リウマチ膠原病のQ&A

日常診療で出会ったギモンに取り組んでいきます!

SLE患者の妊娠 ②

Pregnancy in women with systemic lupuserythematosus
(uptodate, accessed on July 2015)
 
(↓のつづき)
 
MANAGEMENT DURING PREGNANCY —  SLEの妊婦の管理にはハイリスクの女性の管理の
経験があるリウマトロジストと産科医との間の親密な協力を要する。活動性
SLEの治療はもちろんSLEの妊婦を管理することのアプローチを以下に示す。

 

Monitoring SLE activity — 女性は各トリメスターに1回疾患活動性の評価を受けるべし。活動性SLEではより多く。スケジュールを以下に示す。
 
Initial evaluation — 妊娠が確かめられた後の最初の受診時に以下の調査を推奨する。
 
●血圧を含む診察
●腎機能(クレアチニン、尿検査、随時尿の蛋白/Cr
Complete blood count (CBC)
●肝機能検査
●抗Ro/SSA、抗La/SSB抗体
●ループスアンチコアグラントと抗カルジオリピン抗体
●抗dsDNA抗体
●補体 (CH50, or C3 and C4)
●血清尿酸
 
いくつかの妊娠の生理的な変化が活動性SLEの所見とオーバーラップするため鑑別が難しい。たとえば正常妊娠で見られる検査結果には軽度の貧血、軽度の血小板減少、ESR上昇、尿蛋白がある。正常妊娠中、蛋白排泄は増加するが、300mg/24h未満であるはず。ベースラインの24時間蓄尿をとることによってループスの再燃を子癇前症と妊娠の正常な変化と区別することに役立つ。また、正常妊娠の間、補体は10-50%上昇し、活動性SLEがあっても正常に見えるかもしれない。このように補体の傾向は一般に実際の値よりも有用な情報になる。
 
このように、検査所見は臨床所見とともに解釈されなければならない。血清学的な活動性が悪化するが無症状な女性は近くモニターされるべし。私たちは血清学的所見だけで治療を開始することはない。
 
Laboratory testing — 血圧を含む身体所見に加え、以下の検査を妊娠中定期的に推奨する:
 
CBC
●クレアチニン
●尿沈渣を含む尿検査
●随時尿の蛋白/Crまたは24時間蓄尿
●抗dsDNA抗体
●補体(CH50, or C3 and C4)
 
肝機能や尿酸の様なその他の検査は臨床所見に応じガイドされるべし。検査の感覚は個々に応じて調整され、疾患活動性に応じ多様である。安定した疾患を有する患者は各トリメスターごとに血液検査を受けるべきであるが、活動性ループスの患者はより頻繁に要するであろう。
 
Postpartum laboratory testing — 分娩後の検査。分娩後の時期にSLEの悪化を経験する者もいる。受胎時に活動性疾患を有する者、有意な臓器ダメージを有する者は非活動性疾患を有する女性に比較して分娩後の時期における疾患再燃のリスクが高い。
 
そのため、分娩後は周期的な疾患活動性の評価が必要である。合併症のない分娩後1ヶ月して以下の検査を推奨する:
 
●尿検査、尿蛋白/Cr
●尿検査が異常であれば腎機能
CBC
●抗dsDNA
●補体(CH50, or C3 and C4)
 
活動性SLEを有する分娩後の女性の治療は妊娠していないSLE患者と同様。多くの薬が授乳に適さない;そのため授乳をする女性は担当医たちと様々な治療アプローチのリスクと利益に関して徹底した議論を要する。妊娠中の薬の安全性は授乳における安全性とは多くの点で異なっている。
 
母体・胎児のモニタリング理想的なモニタリングのスケジュールは分かっていない。危険因子または予後不良の因子を有する女性はより頻繁なモニタリングが必要かもしれない。ルーチンの出産前のケアに加え、SLEの女性における胎児のモニタリングには以下がある。
 
●第1トリメスターの超音波検査を分娩の時期を推定するために行う。胎児の解剖学的異常の検査は妊娠約18週で行われる。
 
●第3トリメスターにおける胎児発育と胎盤不全を調べるための超音波検査。胎児発育を調べるための頻度は母体と胎児の健康に応じるが、典型的にはおおよそ4-8週間毎。発育不全や胎盤不全が疑われる場合や母体のSLEの活動性がある場合より頻繁なモニタリングが適応となる。これらの状況では臍動脈の速度も推奨される。
 
●妊娠の最後の4-8週間の間の非ストレス検査を用いた胎児の検査and/or生物物理学のプロフィールがループスのほとんどの女性に適応される。胎児と母体の評価に基づいた個々の検診プランに加え。
 
●抗Ro/SSA、抗La/SSB抗体を有する患者では心ブロックの調査を頻繁に行うことが推奨される。
 
Preeclampsia — SLEの女性は一般人口と比べ子癇前症のリスクが高い。これらの患者はさらに用心しなければならない。なぜなら妊娠20週以降の高血圧、蛋白尿、末期の臓器不全は子癇前症発症の心配があるからだ。重症で早期に発症する発育不全も同様に子癇前症発症の心配がある。妊娠後期に発症する子癇前症はしばしば前もって対応できるが、pre-and peri-viable gestationsでは母体の劇症型の合併症を防ぐために分娩が適応される。そのため早期の診断がかかせない。
 
子癇前症のリスクが高い女性ではアスピリンを妊娠12-20週に開始すれば10-20%、リスクを減少できることが分かっている。
 
Preeclampsia versus lupus nephritis — 子癇前症をループス腎炎やループスの再燃から区別することはchallengingである。妊娠中のループス腎炎の再燃は子癇前症を真似し、蛋白尿、高血圧、血小板減少、腎機能低下を呈する。活動性のループス腎炎と子癇前症は同時に起きる事もある。その他の臓器のループスの活動性があれば時に子癇前症よりSLEを区別することに役立つ。
 
ラボデータもいつもではないが、ループス腎炎や再発より子癇前症を区別するのに役立つ。
 
●ループス腎炎はしばしば蛋白尿and/or活動性尿沈渣(赤血球、白血球、細胞性円柱)を合併する。一方で子癇前症では蛋白尿のみ認められる。
 
SLEの再発は補体低下や減少傾向、抗dsDNA抗体の増加に関連しやすい;これに対し補体は子癇前症では正常か増加しやすい。いつもではないが。
 
●血小板減少、肝酵素の上昇、尿酸の上昇はループス腎炎よりも子癇前症でより顕著。しかし、血小板減少は抗リン脂質抗体や血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少症に関連して見られやすい。いずれもSLE女性の妊娠に合併しやすい。
 
これらのオーバーラップする症状が妊娠20週以前に発症すればよりループス腎炎らしい。腎生検は両者を鑑別するのに役立つかもしれないが、妊娠中では合併症のリスクが高いため行いにくい。
 
Treating active SLE — 妊娠中の活動性SLEの治療は妊娠がない状態の患者と同様に臓器障害の重症度と程度によってガイドされる。治療は妊娠によって中止されるべきではない;しかし、SLEを治療するために用いられるいくつかの薬剤は胎盤を通過するため胎児に毒性をもたらすかもしれない。そのため妊娠中の治療のリスクと利益はSLEの活動性が母体と胎児に悪い影響をもたらすリスクと天秤にかけられなければならない。
 
SLE患者を治療するためにもっともよく用いる薬剤は上述の通り。妊娠中の免疫抑制剤の使用は別に示す。
 
妊娠中のループス腎炎は特別に考慮されなければならない。なぜならループス腎炎の死亡率の潜在性のため、そして、子癇前症との混乱が起きうるため。
 
BREASTFEEDING — 授乳はSLEのほとんどの患者で推奨されるべし。薬剤の授乳中の安全性は時々異なる。それらの使用は個々に応じ、レビューされた特異的なリスクにおいて議論されなければならない。
 
HCQ、プレドニゾン、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスは授乳に適すると考えられる。低用量あるいは間欠的MTXも授乳に適すると考えられる。生物製剤やレフルノミドに関する情報には制限がある。シクロフォスファミドは授乳に禁忌。早産の新生児、あるいは病的な新生児はいくつかの薬への曝露のリスクが高まる。授乳に関する薬剤の適合性の詳細はthe United States National Library of Medicineで提供される。