リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ループス心筋炎 ①

Clinical Scenario
 
55歳女性 胸痛
 
 
 
現病歴
 
-25d、両手の疼痛が出現、腫脹も見られた。
 
 
 
-18d、心窩部痛が出現し、前医に入院。造影CTにて少量の心嚢水、胸水を認めた。胃カメラにて異常なし。ANA640倍、抗CL-IgG高値、ループスアンチコアグラント陽性、抗β2GPI抗体を認めたため、
 
 
 
DOA、当科外来に紹介受診。血液検査、心電図、造影CTをオーダーした。
 
 
 
検査の移動中、強い心窩部痛が出現し、うづくまった。5分ほどして治ったため、検査後自力で外来に戻ってきた。
 
 
 
しんどくて、外来のベッドで横になっているという。
 
 
 
心電図にてST低下、TroponinT陽性を認めた。
 
 
 
造影CTでは心嚢水、両側性胸水を認め、心膜は壁側・臓側とも造影効果あり。
 
 
 
車いすERに移動させ、循環器科コンサルト。
 
 
 
循環器科医 「壁運動異常があるので、すぐに心カテをします。」
 
 
 
リウマトロジスト(のこころの声) 「えーっ、心膜炎じゃないんですか!?」
 
 
 
(症例は架空です)
 
 
 
 
 
< 疑問、発生!>
 
ループス心筋炎について勉強しよう!
 
 
 
Uptodateにて>
 
Non-coronary cardiac manifestations of systemic lupus erythematosus inadultsのなかから以下を読みます。
 
 
 
MYOCARDITIS — 心筋炎は稀なSLEの合併症。しばしば無症状。頻度は研究によって異なるが8-25%
 
 
 
 
 
全体的なhypokinesisが心筋炎を示唆するエコー所見であり、SLE患者の約6%でみられる。
 
 
 
Characteristics — 安静時における体温に見合わない頻脈、STT波の異常などの心電図異常、説明のつかない心拡大があれば、心筋炎を疑うべし。心拡大は心不全の症状のサイン、and/or不整脈を伴っているかもしれない。心エコーは収縮期・拡張期ともに左室機能の異常を示すかもしれない。心筋炎はRNPに対する抗体に関連するケースも報告されている。
 
 
 
 
アフリカンアメリカンがヒスパニックとコーカシアウンに比べ心筋炎のリスクがより高い。
 
 
 
 
急性心筋炎はとくに心膜炎のようなSLEの急性の症状を伴うかもしれない。心筋症の多くの原因の中で薬剤性(シクロフォスファミド、抗マラリア剤、フェノチアジン系など)または合併症による心筋症(尿毒症や分娩後の心筋症)を除外しなければならない。心筋生検は線維化やその他の心筋症の原因より活動性心筋炎を区別するために必要になるかもしれない。組織学的所見によって心筋への単核球の浸潤が見られる。炎症は線維化に変化して臨床的に拡張型心筋症として出現するかもしれない。
 
加えてヒドロクロロキンHCQは稀な特異体質の心毒性に関連している。これを除外するために心筋生検が必要かもしれない。顕微鏡におけるHCQ毒性の特徴的所見はびまん性の心筋細胞の空洞化であり、心筋炎を伴わないことだ。透過電子顕微鏡によってsarcoplasmic myelinoid and curvilinear bodies(筋小胞体のミエリン様で曲線状小体)が認められる。.
 
 
 
Treatment of myocarditis — ループス心筋炎の治療で比較試験で評価されたものはない。ステロイド剤、シクロフォスファミドやアザチオプリンのような免疫抑制剤、またはγグロブリン静注によって収縮機能が改善した症例が報告されている。私たちは急性ループス心筋炎は最初に高用量ステロイド剤(mPSL1g3日間、後療法としてPSL1mg/kgの分割投与)、もし心不全があれば心不全の通常の治療法で治療されるべきだと提案する。
 
 
 
線維化を伴う心筋症は通常ステロイドand/or免疫抑制剤に抵抗性である。
 
 
 
(以下、ついでに訳しました)
 
 
 
CONDUCTION ABNORMALITIES — 活動性または過去の心筋症の後遺症として見られるかもしれない伝導の異常がSLE患者の34-70%に報告されている。
 
 
 
 
Ⅰ度房室ブロックが見られるかもしれないが、一過性である;これに対し2-3度の心ブロックと心房細動のような不整脈は成人には稀。剖検の研究において局所的な炎症細胞浸潤が見られ、より頻度が高い所見として伝導系の線維化が見られる。
 
 
 
SLEの成人における抗Ro/SSA抗体はQTc延長に関連しやすいかもしれない。SLEを有さない患者において心室不整脈と突然死の危険因子であることが示されている。
 
 
 
 
この所見の臨床的な重要性は不明である。QTcの低い閾値 (QTc ≥440 msec)がこの研究には用いられているからだ。しかし、抗Ro/SSA抗体を有する患者は心電図を取られ、QTc延長が認められれば適切な治療を受けるという恩恵を受けているかもしれない。
 
 
 
Congenital heart block — 先天性心ブロックは新生児ループスの一症状であり、抗Ro/SSA、抗La/SSB抗体に関連する。これらの新生児の母はSLEを有していることがあり、またSjogrenや分類不能膠原病を有するかもしれないし、無症状であるかもしれない。完全心ブロックのリスク(胎児または新生児の間における)はRo or La抗体を有する女性の妊娠において3%。結果として、Ro/SSALa/SSB抗体価をSLE患者の妊娠早期に測定することが推奨されている。
 
 
 
 
 
Pubmedにて>
 
(lupus[title]) AND (myocarditis[title])を検索。Humans, EnglishLimitsして、45件。
 
 
 
その中から以下の3つを紹介します。
 
 
 
3. A contemporary case series of lupus myocarditis.
 
Zawadowski GM, Klarich KW, Moder KG, Edwards WD, Cooper LT Jr.
 
Lupus. 2012 Nov;21(13):1378-84.
 
 
 
 
※ループス心筋炎の最大の観察研究(nはなんと24例!)。Mayo clinicの報告です。
 
 
 
8. Acute lupus myocarditis: Clinical features and outcome.
 
Appenzeller S, Pineau CA, Clarke AE.
 
Lupus. 2011;20(9):981-8.
 
 
 
 
3例報告ですが、過去のLiterature reviewをしています。McGill大学というカナダの一流大学からの報告です。考察が良かったので採用!
 
 
17. Acute lupus myocarditis: clinical features and outcome of anoriental case series.
 
Law WG, Thong BY, Lian TY, Kong KO, Chng HH.
 
Lupus. 2005;14(10):827-31.
 
 
 
 
シンガポールからの11例、2番目に大きな研究です。同じ黄色人種として大切です。
 
 
 
いずれも、かいつまんで訳します。
 
 
ループス心筋炎②
 
ループス心筋炎③
 
 

ps;↓SLEについて執筆しております!

 

ps;↓執筆協力しております!