症例・シリーズ報告に由来する。これらは皮膚外の病変の有無を問わない。治療の効果に関するデータがほとんどないため、いかなる特異的な治療法も有効性に関する決定的な結論ができない。
全身性の免疫修復性の薬剤が複雑性または慢性の特発性CSVVの治療の主流。これらの患者へのアプローチには疾患プロセスを急速に抑制することを目的とした初期のプレドニゾンの短期間の使用がある。ついで、活動性が持続する患者におけるコルヒチンやダプソンの使用がある。このレジメンへの反応が不十分であれば、より積極的な免疫抑制療法を考える。
 
First-line therapy
Systemic glucocorticoids —全身性グルココルチコイドは皮膚の小血管炎の単発の急性のエピソードの管理に最もよく用いられる薬剤。RCTはなされていないが、まずは様々な型の皮膚LCVの小さいシリーズにおける有効性の報告に基づくものである。私たちの経験では特発性の皮膚小血管炎のほとんどが改善する。
典型的にはプレドニゾン (PSN) 0.5mg/kg/日(理想体重)で始め、新たな皮疹が出現しなくなるまで続ける(通常1-2週間)。この後、3-6週間かけて漸減中止する。改善はしばしば治療開始1週間以内に明らかとなる。
ステロイド減量中や中止後に再発する患者にはより長期のステロイド治療は副作用のリスクがあり勧められない。そのような患者はむしろ、ステロイド漸減作用のある薬に変えるべきだ。疾患の再燃によって大きな問題が起きるようであれば、それらが効き始めるまで有効で最小のPSN投与量を継続する。
 
Second-line therapy — 上述の通り、最初のPSN治療後に再発する患者は好中球機能阻害薬であるコルヒチンかダプソンで治療される。これらの治療の効果を指示するデータは限られているが、より免疫抑制を来たす薬剤より前に試してみることは合理的である。
私たちの経験ではコルヒチン、ダプソンともほとんどの患者においてPSNを減量する上で有効だ。ダプソンには様々な副作用があるため、通常コルヒチンから用いる。
 
Colchicine —皮膚の小血管炎に対するコルヒチンの効果に関するデータは一貫しない。盲検化されていない試験において組織学的に診断された皮膚LCV41例が少なくとも1ケ月間、コルヒチン単独(0.5 mg twice daily)か局所の柔軟剤で治療されたが、両群の有効性に有意差はなかった。その研究は他の治療を受け様々な反応を呈した16例を含んでおり、不特定の割合の患者が難治性の経過をたどった。
RCTとは異なるが、シリーズ・症例報告によると、コルヒチンは利益があるかもしれないことを示唆した。ある研究では組織学的に証明された慢性LCVを有し、コルヒチン治療で改善を示した9例のうち7例が治療終了後に再燃し、再治療によって再度改善した。
皮膚小血管炎に対するコルヒチンは痛応0.6mg12回で投与される。改善の最初のサインは典型的には1-2週間で見られる。1週間たっても改善が診られないなら0.6mg13回への増量を試してもよい。しかし、下痢、吐き気、腹痛のような薬剤による消化管の副作用がしばしば増量の妨げになる。
 
Dapsone — (略)
 
Refractory disease — PSNとコルヒチンand/orダプソンの治療にもかかわらず改善しない場合、免疫抑制剤の開始を考慮する。皮膚血管炎に対してこれらの薬剤の効果を評価した良い試験がないため、薬剤の副作用・禁忌といった患者による懸念が治療の選択に大きく影響する。
 
Azathioprine (AZP) –皮膚LCVを呈する関節リウマチ患者19例におけるRCTによると、AZPPSNNSAIDs、ヒドロキシクロロキン、オーロチオグルコース、ペニシラミン、スルファサラジンを含む関節炎のレジメンを継続することと比較した際、有意な利益は診られなかった。AZPTPMT酵素活性によって適切な投与量で0.5-2.5mg/kg/日で投与する。治療への反応は典型的には2ヶ月以内に明らかとなる。
 
Methotrexate (MTX) – MTX 10-20mg/日は自己免疫疾患の皮膚血管炎の患者には有効であると報告されており、しばしば4-8週間以内に改善が認められる。しかし、MTXの治療は皮膚血管炎を引き起こすことにも関連性が報告されている。
 
Mycophenolate mofetil (MMF) –皮膚小血管炎におけるマイコフェノレート・モフェチルの効果に関するデータは限られる。MMF1-1.5mg12回)はコルヒチンとダプソンの治療に少ししか改善しなかった特発性の皮膚小血管炎の患者1例において用いられ、2ヶ月以内に改善をもたらす。
Cyclosporineも皮膚血管炎の患者に有効な事がある;重症または難治性の皮膚LCVの患者のOpen-labelの試験で、シクロスポリン5mg/kg/dayを含むレジメン、あるいはプレドニゾンの後にシクロスポリンを用いることは12例中5例において良い反応と関連した(フォロー期間は4-12ヶ月)。しかし、じん毒性の出現のため、シクロスポリンの治療期間が制限される。
Cyclophosphamideは強力な免疫抑制剤であり、重症の副作用の可能性があるため、通常CSVVに用いられることはない。
 
Other therapies —ヒドロキシクロロキンはよく耐用できる薬剤であり、蕁麻疹性血管炎の治療として有効。特発性CSVVにおけるヒドロキシクロロキンの効果は不明。
皮膚LCVの個々の患者に有効と報告された他の薬剤にはミノマイシン、リツキシマブ、免疫グロブリンがある。局所的なコルチコステロイドは通常炎症性皮膚疾患に用いられるが、これらの薬剤は公式にはCSVVの治療として評価されていない。私たちの経験では局所療法は有益でない。
 
Duration of therapy —慢性または複雑性のCSVVの患者の治療期間は様々。私たちは通常、既存の病変が治って、2-3ヶ月間、新たな皮疹が出現しなければ治療を中止することを試みる。もし皮疹が再発すれば治療を再開する。特発性CSVVの治療中止の理想的なレジメンは不明;私たちは通常2-3週おきに投与量を減らし、薬剤を完全に中止する前に疾患の再燃をモニターする。
 
 
 
< Scenario caseの経過 
診断は、特発性皮膚小血管炎(Idiopathic CSVV)とした。
 
慢性の経過であるため、プレドニゾロン0.5mg/kgを開始した。