リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

TNF阻害薬 vs その他の生物製剤 ②

生物学的製剤の比較に関する大切な論文を見逃しておりました(ADAの講演会で知りました)。
 
リウマトロジストはMTX-IRには抗TNF阻害薬を第一選択としておりましたが、それを支持する論文がないと長い間、思っておりました。
 
じつは、MTX-IRに対して、ACR50達成率で比較したメタ解析が2011年に報告されていたようです。
 
Ann Rheum Dis. 2011 Feb;70(2):266-71.
 
Indirect comparisons of the efficacyofbiological antirheumatic agents in rheumatoid arthritis in patients withaninadequate response to conventional disease-modifying antirheumatic drugs ortoan anti-tumour necrosis factor agent: a meta-analysis.
Salliot C, Finckh A, Katchamart W, Lu Y,SunY, Bombardier C, Keystone E.
 
Erratum in
 
Ann Rheum Dis. 2011 Mar;70(3):560.
 
Last authorKeystone先生@トロント大学は、DEO019(ADA), ARMADA(ADA),REFLEX(RTX), ASSURE(ABT), GO-FORWARD(GLM)等の臨床経験を行われた有名な先生です。
 
以下の内容はErratumを反映した内容です。
 
Abstract
BACKGROUND:
RA治療の生物学的製剤の数が増えてきており、いくつかの治療の選択肢がある。臨床試験において全ての生物製剤が効果を示すが、比較試験は限られている。この研究の目的は(i) MTXに対し効果不十分 (IR-MTX), (ii) TNF阻害薬に対し効果不十分(IR-anti-TNFs)の活動性のRA患者において、関節絵的な比較を行うことで生物製剤の効果を比較すること。
 
METHODS:
IR-MTXIR-anti-TNFの患者において生物製剤開始6ヶ月後の効果を調査した研究を検出した。生物製剤の相対的な効果を比較するため、補正された間接比較のメタ解析法を用いて6ヶ月後のACR50ORsを評価した。
 
RESULTS:
出版された18の試験と1つのアブストラクトを解析に含んだ。IR-MTXにおいてanti-TNFsnon-anti-TNFの生物製剤を合わせたものと比較して同等のACR50達成率を有した (OR 1.30, 95 % CI 0.91 to 1.86)。しかし、特異的な生物製剤と比較した時、anti-TNFsABTよりもACR50の達成率が高いことが証明された (OR 1.52, 95 % CI 1.0 to 2.28)。しかし、RTXTCZとの比較ではそうではなかった。IR-anti-TNFにおいてRTXTCZABTGLMとの間で有意な差はなかった。
 
CONCLUSIONS:
IR-MTXの患者のRCTのメタ解析においてanti-TNFsABTよりも高いACR50達成率を示した。IR-anti-TNFにおいて、RTXTCZABTGLMに有意な差はなかった。
 
METHODS
私たちは二つのシチュエーションにおけるMTXなどの抗リウマチ剤併用下の生物学的製剤の効果に関する文献のsystematic reviewとメタ解析を行った: (i) MTX投与にもかかわらず活動性のあるRA, (ii) anti-TNF投与後(無効か副作用で定義)も活動性のあるRA。文献のsystematic reviewthe CochraneCollaboration guidelinesに基づいて行われ、2人のリウマトロジストによって独立して行われた (CS and AF)。[2]
検索には200910月までに以下の電子データベースにおいて出版された研究を含んだ: Medline,Cochrane Central and Embase。私たちはいくつかのキーワードの組み合わせを用いた (listed in the supplementary material)。報告年、言語、雑誌に制限をつけなかった。文献検索は参考文献の手作業での検索に拡大された。最近の科学ミーティング(ACR and EULAR abstracts of the past 2 years (2007–2009))アブストラクトの検索も行った。必要な時はRAの生物学的療法に関連する製薬会社にコンタクトをとった。
研究を選択するために用いたinclusion criteriaは最初に決めておいた。私たちはMTXanti-TNFsIRestablished RAの成人患者を対象とした二重盲検化RCTのみを登録した。生物製剤かプラセボMTXかその他の抗リウマチ剤との併用下で24週間投与したものとした。
データの収集は二人のリウマトロジスト (CS and WK)にて行われた。収集されたデータは研究デザイン (レスキュー, primary and secondary endpoints, ITT解析, フォローアップ, 完遂した患者数), ベースラインの患者背景 (性年齢、罹患期間、RFの割合, 過去のDMARDs), 介入と併用療法。生物製剤の投与量に関して、私たちは臨床プラクティスで用いられる投与量に注目した:ETN 50 mg weekly, ADA 40 mg隔週, IFX 3–10 mg/kg/8weeks, CZP 400 mg at weeks 0, 2, 4 followed by 200 mg every other week, GLM 50mg 4週毎, RTX 1000 mg at days 1 and 15 for rituximab, ABT 10 mg/kg/月、TCZ 8 mg/ kg/月。
primary outcomeとして24–30週後のACR50改善の割合 (ACR criteriaに沿った腫脹・圧痛関節の50%以上の改善に加え、以下の5つのパラメーターにおいて50%以上改善すること: 医師の全般評価、患者の全般評価、患者の疼痛評価、CRPまたはESRHAQ)ACR20が多くのRCTPrimary outcomeとして用いられてきたが、生物製剤に関連した治療にしてはACR20は臨床的に十分でないと感じたからだ。
 
Statistical analysis
その薬剤においてひとつ以上のRCTが入手できれば、臨床試験を通しランダム・エフェクト・モデル(Mantel-Haensze method)を用いてデータを収集した。ACR50改善の不均一性はI 2 statisticにて測定した。
次に私たちは間接比較を行った。共通のパラメーター(プラセボ群)に対する様々な生物製剤の相対的な効果を評価するために間接的比較法を行った。Bucher[4]らとSong[5]らによって記載された方法。
そのため比較はプラセボ群の反応のレベルに応じて調整された。関節比較はその介入の相対的な効果はその介入の異なる試験において一貫することを仮定する。
関節比較を用いた最近のCochrane meta –analysisACR50に基づいてETNADAIFXは同様の効果を有することを示した[6]。私たちは古いaTNFsIFX, ADA, ETN)と(i)CZP, (ii)GLMとの最初にACR50改善率の関節比較を行った。有意差はなければ、全てのaTNFsは効果が同等であると仮定し、それらをグループとして考えた。このように私たちは異なる作用機序の生物学的製剤同士を比較する前に全てのaTNFsを異なる作用機序の生物学的製剤をグループとして比較することを計画した。様々な関節比較をTable 1に示した。試験デザインと患者背景の影響を調べるためにSensitivityanalysesも行った (ie, trials with a rescue design)
結果はACR50改善を達成するORs95%信頼区間で与えられた。統計解析ソフトはwindowsV.9.1.3 (SAS Institute Inc., Cary, North Carolina, USA) and Review ManagerV.5.0 ( http://review-manager.software.informer.com/ )を使用した。P<0.05統計学的に有意であることを示唆するとした。
 
RESULTS
Systematic review of the literature
関連する出版された臨床試験を選択する過程をthe supplementarymaterialに要約した。全体として、17の出版された研究とひとつのアブストラクトを回収し、解析に含めた[7 – 25]IR-MTXの活動性患者を対象に生物学的製剤の効果をプラセボと比較した研究、全部で15試験、IR-aTNFsの活動性患者において生物学的製剤の効果を比較した5試験[7 – 25]Biological群とPlacebo群における併用療法はひとつを除く全てのRCTにおいてMTXであった。活動性の疾患の定義は試験によって様々であった。すなわち腫脹・圧痛関節数の最低値が4-9、急性期反応物質や朝のこわばりの存在。登録された試験の主な特徴はthe supplementarymaterialにサマライズした。全ての試験がITT解析を行っており、いあかんる理由でも治療を中止した患者やレスキューの治療を受けた患者はnon-responderと考えられた。Table 2は全ての含まれた研究と群におけるACR50改善率を示したものである。
 
Effi cacy of biologicals in active RAdespite MTX
解析に含んだのはaTNFs9試験(2476), RTX 3試験(604 patients), ABT3試験(1138 ) TCZ1試験 (409)[7– 21]。これらの試験において主な患者背景は同様:女性 (70-90%), ベースラインの平均年齢49-56, 長期罹患のRA (平均罹患期間6-13)RF陽性率73-100%
最初にthe Mantel– Haenszel method and randomeffect models を用いて同じターゲットを目的としたBiologicalsの試験の結果を集めた。古いaTNFs(IFX, ADA, ETN)と新しい製剤との間において6ヶ月の時点でのACR50改善率の間接比較を行ったが有意差はなかった:
CZP (p=0.08)、対GLM(p=0.33)。これらの最初の結果によって私たちはaTNFsをグループとして考えることにした。
I 2 statistic で測定されたACR50HeterogeneityABTRTX0% (低いということ)aTNFsにおい57%であり、高いと考えられたABTRTXaTNFsMTX併用のもと)はMTX単独よりも6ヶ月後のACR50達成率が有意に高かった: OR 3.3 (95% CI 2.4 to 4.4), OR 3.1 (2.1 to 4.7) and OR 6.0 (4.7 to7.6)
Biologicalsの間における補正された間接比較の結果をTable 3に示す。aTNFs6ヶ月後のACR50改善率がnon-anti-TNF biologicals全体よりも有意に高かった(OR 1.55,95% CI 1.12 to 2.16, p=0.008). sensitivity analysisにおいて、私たちは全てのaTNF群からレスキューのレジメンを作っていた試験を除外した:(1)GO-FORWARD(GLM);ただし除外しても結果は変わらなかった (OR 1.64, 95% CI 1.17to 2.32, p=0.004)(2) RAPID 1 and 2 (CZP);定性的に結果を変えた(OR 1.30, 95% CI 0.91 to 1.86, p=0.15)
 
特にaTNFsABTと比較した時に高いACR達成率を有した (OR 1.81, 95% CI 1.23 to 2.65) (CZP2試験を除外しても;table 3)。しかし、aTNFsTCZとの比較ではACR50達成率は高くなかった (OR 0.92, 95% CI 0.51 to 1.63)RTXと比較した時には有意差ではなく傾向のみ認めたが(OR 1.62, 95% CI 1.0 to 2.66)CZPを除外すると有意差はなくなった (OR 1.36, 95% CI 0.81 to 2.27)
 
non-anti-TNF biologicalsの中で比較すると、TCZABTよりもACR50達成率という点において有意に有効性が高かった(OR 1.97, 95% CI 1.08 to 3.59)TCZRTXABTRTXを比較したが、違いはなかった。
 
 
イメージ 1
 
 
Efficacy of biologicals in patients with RAwith an IR to anti-TNFs
 
5試験を解析した; RTX2試験 (DANCERREFLEX; 581)、ひとつはABT 1試験(ATTAIN; 391)TCZ1試験(RADIATE 334)GLM1試験(GO-AFTER; 205)[17,22 – 25]GO-AFTER試験では30%の患者がDMARDを内服していなかった;私たちはMTX併用のもとGLM(50mg/4wks) or placeboを投与されたサブグループのみを対象に入れた。これらの試験を通し、主な患者背景は同様:ほとんどが女性(77% to 84%)、ベースラインの平均年齢は52.2-54歳、平均罹患期間は11.4-12.6年、RF陽性は73-79%aTNFsが効果不十分で中止された割合はREFLEX, GO-AFTERにおいて各々92%58%[22,25]ABTTCZの試験では効果不十分で中止された患者の割合は分からなかった。ABTの試験で二つのaTNFsの投与を受けたのは1.5-2.3%のみ。この割合はRTX (40%), GLM (25%), TCZ (32-44%)ではもっと高かった。RTXGLMTCZの試験では全例がMTXを併用約として投与された。ABTの試験では76-82%の患者がMTX9%HCQ8.3-8.9%LEF9.8%SSZを内服した。臨床試験のアームに応じ。LEFSSZBiologicalの併用剤として用いることはMTXと同等の効果を有するようだ[26]。これを根拠に私たちはABTの試験をTCZGLMRTXの試験と比較した。
Table 424週時におけるACR50改善率の関節比較を示したもの。.IR-aTNFsの患者において、RTXTCZRTXGLMABTRTXABTTCZGLMTCZRTXABTと比較した時に有意な差はみられなかった。
 
 
 
<リウマトロジストのコメント>
抗リウマチ薬の一般的な有効性の基準はACR20ですが、これで評価されていれば物足りなかったでしょう。ほとんどのBioにとって簡単にクリアできる基準ですから。
 
最近、「寛解率」をアウトカムにするような研究があるように、この論文におけるアウトカム、ACR50でメタ解析することはごもっともな話だと思います。
 
aTNFsにおけるACR50の達成率のORは対ABT1.81p=0.008)、対RTX1.62p=0.05)でした。
 
ただし、この結果は多分にCZPに引っ張られていたようであり、CZPaTNFsより引いた場合、ORは落ちてしまいます;対ABT1.52p=0.04)に落ち、対RTXでは1.36p=0.24)と有意差がなくなってしまいます。CZPって、強力なんですね。
 
お気づきでしょうが、aTNFsは対TCZではOR0.92 (p=0.77)で有意差が着きません。RADIATE (n=334) 1本のSmall sampleであったことも影響したものかもしれませんが、同じくATTAIN (n=391)1本で臨んだABTはaTNFに負けました。TCZも負けてないですね。
 
 
リウマトロジストがこの論文より学んだ事は以下の3点です。
 
MTX-IRRAにおいて、従来型TNF阻害薬(IFX/ADA/ETN + GLM)はABTに比べACR501.5倍達成しやすい。
 
CZPは従来型TNF阻害薬よりもACR50を達成しやすい傾向があるため(p=0.08;ここのORは記載されていません)、分けて考えた方がよい。
 
・従来型TNF阻害薬の有効性は、RTXTCZと同等。