リウマチ膠原病のQ&A

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神経精神SLE (NPSLE) の唯一のRCT -Patients & Methods-

神経精神SLE (NPSLE) のRCTをご紹介します。
 
NPSLEの治療はコクランレビューでも繰り返し取り上げられているテーマです。
 
2013年のレビューで、RCTはこの論文だけであったとのことでした。
 
10年も前の研究ですが、いかに重要なRCTかを思い知らされます。
 
 
Controlled clinical trial of IV cyclophosphamide versus IV methylprednisolone in severe neurological manifestations in systemic lupus erythematosus.
Ann Rheum Dis. 2005 Apr;64(4):620-5.
Barile-Fabris L et al.
 
 
PATIENTS AND METHODS
1998.7月から1999.7月の間に32例のSLE患者がメキシコの2つの三次ケア施設に登録された。全ての患者が以下の研究基準を満たした:ACR基準によるSLEの診断;年齢>18歳;活動性NPSLEの以下の所見:末梢神経障害・脳神経障害、視神経炎、横断性脊髄炎、脳幹、昏睡。全ての患者が発症して15日以上たっていなかった(incident NPSLE;偶発的神経精神SLE)。私たちは難治性の痙攣を呈する患者も含んだ。除外基準は中枢神経感染症または全身性感染症、研究で使う薬剤に過敏症があると分かっている者、代謝性脳症。研究開始前3ヶ月の間いかなる時期においてもメチルプレドニゾロンパルスやシクロフォスファミドパルスを受けたことがある患者も除外した。
抗リン脂質抗体症候群に直接関連した神経症状を呈する患者も、純粋な精神病や軽症の中枢神経症状を呈する患者も除外した。
フォロー期間中に生命に関わる感染症や出血性膀胱炎を来たしたいかなる患者も除外されなければならなかった。そういう患者はITT解析に含まれることになった。
研究は両病院の倫理委員会で承認され、書面による同意が全ての患者にいて得られた。
 
Assessment of NP manifestations
末梢神経障害は多発性単神経炎または多発ニューロパチーに一致する感覚または運動障害で、筋電図で確認されたもの。フォローアップはBritish Empire Council scaleを用いた徒手筋力検査はもちろん、筋電図、および強さと感度に関するVASでなされた。
 
視神経炎は神経眼科学の検査と視覚誘発電位で裏付けられた急性の視力障害で定義された。血栓症を除外するためにCTと動脈造影がなされた。フォローアップには十分な神経眼科的検査を含んだ。
 
横断性脊髄炎は腱反射の異常、無感覚レベルの異常、括約筋コントロールの消失を伴う急性の四肢まひや対まひで定義された。フォローアップはBritish Empire Council scaleを用いた徒手筋力検査はもちろん、筋電図、および強さと感度に関するVASでなされた。
 
昏睡は言語刺激に反応しない意識障害と定義され、脳腫瘍や血管異常、活動性の中枢神経感染症代謝性脳症を除外することとした。フォローアップはGlasgow scaleの変化でなされた。
 
難治性痙攣は痙攣の活動性が持続し、プレドニゾン30mg+アザチオプリン2mg/kg3ヶ月投与しても月に少なくとも3回のエピソードがあることと定義された。フォローアップは脳電図でなされた。
 
MRIと腰椎穿刺が中枢神経障害の患者に行われた。誘発電位を行うケースもあった。
 
Randomisation procedure
患者は予めセンターにおいて神経精神症状によって層別化され、コンピューター作成の乱数プログラムによる10人ずつのブロックを用いてランダムに割りつけられた。これらのリストは操作マニュアルとともに、両センターに分配された。
 
Treatment protocol
ランダマイゼーションの後、いずれの患者もメチルプレドニゾロンMP1g3日間を導入療法として割り当てられた。これは以下の二つの治療のいずれかでフォローされた:毎月MP 1g3日間を4ヶ月間、ついで2ヶ月毎に6ヶ月間、3ヶ月毎に1年間投与されるか、あるいはシクロフォスファミド(Cy0.75 g/m2BSAを毎月1年間、ついで3ヶ月毎にもう1年間投与された。
経口プレドニゾンは治療4日目より1mg/kg/日で開始され、3ヶ月以内に減量され、疾患活動性・寛解状態に応じ漸減された。
対症療法(抗けいれん薬、鎮痛薬)は研究にエントリーされた時の投与量で維持して、臨床状況に応じ減量することは許されたが、増量は許されなかった。
 
Primary end point
治療への反応はNeuweltらの方法によって格付けされた;
(a) 改善:臨床的、血清学的、神経学的な特異的な検査法(evoked potentials, cerebrospinal fluid analysis (CSF), electromyography,MRIなど)にてベースラインから4カ月目までに20%の改善があること。
(b) 悪化:少なくとも4ヶ月の治療の継続にもかかわらず20%以上の疾患の進行
4ヶ月後も改善しない場合、治療を早い段階で中止することも考慮された。これらの患者はITT解析でのみ考慮され、ついで担当医の推奨に応じて治療された。加えて、測定可能な反応は経過観察中、持続していなければならなかった。
 
研究を中断するポイントを暫定的に、最初の患者が登録されて最初の4ヶ月と計画された。もし任意の副作用や好ましくないアウトカムがいずれのグループでも起きた場合、早期に中断するというルールが適応された。
患者は毎月同じリウマトロジスト(LB or JF)にて診察を受け、フォローのラボデータをベースライン、その後は毎月受診の度に登録した:CBC, 尿検査、尿・咽頭培養。C3C4(免疫比濁法)をベースラインと12ヶ月の時点、最後の受診日に測定した。
 
加えて、髄液検査(蛋白、糖、細胞分画)、MRIが研究の登録時に行われ、特異的な神経精神症状に対しては以下のひとつ以上の検査を行った:脳電図、VEP、筋電図、GCS、筋力のVASsensibility ratings、神経眼科的検査。
 
全般的な活動性はSLEDAIにて登録時と3ヶ月毎に行った。
 
Statistical analysis
私たちはノンパラメトリックテストを用いた。中央値、最小値、最大値が以下の記述に用いられた;Wilcoxon’s ranked test and Mann Whitney’s U test for correlation analyses; and Friedman’s analysis for multiple qualitative measurements. 治療反応性はx2 and Fisher’s exact testsにて評価された。
 
いかなる神経精神症状も過剰に表現されているように見える場合、Maentel-Haezel test for different strataを用いた。
 
全てのデータはSPSS 10.0 program PC compatible (SPSS Inc, Chicago, IL)にて解析された。P0.05を有意と考えた。データは3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月の時点で解析された。
 
(Results、Discussionは次へ)
 
 

 

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