リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

TNF阻害薬 vs その他の生物製剤 ①

リウマトロジストはMTX-IRには原則としてTNF阻害薬をお勧めしています。
 
 
それは、各ガイドラインEULAR@2013、JCR@2014)でTNF阻害薬がその他の生物製剤と同等に扱われていてもその姿勢は変わっていません。
 
 
※極めて個人的な見解なので注意が必要です。メタ解析する能力があればよかったのですけど・・・
 
 
TNF阻害薬を第一選択に位置付ける自分なりの根拠は、骨破壊が進行しやすい早期RAを対象としたRCTにおいて、コントロール(MTX単独)群に対するBio併用時の骨破壊抑制の割合が、MTX+ABTに比べMTX+ADA or ETNの方が大きいと判断していたからです。
 
 
AGREE、PREMIERとも早期RAを対象とし、MTX vs MTX + ABT/ADAを割り付けたRCTです (↓)。
 
 
 
ABT vs ADA
 
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※全ての図においてコントロール群であるMTX単独を■■■■(水色)で示しております。
 
 
つぎに、AGREEの結果をETNのCOMET試験と比較します。同じく早期RAにおいてMTX vs MTX + ETNを比較した試験です。
 
 
 
ABT vs ETN
 
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骨破壊が進行しやすい早期RAを対象としたRCT において、MTX単独群における骨破壊に対してABT + MTX2年後の骨破壊を6割程度に抑えます。一方、ADA + MTXにおいても<2割、ETNMTXでは<1に抑えています。
 
 
対象が同じではないため直接比較できないことは誰も承知するところです。また、X線の評価方法も各々の試験によって異なっています。しかし、コントロール群はいずれも同じMTX単独であり、これに対する骨破壊抑制の割合は比較してもよいと考えます。
 
 
 
Non-radiographic progressionも見てみましょう。骨破壊ゼロのことなので、評価方法が違っていても同じでしょう。
 
 
 
ABT vs ETN
 
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1年後骨破壊ゼロであった人の割合をみています。MTXに対してMTX + ABT1.2倍多いのに対し、MTX + ETNでは1.4倍です。
 
 
 
※参考文献
AGREE
 
COMET
 
PREMIER
 
 
 
ついでに、1年後のDAS寛解も見てみましょう。評価方法はどちらの試験もDAS28<2.6です。
 
 
 
寛解ABT vs ADA
 
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この図は同じ二つの試験のDAS寛解率を比較したものです。
 
MTX群における寛解の割合は、対象となった患者の「手ごわさ」を表します。いずれの試験においても2割しか寛解しない、手ごわい集団です。これにABTADAを併用すると4割が寛解します。
 
 
 
うがった見方をすれば、PREMIERではAGREEよりもより手ごわいかもしれない集団を対象としていたのかもしれません(MTX群の寛解率23% vs 21%)。それにもかかわらず、Biologicsを併用したときの寛解率は逆転しております(41% vs 43%)。 さすがに、この比較は適切ではないでしょうけど。
 
 
 
寛解ABT vs ETN
 
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この図はAGREEとCOMETにおけるDAS寛解率を比較したものです。
 
ABT4割なのにETN5割が寛解すると思わないでくださいね。MTX群における寛解率はAGREE試験の方が小さいため、ABTはより手ごわい集団を相手にしていたのかもしれません。
 
 
 
 
PREMIERとAGREEの比較は興味深いのですが、リウマトロジストはDAS寛解では両者は同等でよいのだろうと思っております。TNF阻害薬は臨床的にはABTと同等であっても、骨破壊の抑制という点ではABTを凌駕するのであろうと考えています。
 
 
 
 
Biologicsの比較はリウマチ科医には興味深いテーマです。しばらくこのテーマから離れていたのですが、とある論文の存在を知って、2011年に作ったpptを見直して、公開しました。
 
 
つぎは、その論文をご紹介します。ACR50を間接比較したメタ解析です。
 
そろそろ、リウマトロジストもCOIを公表しなければなりませんかね(笑)
 
 
ps;
安全性ではABTなんですけどね・・・
 
 
公平性を保つため?ABT のAMPLE試験もUpしました。
https://oiwarheumatology.hatenablog.com/entry/14301810
 
以前、ABTvs placebo vs IFXの比較試験、ATTESTについてまとめていましたね。