リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

ループス心筋炎 ③

ループス心筋炎(LM)を経験し勉強中です。
 
①(uptodate)
 
Pubmedで見つけた最後の論文です。
 
シンガポールからの11例>
17.Acute lupus myocarditis: clinical features and outcome ofanoriental caseseries.
Lupus.2005;14(10):827-31.
 
Patientsand methods
シンガポールにおけるリウマトロジーの三次紹介病院、Tan TockSengHospitalにおいて1993-2001年に入院したSLE患者をレビューした。レジストリーと入院記録より抽出された。
・心筋炎の定義はエコーにおける心筋機能の障害、すなわちSLEによる壁運動異常、左室機能障害、andシンプソン法におけるLVEF<50%とした。冠動脈疾患、先天性心疾患、弁疾患、肥厚性・収縮性心膜炎、間質性肺炎のような既知の心肺疾患を除外。
2004.1/31までフォローした。
Results
Demographics
13例を抽出;他院で最初評価された2例をデータ不足のため除外;11例を対象とした。
・全例女性。中国人46%、マレー人36%、その他18%
SLE診断時の平均年齢は27±10歳(14-40)。
Clinicalfeatures
・急性心筋炎が最初のSLEの症状であったのが73%。発症から診断・治療開始までの中央値は2週間(範囲0.3-8)。粘膜皮膚症状は7例(63%);1例にレイノー現象と手指の梗塞を認めた。
・心筋炎以外の臓器病変を有するのは7例(63%)。活動性の腎炎3例。1例は急性の精神神経ループス、腎炎とループス腸炎1例がループス腸炎と精神神経ループス;1例がループス腸炎:もう一例は腎炎と再発性の肺出血のため退院までに激しい長期的なICU管理を要した。11例における急性ループス心筋炎の間のSLEDAI中央値は16(範囲4-30)。
Laboratory
・リンパ球減少(64%)、低補体(89%)、抗dsDNA抗体(100%)。LACを測定した6例中1例、抗CLを測定した7例中0例が陽性。CKを測定した8例のうち3例(38%)が>800 u/L
Imaging,ECG, UCG
・最もコモンなX線所見は心拡大(100%)、肺うっ血(73%)、胸水貯留(73%)。
ECGでは非特異的ST/T波変化が最もコモン(91%)。
・コモンな心エコ-所見は壁運動異常(81%)、低いLVEF81%)、心嚢水貯留(73%)、肺高血圧症(64%)。壁運動異常の9例のうち56%が全体的、44%が区域性。
Management
・全ての患者が高用量のステロイド剤を投与された。9例が最初は静注で。静注ヒドロコルチゾンを投与された4例(45%)がmPSL500mg/dayパルス3日間に変更された。1例を除く全例が1mg/kgのプレドニゾロンを投与され、その1例は静注ステロイドを投与中に死亡した。
7例(63%)がシクロフォスファミドパルス(IVCY0.5-0.75g/m2BSA)を投与された。これら7例のうち4例は月1回、計6回のIVCY投与を受けた。1例が3回、2例が1回。最後の2例は感染症で死亡する前に1回のみ投与を受けた。
3回以上のIVCYを受けた5例のうち4例がループス腎炎、NPSLE、ループス腸炎、再発性肺出血のようなその他の臓器の合併を有した。
1例は経口CYを投与され、ついでAZPで治療された。
・その他の免疫に関わらない投薬は全例が受けた;ACE阻害薬81%、利尿剤81%、ジゴキシン55%
Outcome
・このコホートのうち2例が死亡。1例はループス腸炎による腸管穿孔後、E.coliによる敗血症のため死亡し、もう一例は肺炎で死亡した。いずれもSLEの病歴が8年と12年でSLICC/ACR damage index0点と3点だった。これとは反対にSLEが新しく診断された9例は生存した。
・生存した9例は4年の間、心筋炎の再発はなかった。全例が6ヶ月以上たって施行された心エコーで新機能の改善を認め、8(89%)が正常のLVEFを有した。
・最後のレビューにおいて9例の大多数(67%)SLICC damageindexの中央値0(範囲0-2)を有した。維持免疫抑制療法に関しては、6(67%)が低用量PSL7.5mg/日を投与され、以下を併用された;HCQ3(33%)HCQAZP2(22%)AZP単独が1(11%)1例がHCQのみ。1例は低用量PSLのみで1例が治療を完全に中止されていた。
 
Discussion (より抜粋)
・最近の研究によると心筋生検の感度と特異度は低い。心筋炎を診断するために十分な感度を得るために必要な心筋生検の回数は平均17.2サンプル。
 
<まとめ>
・治療を知りたくて調べてみたが、稀な合併症であり、比較試験は行われていなかった。Mayoでは24例中13例がステロイド剤+免疫抑制療法で治療された。内訳はMMF6, IVCY3,AZP3, Rituximab1。Singaporeのシリーズでは11例中7例がIVCYを施行された。
 
 
 
・予後について、死亡はメイヨーの24例中3例、シンガポール11例中2例。前者は3例とも10年以上のSLEの病歴を有し、後者も12年と8年であった。つまり、Scenario caseのような新規発症例は予後が良いということだ。
 
 
 
 
 
Scenario caseの経過>
 
ステロイドパルス療法についで高用量ステロイド剤を開始した。心不全症状にたいし、利尿剤のみ使用し、5日後には心不全徴候(頸静脈怒張、下腿浮腫、胸水)は消退した。
 
 
 
IVCYを併用するかどうか迷っていたが、心筋炎は予後に関わる重大な合併症であること、IVCYが比較的よく使用されていたことから併用した方がよいと判断した。
 
IVCYプロトコール0.75g/m2/moとした。
 
 
 
11病日、IVCYを開始した。第37病日に2回目のIVCYを施行し、第40病日に独歩退院。
 
 
ps; 

↓SLEの緊急病態

 

 

↓執筆協力しております!